ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。
第二十七回目となる今回は、米国ラスベガスのテクノロジー見本市「CES2024」を見た氏による、ソニーホンダ、そしてホンダの挑戦について。
ソニーAFEELAによる高次元の挑戦、ホンダの新たなEV計画…… 「CES2024」から見えてきたこと
※本稿は2024年1月のものです
文/中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)、写真/ホンダ、ソニー ほか
初出:『ベストカー』2024年2月26日号
■ソニー+ホンダのアフィーラはAIの最も難易度の高い領域に挑戦している
モビリティの新テクノロジー発表会の様相を呈してきた近年のCES。写真はソニーグループプレスカンファレンスに登壇したソニー・ホンダモビリティ 代表取締役 社長 兼 COO川西 泉(AFEELA公式X(旧ツイッター:@shmAFEELA_jp)より)
米国ラスベガスのテクノロジー見本市「CES2024」は自動車アナリストにも避けられない関所となりつつあります。
今年はAI(人工知能)とモビリティがショーの主役にあり、生成AIは実用ツールとして多くのデバイスに導入され、モビリティの存在感も昨年以上に上昇し、自動車ショーとしての存在感が増しています。
多くの報道にあるように今年のCESは生成AIブームの最中にあります。
「Beyond Generative AI(生成AIの向こう側)」を見通す議論も始まり、AI半導体とデータインフラを掛け合わせた先にある「AIプラットフォーム」「デジタルツイン(人、モノ、場所などをデジタル上に複製すること)」「ロボット」の3領域に注目が集まっています。
生成AIを導入する新技術はフロアにあふれていましたが、モビリティ領域では民生電気商品ほど「AI祭り」であったという印象は受けませんでした。
VWが対話型ChatGPTを自前の音声アシスタント「IDA」に統合して改良版ゴルフに搭載し、メルセデスは生成AIを搭載した次世代のインフォテインメントシステム「MBUXバーチャルアシスタント」を発表しています。
いずれも対話型のAIバーチャルアシスタントの領域であり、乗員の使い勝手は向上しますが「曖昧さ」が許されるという意味では技術的に難易度が高い話ではありません。
筆者の印象として、最もAIの難易度の高い領域に挑戦しているのはソニーホンダのAFEELA(アフィーラ)であったと感じます。
CES2024に登場した最新のAFEELAは実際の生産用プラットフォームをベースにした正真正銘のプロトタイプとして細部に渡りアップデートが施されていました。
なかでも、川西泉社長(ソニー・ホンダモビリティ代表取締役)のプレゼンテーションには多くの空間価値、AI、AD/ADAS(自動運転/先進運転支援)にかかわる新発表が盛り込まれ、いわばモビリティの川西ワールドとなっていました。
シミュレーターゲーム「グランツーリスモ」シリーズを手掛けるポリフォニー・デジタルとの車両開発の協業、ユーザーエクスペリエンスではエピック・ゲームズと仮想空間を活用したエンタテインメントやゲーミング機能を開発しています。
世界中のクルマの走りを「グランツーリスモ」のバーチャル上で再現してきたポリフォニーが実際の車両をいかに走らせるのか、ここは話題性だけでは終わってほしくない楽しみな領域といえるでしょう。
日本ではAIベースの対話型パーソナルエージェントの開発でマイクロソフトと提携することが注目されましたが、実際、現場で最も歓声が上がったのは、プレイステーションのゲームコントローラを用いて、リモートでAFEELAを無人で操作した瞬間でした。
「川西ワールド」の要諦は、AD/ADASという「曖昧さ」が許されない領域に新しいAIを導入するところにあります。
自動運転とは、認知→行動計画→操作をシステムが行うものです。認知の領域にViT(Vision Transformer)と呼ばれる特化型のAIを導入し、行動計画にも機械学習を取り入れます。
これは大量のデータをAIで解析し、自動運転システムを作るテスラと同様のアプローチといえます。
ただし、同時に伝統的なCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を併用することでブラックボックスのない高精度な運転支援の実現を目指すようです。
ここはソニー(川西社長)とホンダ(水野泰秀会長)で最も熱い議論を交わした領域と聞いています。
伝統的OEMとは一味も二味も違うソニーホンダらしいアプローチであると注目しています。
CESはAIユーフォリア(陶酔)の中にあっても、モビリティでの運用は簡単ではなく、手探りであることが窺われます。
■ホンダが全開で挑む新たなEV計画
ホンダのEV開発計画の概要(出所:著者作成)
このCESが開催される直前の1月8日のある経済紙に「ホンダ、カナダにEV新工場」というスクープが躍りました。
この話題性とともにホンダは「ゼロシリーズ」と銘打った2つのEVを発表し、4年ぶりに復帰したショーの主役の一翼を担うことになりました。
アナリスト的に考えれば、実はこのカナダ新EV工場はそれほどのサプライズではありません。
ホンダは2030年までに世界200万台のEV販売台数を目標に置き、そのうち80万台を北米で生産する考えです。
40万台分に相当するオハイオ工場は2026年に稼働し「ゼロシリーズ」やAFEELAを生産することが決まっています。
その次をどうするかの決断を促したのが、昨年公表されたGMと共同で2027年の導入を目指していた、CR-Vクラスの次期中型EVの開発中止です。
それをカバーするために2030年頃までに計画していた独自の次世代EV開発と新工場建設を2028年に早めたということです。
米国ではEV需要は想定よりも弱く、早い段階で新商品に飛びつく「アーリーアダプター」の需要が一巡し、金利上昇、景気悪化に伴う消費者マインドの悪化が想定より早い踊り場を呼び込んでいます。
そこにトランプ元大統領の次期候補指名への動きも加わり、EV普及の先ゆきには大きな不透明感が漂います。
カーボンニュートラルを実現するにはEVの普及は不可欠と考えるホンダはここが挽回をする好機だと考え、バイクメーカーらしくスロットルを全開にしたようです。
●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数
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