ロータリー・スポーツの復活を模索するマツダ
以前からマツダは、ロータリーエンジンを搭載したスポーツカーの復活を模索してきた。本当に実現するのか疑問は残るものの、そのオリジナルを振り返り、魅力を再確認するのにはちょうど良い機会だろう。
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1番新しいモデル、マツダRX-8をお借りすることもできたが、折角だから初期のモデルが望ましい。純粋なロータリーエンジンを味わってみたい。そこで選ばれたのが、初代(FB型)のRX-7。後期型でアップデートを受けているが、本質的に大きな違いはない。
パワートレインの状態は良好。ボディも、当時のままの姿が残されている。塗装は僅かに補修を受けているものの、ピンと真っすぐ張りがある。
実物を目の当たりにすると、想像以上に可愛い。1983年式のスポーツカーとしては、さほど小さくない。このサイズのスポーツカーは北米では珍しく、好調に売れたという。
全長は4285mm、全幅が1675mm、全高が1260mmで、トヨタGT86と比べるとひと回り大きい。英国仕様は2+2だが、リアシートはかなり狭い。アメリカでは、2シーターとして売られていた。
ベロア素材で包まれたシートへ腰を下ろし、カーペットが敷かれたフロアへ足を置く。全体的な配色や品質が、製造年を想起させる。
特にパワフルではなかった初期の2ローター
助手席が近い位置にあり、フロントピラーは細く、サイドウインドウは顔のすぐ横。いつも以上に事故は避けたいところ。前方視界は広く、リアハッチはガラス製で大きく、後方視界も広い。ヘッドレストが僅かにかかるが、バックミラー越しでも良く見える。
ドライビングポジションも好ましい。座面の位置は少し高めで、ステアリングコラムの角度は調整できないものの、ペダルには適度な間隔がある。ステアリングホイールの大きさも丁度良い。とはいえ、クラシックカーだという印象から逃れることはできない。
ボンネットを開くと、小さな2ローター・ユニットが姿を表す。前後重量配分を50:50にするため、マツダの技術者はフロントアクスルの後方へエンジンを載せた。
燃料の供給方法は、燃料噴射ではなくキャブレター。1ローター当たり573ccの容量があり、合計で1146ccになる。しかし、ピストンエンジンが2回転で1つの燃焼工程を済ませるのに対し、ロータリーは1回転で完了するため、倍の2292ccと計算される。
英国仕様の最高出力は106ps、最大トルクは14.5kg-mで、当時としても特にパワフルなわけではなかった。しかし、車重が1024kgと軽いこともあり、不足したわけでもなかった。今でも活発に走る。
当時のAUTOCARは動力性能をテストし、193km/hの最高速度を確認。0-97km/h加速8.9秒という、まずまずの結果を残している。
クラシックではないパワートレインの印象
改めて乗ってみると、エンジンとトランスミッションの滑らかさに驚く。近年では、さほど頑丈なユニットを組み合わせる必要がないため、トルクの小さいスポーツカーへMTが残されている場合が多い。そんなモデルと同じくらい、印象が優れている。
エンジンの本領を発揮させるには、しっかり回す必要がある。低速域でも扱いやすいとはいえ、意欲的に吹け上がる。アクセルレスポンスは鋭く、聴き惚れてしまうほど艷やかなサウンドを朗々と放つ。
回転数が上昇すると、振動も収まる。若干粒のあるエグゾーストノートと相まって、スズメバチの羽音のような高音が響く。
パワートレインの印象は、スタイリングやインテリアと違って、クラシックではない。6000rpmを超えると、7000rpmのレッドラインが近いことを、警告音で教えてくれる。無視していると、キャブレターが故に、それ以上回ってしまう。
操縦性も素晴らしい。ステアリングにはパワーアシストが備わらないが、素早く腕を動かせばロックトゥロック約4回転のラックを使い切れるだろう。かなりスローレシオだから、3代目RX-7のようにドリフトには向いていない。
現代の高速道路でも問題なく巡航できる
1980年代のクーペらしく、しっとり愉しむのが適している。タイヤは13インチで、185/70というサイズ。乗り心地は柔らかく、反応は素直で、安楽に乗っていられる。
ステアリングの反応も自然。コーナーを攻め込むと、比較的低いグリップの限界を迎えるまで、ボディはロールしていく。
現代の高速道路でも、問題なく巡航できる。クラシックカーとして考えると、感動するほど扱いやすい。ロータリーエンジンは、20世紀が終わって約20年が経過しても、魅力的に思えた。
マツダは、現在に相応しいクルマをデザインしてくれるだろうか。今から少しずつ貯金を始めておいた方が良いかもしれない。広島で、いつゴーサインが出されるかわからない。
※この記事のオリジナルは、2015年10月17日に執筆されました。
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