2018年分の販売用車両はすでに予約でいっぱい。発売から間もないながらも絶大な人気を見せるZ900RSに、Z400FX、Z900、Z1000Rと乗り継いだ、モータージャーナリストの後藤 武氏が試乗。彼が肌で感じた進化とは?
僕が免許を取得したのは昭和54年、高校3年の時だった。ほぼ同時にZ400FXが発売されてこれを購入。その後Z900、Z1000Rと乗り継いで、現在のZ1を購入したのが20年前。つまりずっと空冷Zに乗り続けてきた。そんな僕から見たZ900RSというオートバイについて話をしようと思う。
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カワサキがZ900RSを出すというインフォメーションを流した時、二輪業界の人間としては非常に興味をそそられた。けれど個人的にはあまり期待していなかった。輸出用Z900用エンジンを転用しているわけだし、そこに空冷4気筒の迫力や力強さを求めても難しいだろう。つまりそこにZ1らしさはないだろうと決めつけていた。たぶん他の空冷Zに乗り続けているライダー達も同じような感じだったはずだ。
ところがそんな思いは走らせた瞬間に霧散した。サウンドチューニングと低中速トルクアップの効果。エンジンを始動した瞬間感じたのは今までの水冷エンジンとはまったく違った力強さだった。効率だけを追求したと思っていた水冷エンジンはモディファイを施すことでここまで力強いフィーリングになるものかと驚かされたのである。しかも低回転でクラッチをつなぐと予想以上に太いトルクで加速していく。このフィーリングには驚かされた。
高回転のパワーはベースとなったZ900に比べれば落ちていると数値では出ているがZ900RSに乗っていると高回転で元気がないとはまったく思わない。逆に広いオートポリスのサーキットを攻めていてもまったくパワーや伸びに不足を感じないほどだった。レースならともかく休日、スポーツ走行に出かけるレベルならこの特性でもまったく問題がないだろう。そして驚いたのはハンドリングの素晴らしさ。素直でクィックなスポーツ性も持っているのだけれど、空冷Z的などっしりした感じがある。エンジンもハンドリングもZ1とはまったく違うはずなのに、どこか血筋というかカワサキらしさを感じるのである。
僕のZはハンドリングやエンジンの性能を引き出すため各部に少し手を加えている。こうやって手を加えていくとZはびっくりするくらいに乗りやすくて面白いバイクになる。自分が二輪雑誌の仕事をしていて、毎回最新のオートバイに試乗するのに未だにZ1に乗り続けている理由はそれだ。「旧車だから味がある」というレベルではなく、新型から乗り換えても「やっぱり自分のZ1が一番いいな」と思うからである。もちろん、そこにはメンテやチューニングする楽しさもあるし長年かけて作り上げてきたという愛着もある。
でもZ900RSは、そんな僕にとってもありなバイクだ。今、一番魅力的に見える国産車であることは間違いない。このエンジンのフィーリングやハンドリングは頑固なZ乗り達にとっても十分納得できるもので、Z1では絶対到達できないレベルの走りが可能になるからだ。そして実際、周囲のZ乗り達は誰もがZ900RSに乗ると手放しで褒め称えているのである。
後藤 武>>>
オートバイ誌クラブマン元編集長。顔に似合わず繊細な感覚の持ち主で、各車の違いを読み取る。
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