トヨタ期待のニューモデル、新型クラウンクロスオーバーだが、その内装クォリティが「クラウンなのに……」と、微妙な評価を受けている部分もあるようだ。鈴木直也氏もそのひとり。そこで、新型クラウンクロスオーバーについて気になる部分を指摘してもらった。
文/鈴木直也、写真/ベストカーWeb編集部
「クラウン」にしては微妙じゃない? 走りはいいけど……新型クラウンのインテリアがちょっと気になる
■久々の大ヒットを予感させるのだが……
4代目“クジラ”クラウン。それまでの従来型クラウンとは一線を画したスタイリングを採用していた
歴史の長いクルマだけに、クラウンには大きく変貌を遂げるモデルチェンジが何度もあった。
古くは“クジラ"の愛称で知られる4代目でデザイン上の大冒険があったし、9代目では長年使い続けて来たセパレードフレーム構造と訣別。12代目の“ゼロクラウン"では、シャシーセッティングを強烈にハンドリング志向に転じて話題を呼んだ。
そんな歴史を振り返るまでもなく、今回のクラウンクロスオーバーの大変身はまさに衝撃のひと言。膨大な優良顧客を抱えるブランドにもかかわらず、「このままではいずれジリ貧」という危機感から既存ユーザーに忖度しない大胆なモデルチェンジを敢行。こういうリスクを取る施策を打ち出せるところに、トヨタという会社の凄みを感じざるを得ない。
このモデルチェンジについては、マーケットも専門家もおおむね好意的に受け止めていて、SUVクーペに振ったエクステリアデザインはもちろん、デュアルブーストハイブリッド+eアクスルの走りも評判がいい。現状では半導体不足などによるタマ不足で出荷台数が頭打ちになっているが、それが正常化すればクラウン久々の大ヒットと言っていい実績を残すものと思われる。
■クラウンにしては内装がややチープか!?
新型クラウンクロスオーバーのインテリア。インパネなどに硬質なプラスチックを採用しているのが筆者によれば気になる点だと指摘する
さて、かくも好評のクラウンクロスオーバーなのだが、ボクが個人的に気になっているのは、「内装がクラウンとしてはチープでは?」というところだ。
わかりやすいところで言えば、インパネの一部、センターコンソールサイド、ドアトリム上部など、パッセンジャーの手が届く部分に硬質なプラスチック部品が意外なほど多用されている。
従来のクラウンであれば、スラッシュ成形のソフト材や、ファブリックでトリミング処理するなど、ユーザーが直接触れる部分の素材はかなり吟味して使われていたものだが、そういう部分でもクラウンクロスオーバーは忖度なし! なのだ。
このあたり、当然ながらトヨタの開発陣にしてみれば熟慮の上の判断なのだろうが、新時代のクラウンはデザインや走りだけではなく、トヨタの商品ラインナップ中の位置づけも大きく変化したという事情もありそうだ。
■グローバル戦略となったこともポイントのひとつ
今回から日本市場専用ではなく、北米などグローバルでも販売されることになった新型クラウンクロスオーバー
まず、ひとつ目の大きなポイントは、これまでほぼ国内専用車だったクラウンが、今後はグローバルモデルとして世界に展開するということ。
ボクは2022年9月にデトロイトショーの取材に出かけ、現場でUS仕様クラウンクロスオーバーを見てきたのだが、北米主力車種のカムリと並んだクラウンクロスオーバーは、実に堂々たるアピアランスで存在感抜群だった。
北米市場では従来トヨタブランドの最高級モデルはアヴァロンだったわけだが、それに代わる新しい旗艦として、クラウンクロスオーバーは大幅な戦力アップを果たしたといっていい。
また、北米市場のユーザーは内装のマテリアルや成形方法について日本人ほど細かいことを気にしないといわれている。つまり、インテリアの質感については、コストと商品性のバランスを北米市場ベースで計算した結果で、それが日本人にとってややチープに感じられるとすれば、クラウンの目指す市場が国内から北米へ動いた結果、と言えるのかもしれない。
以上は市場の特性を反映した結果の話だが、もうひとつ懸念されるのは、ここ数年自動車の製造コストがどんどん上昇してきていることだ。
■原価低減のしわ寄せがインテリアに?
新型クラウンクロスオーバーの後席。主にインテリア関係に原価低減のしわ寄せがきてしまったのではないかと筆者は推測しているが……?
つい最近、日産リーフの上位モデルが内容変わらずで100万円値上げされるという驚きの事件があったが、原材料価格の高騰は何もBEVだけの問題ではない。
クラウンクロスオーバーにしても、モデルチェンジ後も値上げをなるべく抑えたければ、どこかでバッサリ原価低減をせざるを得ない。
新型はご存じのとおり、カムリと同じTNGA-Kプラットフォームがベースだが、パワートレーンにまったく新しいデュアルブーストハイブリッドを新設し、全グレードeアクスルによるAWD化や後輪操舵システム(DRS)を備えるなど、メカニズム面ではアグレッシブな進化を遂げている。
これは当然ながらかなりのコストアップをともなうわけで、そのままでは大幅な値上げが不可避。そのしわ寄せが、ひょっとするとインテリアにいちばん顕著に出てしまったのかも知れない。
コスト上昇によるインテリア質感ダウンはトヨタだけの問題ではなく、欧州ブランドにもその影響が出始めている世界的な傾向。かつてゴルフVIIの時代には「内装品質のベンチマーク」と言われたVWは今や見る影もないし、欧州プレミアム御三家ですら下位レンジの車種ではかなりのグレードダウンが感じられる。
加えて、これからただでさえコストアップ不可避のBEV時代がやって来るわけで、内装品質については当分冬の時代が続くような予感がしますねぇ。
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みんなのコメント
デザインも質感も極めてチープ
世界に誇れるはずのMADE IN JAPAN
がここまで低下したのかと思うと
日本人として、恥ずかしい
記憶は勿論、国産の歴史にも永遠に残るだろう