この記事をまとめると
■ここ1~2年トラックのEV化は急速に進んでいる
「日野の排ガス偽装」は「単なる会社の不正」問題ではない! EV化も難しく水素燃料も困難な大型車の「環境対応」はいまだ暗中模索だった
■過去にはトラックはEVに不向きだといわれることもあった
■トラックのEV化のメリット・デメリットを解説
一定数のトラックはEV化する必要がある
トラックのEV化は、ここ1~2年で急速に進んでいる。荷物を運ぶトラックは、できる限りたくさんの荷物を積んで長く走り続けることができたほうがいいから、EV化するのは不向きと思われてきた。けれども環境性能を高める必要性とエネルギーのさらなる有効利用から考えても、一定数のトラックをEV化するのは必要なのだ。
デメリットは、前述したようにEVで巡航距離を伸ばすにはバッテリーをたくさん積む必要があり、バッテリーをたくさん積むと重くなって荷物の積載量が減ってしまうし、充電に時間がかかることになって稼働時間も減ることになる。これは業務に支障を来たすから、何らかの手段で解決しなければならない課題だ。
一方のメリットはどうだろう。もちろん、いっぱいある。それはまず静かなこと。ディーゼルエンジンは圧縮して高温になった空気のなかに燃料を噴射して一気に爆発させる。そのため、燃焼時の圧力が高く、エンジン音は大きくなってしまう。これは夜間や早朝の住宅地で稼働するには、ちょっと迷惑になる。実際、フランスの首都パリの住宅地などでは、夜間は電動車両しか走行できないなどの規制が敷かれている。そのため、十数kmはモーターだけで走れるハイブリッド車両なども利用されているのだ。
ふたつ目のメリットとして、EVは力がある。ディーゼルエンジンのほうが、力があるんじゃないの? と思う人も多いだろうが、構造上、エンジンはモーターには敵わない。ディーゼルエンジンで力(トルク)を出そうとすると、大きな燃焼圧力に耐えて駆動力として伝えるためにエンジン内部の部品を頑丈に作ることが必要になる。その結果、重くて大きい部品になって、駆動損失も増えてしまうのだ。他方、モーターはエンジンのように往復運動を回転運動へと変換する機構が要らないから、モーターの出力軸さえ大トルクに耐えさせれば、大きな力を発生することができる。
実際、世界最大のトラックともいえる、採石場などで働く巨大なオフロードダンプは、ほとんどがモーター駆動で走行している。ただし、バッテリー式では充電が大変なので、ディーゼルエンジンで発電し、その電力でモーターを駆動するというシリーズハイブリッドを採用しているのだ。
そうなると課題はやっぱりバッテリーの重量と充電時間だろう。バッテリーの重量は、使用環境を小口配送など近距離輸送に限定して走行距離を抑えることで少なくすることができる。充電時間はバッテリー交換式とすることでも対策は可能だ。
現在はまだ実証実験レベルながら、さまざまなバッテリー交換式のEVトラックも利用されている。バッテリー交換式は、ある程度のボリュームの車両が揃わなければ採算が取れないから、いますぐには普及することは難しい。
結局のところ、既存のインフラであるガソリンスタンドが充実しているから、EVに置き換えるのが難しいのであって、ガソリンスタンドの廃業が進んできた現在では、残るガソリンスタンドや新たに開設されるガソリンスタンドでEVを充電できるようにすれば、ガソリンスタンドの需要確保とEVの充電環境を満たせる施設になり得る。
すでに元売り大手企業では、こんな考えのもと、ガソリンスタンドの改革に着手している。いまはまだ実証実験レベルながら、さまざまな試行錯誤が繰り広げられているのだ。
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