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韓国の下克上? キア・スティンガー、BMW/ジャガーに勝負 前編

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韓国の下克上? キア・スティンガー、BMW/ジャガーに勝負 前編

もくじ

ー そもそもキアは、戦えるのか?
ー 装備で勝負 価格もライバルを揺さぶる
ー 「感じるのはスリルよりも満足である」

ヒュンダイ/キアにBMWのアルバート・ビーアマン移籍 今後の展開は? インタビュー

そもそもキアは、戦えるのか?

エストリル・ブルーに塗られた美しいBMWのキャビンからでさえ、われわれのこのコンボイの先頭を行くクルマに目が行ってしまう。

それはこのクルマがもつ、奇妙なほどアルファ・コンペティツィオーネ・レッドに似た豊かな色合いのせいなのか、妙に控えめな4本出しエグゾーストのためか、それとも、その豊かなリア・フォルムの流れが、ファストバックや美しいカムテールをほうふつとさせるからなのかはわからない。

すべてはもっと近づいての観察が必要だろう。

あるいは、この曇り空に覆われた平日の朝、M4道路を西へと向かうわれわれ以外のひとびとも含め、トランクに貼られたバッジの正しい読み方を考えているだけなのかも知れない。「キア」というのだ。

これまでの秩序を打ち壊すべく、華々しいスペックとともに登場したスティンガーGT-Sについてはご存知だろう。予想よりもできが良いとも聞いているかも知れない。率直にいってシャシーは活気に溢れている。

では、ドライバーズカーとして、BMW 440i MスポーツやジャガーXE-Sの代わりになるほど素晴らしいのだろうか?

しばらくするとスティンガーの重量感のあるキーがまわってきた。クルマに乗り込んで最も驚かされるのはその高級な仕立てのキャビンではない。

アウディ調のシフトレバーが設置された高く幅の広いトランスミッション・トンネルでもなければ、メルセデスのような船窓形状をしたエア・ベントでも、BMWに似たダッシュボード上のインフォテインメント・システムでもない。

装備で勝負 価格もライバルを揺さぶる

驚くべきはダッシュ廻りをかすめるように見る事になるほど低く座らせるそのドライビングポジションである。

しっかりとした握り心地を持つ十分に小口径なステアリングの調整幅は大きく、胸の近くまで引き寄せることができ、足を延ばした姿勢をとることが可能だ。

すべては常に新しい体験である。なぜなら、クルマの基本操作との関係は人間工学の謎であり、経験を積んだブランドでさえ時々その方向性を見失うことがあるからだ。キアはおおむねこの点について上手くやっている。

スティンガーのスペック同様に魅力的な数字をひとつご紹介しよう。£40,495(606万円)という価格だ。

7年間の保証期間で知られるブランドにとっては、非常に具体的な強みとなる数字だ。スティンガーの突き出した鼻先に収まるのは370psを発する3.3ℓツイン・ターボV6であり、自社製パドルシフト付き8段ATと機械式LSDを介して、リアタイヤを駆動する。

100km/h加速を5秒台でこなし、最高速は274km/hに達する動力性能はこのクルマを活発に走らせる。フロントにはマクファーソン・ストラット、リアにはダブル・ウィッシュボーンのサスペンション形式をそれぞれ選択し、キアにとっては初めてとなるアダプティブ・ダンパーが装備される。

ブレーキはブレンボ製であり、可変レシオのステアリングは、非常に正確なハンドリングを持つヒュンダイ製ホットハッチのi30 Nと同じパワー・ステアリングを共有する。

まだ十分ではない? BMWとジャガーの2台には機械式LSDは装備されておらず、この3台のスペック上の違いは、ここでいちいち取り上げる必要もないほど小さなものだ。

この事実はわれわれの目を開かせるには十分ではないだろうか。キアの強みは、このフラッグシップ・モデルがBMWよりも£4,000(60万円)安く、魅力的なジャガーと比べればその差は倍になるという事実だ。ではその差は道路上ではどのようなものだろうか?

「感じるのはスリルよりも満足である」

正直に言えば差はある。忌々しい速度監視カメラをこえたところで、われわれの車列をウェスト・バークシャーの道に放てば、このキアは魅力的なアクションとグリップを昔ながらのマナーで披露してくれた。

255サイズのリアタイヤはこのクルマのボディの下では弱々しく見えたが、実際にはこの控えめなサイズ選択はわれわれにとって幸いだった。つまり、このクルマがリア駆動であることを明確に感じることができたのだ。

当然ながら小雨の中では、常にアクセルを踏み込むような運転は全く意味をなさない。まるで滑りやすい路面だけでは満足できないかのように、このエンジンはわずか1300rpmからその最大トルクを発生する。

しかしそれだけのクルマではない。

視線を前方へと向けて、スポーツ・モードでもややソフトなサスペンションを使ってタイヤをコントロールしながらコーナーを攻める。慎重にこのクルマの鼻先を誘導しつつ、この瞬間をできる限り長く楽しむのだ。

感じるのはスリルよりも満足であり、このクルマは少しの慎重さがあれば楽しむことができる。

セッティング自体はベースとなったヒュンダイ・ジェネシス譲りである。ステアリングは滑らかだが最もダイレクトな種類ではなく、ボディ・コントロールも今回のような路面状況では、積極的な運転も許容できると表現した方が適切だろう。

このような運転をした場合、操作に追従できる限りは、スティンガーは正確な反応でコミュニケーションを楽しませてくれる。これは1780kgという重量を考えれば安心できる要素だが、最終的にはその重量を感じないわけにはいかない。

ペースが上がるにつれボディの動きが遅れだし、ボディ両端に積まれた重量物を意識させられる。もしアクセルでコントロールしたいなら、予測可能な状況下でLSDがその効果を発揮している限り、これは挑戦し甲斐のある課題と言えるが、ブレンボの強力なブレーキングに頼ってコーナーへ進入する場合、フロント・サスペンションへの負荷の掛け過ぎに注意する必要がある。限界性能はさておき、これがこのクルマの英国デビューである。

では、迎え撃つ側はどうなのだろうか?(後編につづく)

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