ハイブリッドやクリーンディーゼルだけでなく、最近では普通のクルマにも転がり抵抗の少ないエコタイヤ(低燃費タイヤ)が装着されることが多くなってきた。はたしてエコタイヤを装着すると燃費がどれくらいよくなるのか?
またタイヤサイズは、純正と同じじゃないとダメなのか? など、最新のエコタイヤに交換するメリット、デメリットをモータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
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文/高根英幸
写真/ベストカー編集部、Adobe Stock
■低燃費タイヤを装着するとどうなるのか?
ハイブリッドカーやクリーンディーゼルは、エコカー減税の対象車になるほど燃費がいいが、それはパワートレインの優秀さだけでなく、空気抵抗や転がり抵抗など、あらゆる損失を低く抑え込んで効率を高めているからだ。
当然のことながら、タイヤは低転がり抵抗のエコタイヤ(低燃費タイヤ)が標準装着されているケースがほとんど。
どのタイヤが低燃費タイヤかは、平成22年1月から日本自動車タイヤ協会が、低燃費タイヤのラベリング制度を実施しているので見てほしい。
低燃費ラベリング制度は、タイヤ購入時に低燃費タイヤの性能が、ひと目で分かるようにグレード(等級)分けをラベル表示したもの。
グレーディングシステム(等級制度)により「転がり抵抗性能」の等級がAAA・AA・A、「ウェットグリップ性能」がa・b・c・dに該当するものが「低燃費タイヤ」となり「低燃費タイヤ統一マーク」が表示される。
ちなみに新車に標準装着されているエコタイヤ(OEM)は銘柄が豊富。例えば、現行プリウスに標準装着されているエコタイヤは以下の通り。
■標準車用の195/65R15
ブリヂストン・EP150/ダンロップ・エナセーブEC300+/トーヨータイヤ・ナノエナジーJ59
■ツーリングセレクション用の215/45R17
ブリヂストン・トランザT002/ヨコハマ・ブルーアースE70/トーヨータイヤ・ナノエナジーR41
■NDロードスターはタイヤ交換で燃費が約15%伸びた
エコカーでなくてもマツダのNDロードスターやトヨタ86といったスポーツカーだって、標準タイヤはエコタイヤで燃費性能も追求している。
もちろん、スポーツカーでもタイヤを替えるだけで燃費は大きく変わってくる。昨年ベストカー本誌が実施したNDロードスターのタイヤテストを参考にしてほしい。
燃費を左右するファクターに、タイヤの「転がり抵抗」というものがある。各タイヤメーカーの試乗会に行くと、テストコースで実車を使いタイヤを履き替え、一定速からどこまで転がるかのテストを行う。
その同じ方式で転がり抵抗を実施した。20km/hでギアをニュートラルにし、惰性だけでどこまで転がるのかを計測。
テストしたタイヤは、ヨコハマタイヤの「アドバンスポーツ V105」、「アドバンフレバ V701」、さらにはエコタイヤの代表的存在「ブルーアースA」を用意して、転がり抵抗の違いをテストした。
まずは、スポーツ系タイヤのアドバンスポーツから。測定する速度も20km/hと低いことからすぐに止まってしまうだろうと予想していたのだが、意外や意外100m近くまで惰性で転がった。
あまりによく転がるのでスタッフともども驚く。最近では、スポーツ系タイヤでも、燃費性能を大きく落とすことなく走れる性能を持っていることを確認できた。
次のアドバンフレバは「楽しいハンドリング」をテーマにしたハイパフォーマンス系のスポーツタイヤで、さらに低燃費をも謳っているタイヤ。エコタイヤでは物足りないという人にうってつけのタイヤといえるだろう。
テストの結果は、やはり転がり抵抗が低いようでアドバンスポーツよりも10mほど長く転がった。特に10km/h以下に速度が落ちてからの転がり抵抗に差があるようで、最後の伸びというのがある。
では最後に、このテストパートでは低燃費タイヤの真打ちともいえるブルーアースAをテストする。
ブルーアースAは、いわゆる燃費性能を重視したエコタイヤで、エコタイヤのウィークポイントともいえるウェット性能を重視している。
そのためか縦グルーブがハッキリクッキリなのが印象的で、それによってスポーティなルックスも持ち合わせているのが頼もしい。
さっそく走らせてみると、やはりその実力は遺憾なく発揮された。初速の20km/hから10km/hレベルまで速度が低下するフィーリングは、アドバンフレバとそれほど大きな差はない。
しかし、10km/h以下、さらには5km/h以下と徐々に速度が低下するに従って、明らかに抵抗感なく転がる印象。最後の最後のひと伸びという感じで確かにによく転がる。
エコタイヤは極低速域での転がり抵抗が少なく、そして低いということがこのテストでわかった。
■最近のエコタイヤは弱点がほぼない!!
スポーツカーといえば、スポーツラジアルを履くのが常識だったのは昔の話だ。というのも、エコタイヤ=グリップの悪いタイヤと思っているのなら、その認識は改めたほうがいい。最近のエコタイヤは、グリップ力を落とすことで転がり抵抗を軽減しているわけではないのだから。
確かに初期のエコタイヤは、グリップレベルの低いタイヤが多かった。加えて軽自動車の燃費競争が勃発した頃は、タイヤの空気圧が一気に上昇して、車体の軽量化と相まって一気にタイヤのグリップを感じない軽自動車が増えたりしたので、なおさらエコタイヤはグリップが低いというイメージをもった人も多かったんじゃないだろうか。
しかし、最近のエコタイヤは、決してグリップが低いタイヤではない。もちろんスポーツラジアルとは比べるべくもないが、最新のエコタイヤは普通のタイヤとして使えるほど弱点のないタイヤになっている。
というのも、エコタイヤが低い転がり抵抗を実現しているのは、決してグリップレベルを落としているからではないからだ。銘柄にもよるが、むしろひと昔前の普通のタイヤ以上のグリップレベルは確保されている。
そもそもタイヤの転がり抵抗には、タイヤが路面をつかむグリップ力だけでなく、タイヤが変形する時に発生する抵抗もあり、これが意外と大きい。
タイヤのトレッド面のゴムが路面と接して、車重によって潰れることによって変形する。この変形するために使われたエネルギーは、熱に変換される。エンジンの駆動力をここで熱に変換するロスが生じているのである。
しかしタイヤの性能解析技術も進み、設計技術、分子レベルの研究開発によって、トレッドゴムが変形しても熱を発生しにくいよう工夫されている。これがエコタイヤが低転がり抵抗を実現できている大きな理由だ。
■エコタイヤに交換したら2割燃費が向上したケースも。十分元が取れる!!!
勘違いしないでほしいのは、転がり抵抗の軽減率がそのまま燃費性能の向上率になる訳ではないということ。従来製品に比べて転がり抵抗が13%軽減したから、燃費も13%向上する訳ではないのだ。
けれども、ある程度使い込んでいる愛車のタイヤをエコタイヤに交換するとなれば、話は別だ。さらにタイヤを履き替えるということは、新品同士を比べるのではなく、これまで履いていて古くなったタイヤから、新品のエコタイヤになるのだから、その差はさらに広がる。
同じタイヤ銘柄を使っても、車種やタイヤサイズ、走り方によって燃費の向上率は異なるから、一概に何割改善、なんて表現はできないが実際、筆者の回りではホイール外径を1インチアップしても、エコタイヤにしたおかげで燃費が2割も向上した、なんて例もある。しかも空気圧も少し下げることができて、乗り心地も良くなっているのだ。
つまり、今履いているタイヤが完全に減ってからエコタイヤに履き替えようとしているのなら、なるべく早くエコタイヤに履き替えたほうがいい。
燃費が1割以上向上するということは、タイヤの寿命を5万kmとして、その1割の5000km分の燃料が節約できる。リッター10kmであれば500L、つまりレギュラーガソリンが1L130円としても6万5000円の燃料代が浮くのだ。これは十分タイヤが購入できる金額だろう。
すなわちエコタイヤによる燃費向上で元が取れるのは、これまで普通のタイヤを履いていたクルマだ。まだ使えると交換を先延ばしてケチるより、エコタイヤへの履き替えの方が得する場合がある訳がこれで分かるハズだ。
■グレードの高いエコタイヤほど転がり抵抗とウエット性能の両方を高めている
エコタイヤの性能については、前述した通り、ラベリングによってひと目で分かるようになっている。自分のクルマにどんなエコタイヤが向いているかは、タイヤ専門店のスタッフに尋ねるのが得策だ。
メーカー系のタイヤ専門店では、自社ブランドのタイヤを勧めてくるが、そのぶん、自社ブランドのタイヤに関する知識には長けている。燃費以外にどんな走りの要素を重視するのか、考えたうえで相談するといい。
特にウエット性能は低転がり抵抗との両立が難しいので、グレードの高いエコタイヤほど転がり抵抗とウエット性能の両方を高めている。
実はストリートではウエット性能はドライ路面以上に重視したい要素だ。クルマを購入する時には自動ブレーキの有無を気にするのなら、タイヤのウエット性能も重視しなければ、肝心の時に止まり切れないことだって有り得るのだ。
■タイヤサイズは純正と同じでなくてはダメ? タイヤサイズを変えるメリット、デメリット
さらにタイヤを履き替える際に、タイヤの銘柄だけでなく、サイズ変更まで一緒に考えると走りをより洗練させることもできる。一般的にはホイールをインチアップすると、タイヤの扁平率は下がり、外径を合わせるためにワイドなタイヤを選ぶことが多い。
185/65R16が純正サイズであれば、215/45R18や235/35R19といったサイズを選ぶことができるのがインチアップだ。ホイールが大きくなればクルマは高級感や高性能感がより強調され、適度なローダウンと組み合せることで一層スタイリッシュになる。
インチアップしても外径は基本同じようにすること。これはスピードメーターや燃費計などの誤差が大きくなってしまうからだが、だからといってワイドなタイヤサイズを選ばなくてはいけない訳ではない。
インチアップによって低扁平のタイヤを選ぶと、タイヤの剛性が上がることから地面との接地面は前後方向が短くなる。
そのため接地面積を補うためにもタイヤ幅を増やすのが一般的なのだが、ノーマルタイヤよりグリップ力のあるタイヤであれば、同じ接地面積を確保しなくても、十分に高いグリップ力を発揮してくれる。
タイヤやクルマの組み合せによっては、接地面積を減らすことで、接地面にかかる路面に押し付ける圧力が高まり、グリップ力はほとんど変わらない。
例えば185/65R16からのインチアップに195/50R18や205/40R19を選べば、ホイールのリム幅増大は最小限に抑えられるので、タイヤとホイール両方の重量増を抑えられる。185/45R19も理論上は可能だが、接地面積が減るのと、タイヤに設定されたロードインデックス(1輪あたりの許容重量の指数)が低い場合があるので注意が必要だ。
ローダウンと組み合せてタイヤをフェンダーいっぱいに張り出たせたいのであれば、タイヤサイズはそのままにインセットが少ないホイールを組み合せることで、ルックスは整えられる。インセットというのは以前はオフセットと呼んでいた、リム幅の中心とハブへの取り付け面とのズレだ。
ノーマルホイールでもインセットは設けられている。ブレーキなどの足回りを抱え込むため、ホイールはハブ面が出っ張っており、ホイールはそれを包み込むようにハブとの取り付け面が奥に引っ込んでいるのだ。
このインセットを減らすと、同じリム幅でも、クルマに取り付けた時にはタイヤが外に張り出してくることになる。つまりタイヤサイズは同じでも、見た目にはワイドなタイヤを履いたのと同じ効果があり、ワイドトレッドで走りも安定する効果が狙えるのだ。
なお一定以上にはみ出したタイヤは車検に通らなくなる(タイヤのみで10mm未満まではOK)し、雨天走行時にはボディを汚すことになるので、基本はフェンダー内にキレイに収めること。
インチアップしてスタイリッシュになったけれど、タイヤホイールが重くなってしまうと足回りがドタバタ(ダンパーが負けている状態)したり、フニャフニャな乗り味になってしまう(タイヤの剛性が上がったため、スプリングが負けてストロークが大きくなった状態)こともある。それよりもワンサイズ細くして軽快な走りと燃費向上を図るのも手だということだ。
■タイヤの空気圧を調整して自分好みの乗り味や燃費アップを狙うチューニングも可能だ
最後は日常的な点検でできるタイヤのチューニングについて解説しよう。タイヤの空気圧は、月に1度は点検するようタイヤメーカーやガソリンスタンドが呼びかけていることはご存知のハズ。
タイヤ表面やゴムバルブは微量だが空気を通す。さらに季節により気温の変化があれば、タイヤ内部の空気圧も変化するので、点検は必須なのだ。
クルマには純正指定のタイヤ空気圧の指定が、運転席のドアを開けた側面などにステッカーで示されている。これを見れば乗員の人数や荷物の積載量、高速道路走行などの使用条件によって、調整するようになっていることが分かる。
これはタイヤが持っている性能を、より最適に引き出せるよう、テストドライバーが入念にテストを繰り返して、設定されたものだ。しかし乗り心地などの好みは人それぞれ。
さらには日常的に走るルートの路面状況も、オーナーによってさまざま。ましてやタイヤの銘柄や扁平率、サイズを変えれば、タイヤの剛性も変わる。そのため指定空気圧から上下させて、自分の好みの乗り心地、走行感を探るのが空気圧のチューニングだ。
タイヤ自体は空気圧の設定には柔軟に対応できるので1、2名乗車時にも4名乗車用の空気圧に設定しても、問題はない。
純正指定より空気圧を高めるということは、路面と接触している部分の変形は少なくなるので、転がり抵抗も減ることになる。
ただし乗り心地は堅めになるし、接地面積は減少してしまうので、ウエット性能が低下することもある。最終的にはクルマの保守管理はオーナーの自己責任。危険のない範囲で調整して楽しんでほしい。
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