E-TECH HYBRIDに感心する
ルノーのコンパクトSUV『キャプチャー』に、アルカナ、ルーテシアに続いて、E-TECHハイブリッドモデルがラインアップされた。
BMW118d ディーゼルの良さは健在。1タンク1000km以上の足の長さは魅力的
E-TECHハイブリッドシステムは94ps/148Nmの出力の1.6ℓ直4ガソリンエンジンと49ps/205Nmのメインモーターと20ps/50Nmのスターター&ジェネレーターを組み合わせたうえで、シンクロ機構とクラッチを廃したドッグミッションを採用したことによって、ダイレクトで効率の良い走りを生み出している。
ドッグミッションは回転を併せる機構を廃していることから、同調に要するタイムラグやパワー伝達ロスが少なく、モータースポーツシーンで主に使われている。半面、エンジン回転と駆動輪側との回転差を合せるドライビング技術を要するが、このE-TECHハイブリッドではモーターで同期させることでそれを解決。ルノーのF1技術が集約された高機能ハイブリッドシステムだ。
コンパクトなシステムによって、ふたつのモーターと1.2kWhの駆動用バッテリー加えても車両重量はガソリンターボモデルの110kg増で、1420kgに抑えられている。
ドライブした第一印象はガソリンモデル同様に正確なハンドリングに感心した。HEV化されているにもかかわらず、操舵初期の応答が良く、ノーズは期待通りの動きを見せ、ロールの進行も穏やか。フロントの重さを感じることなく旋回姿勢に入っていってくれる。
全長×全幅×全高:4230mm×1795mm×1590mm/ホイールベース:2640mm トレッド:F1555mm/R1540mm/最低地上高:172.5mm/最小回転半径:5.4m 車両重量:1420kg/前軸軸重:850kg/後軸軸重:570kg 【海外技術情報】ルノーのハイブリッドシステム「E-TECHテクノロジー」開発秘話 前編|Motor-FanTECH[モーターファンテック]ルノーはヨーロッパにおいては純EVモデル『ZOE』を発売しているが、別の手段でも電化を進めている。それが、EVのみならずF1の経験を活用した革新的なハイブリッドパワート…car.motor-fan.jpシャシー性能に感心する
後席は前後に可動するが、一番後ろにしておくと後席はこうなる。フロントシートはフランス車らしい座り心地。キャプチャー本来の一体感ある走りはいささかも失われることなくHEV化が実現したのは、軽量コンパクトなシステムユニットに加えシャシー性能の高さもある。
日産と三菱とのアライアンスによって開発されたCMF-Bプラットフォームは、路面から強めの入力やボディ全体にかかる高Gでの旋回中でも接地感を失うことがなく、4輪がしっかりと路面を捉えて離さない。とくに旋回中に加速を必要とするような状態でもFFモデルにもかかわらず、駆動ロスなくグイグイと速度を増していくとともにリヤは終始安定し旋回Gを高めていく。
CMF-Bプラットフォームは日産ノートなどでも使われているが、ルノーのチューニングのうまさに感心した。タイヤサイズ:215/55R18サイズグッドイヤーのEfficient Gripを履くリヤサスペンションはトーションビームアクスル式。4WDは設定しない。フロントはマクファーソンストラット式4輪が路面をキャッチしている感覚が常に伝わってきて、フラットな姿勢をキープし続ける点に、シャシー剛性の高さを実感。アクセルのオンオフにも姿勢の乱れはなく、背が高いSUVにとってはこの上ない安心感である。ヨンクの必要性をオンロードでは感じることがなく、FFであることさえも意識させないのは見事だ。
日常使いにおいても、高速ドライブ時における直進安定性は高く、ステアフィールもセンターがしっかりと出ていて外乱に強い。
もっとも同じシャシーを使っているはずの日本車では、残念ながらステアフィールの落ち着きや足元の一体感などを感じることは少ないから、開発環境による違いや、ルノーマジックなのかもしれない。
乗り心地面を日本車と比較してみても、入力自体はキャプチャーも確かに感じやすい。一瞬強い入力も確かに感じるが、カドがなくすぐに収まる。収まる理由はリヤも同時に入力を受け止め、吸収するから、タイムラグがなく一発で収まった気がする。前後のつながりが良く後に残さないのが、マジックのひとつの理由に思われた。
エンジンは、日産開発の1.6ℓ直4を使う。エンジン 形式:直列4気筒DOHC/型式:H4M型/排気量:1597cc/ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm/最高出力:94ps(69kW)/5600pm/最大トルク:148Nm/3600rpm/燃料供給:PFI/燃料:プレミアム/燃料タンク:48ℓ 一方で日本車を思い起こすと、前後がバラバラに移相しながら振動を受ける印象で、同じ入力でも時間差があり、仮に収まりが良くても全体では振動時間が長い。フロアもその時間差を受けて振動を感じさせる。キャプチャーは一瞬大きく感じても一体感をもって同時に納めようとするから、バイブレーションも感じにくい。リヤを最大限に仕事をさせている点が、キャプチャーが一枚上手の乗り味を見せているポイントのようである。
HEVシステムはトヨタやホンダ同様にストロングハイブリッドであり、機構的にはじつに手が込んでいるが、省くものは省き、協調性を最大限生かして作り込まれてるのがわかる。スタートダッシュではモーターの働きのみで、スムースかつ伸びがある。
しかしながら決してモーターパワーに依存しすぎているわけではないから、加速力に驚きはない。低速域では滑らかさと静けさが持ち味だ。このシステムの狙いは全速度域カバーの走りである。中速域ではエンジンが掛かりダイレクト感のある走りとモーターのスムースさで粘り強さを持つが、高速域になればモーターはサポートに徹してエンジン主体で加速態勢を作る。
高速域になってからはギヤ比の高い可動域を生かして、速度を伸ばしていく。モーターアシストによるシンクロ技術によって段差のない変速はダイレクトな加速感を継続し、エンジンパワーはギヤ比に合せてグイグイと速度を伸ばす。
低速域ではモーター。高速域では高いギヤ比によるエンジン活用。その中間域やリレー領域ではモーターが主役になったり変速に一役買ったりして、速度レンジをカバーしているのだ。
このあたり、やはり200km/h近くまでの利用レンジを必要とする、欧州生まれならではのHEV技術へのこだわり。これなら街中からオートルートに至るまで効率良く走ることができ、走りの良さと燃費は両立できるに違いない。日本の環境にとってもじつに有効であり、BEV化全盛のなかで、欧州発の本格派HEV採用の多販モデル参入と走りの良さに、ルノーの底力を見た。欧州恐るべしである。
最新ルノー車に共通するインパネ。トランスミッションの表記は「電子制御ドッグクラッチマルチモードAT」ギヤ比 原動機 1速2.197 2速1.270 3速0.771 4速0.578
モーター 1速2.260 2速0.872 最終減速比 4.928
ラゲッジスペースは、2段構造。フロア下にサブトランクがある。また、後席を前にスライドさせるとラゲッジの奥行きが広がる。ルノー・キャプチャーE-TECH HYBRIDレザーパック全長×全幅×全高:4230mm×1795mm×1590mmホイールベース:2640mm車重:1420kgサスペンション:Fマクファーソン式/Rトーションビーム式駆動方式:FWDエンジン形式:直列4気筒DOHC型式:H4M型排気量:1597ccボア×ストローク:78.0mm×83.6mm最高出力:94ps(69kW)/5600pm最大トルク:148Nm/3600rpm燃料供給:PFI燃料:プレミアム燃料タンク:48ℓメインモーター5DH型交流同期モーター 最高出力:36kW(49ps) 最大トルク:205Nmサブモーター3DA型交流同期モーター 最高出力:15kW(20ps) 最大トルク:50Nmトランスミッション:電子制御ドッグクラッチマルチモードAT燃費:WLTCモード 22.8km/ℓ 市街地モード20.4km/ℓ 郊外モード:24.1km/ℓ 高速道路:22.6km/ℓ車両本体価格:389万円
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みんなのコメント
ストロングHEVを出す決断するのに20年以上。恐るべし。
これって、小型で安価な車が主体のフランスやイタリアのメーカーが、内燃機関車ゼロは近々では難しいことへの布石でないかと。