80年代アメリカで生み出された空力スペシャルなピザ配達カー
2024年問題とかクリスマスケーキ崩壊事件とか、日本の物流配達の事情にはビミョー以上の暗雲が垂れ込めている近頃。でもアメリカの方からは、物流関連といえば確かにその関連で、底抜けに明るいニュースが流れてきました。それがこちら、2023年12月半ばにアメリカの自動車オークションサイト「ブリング・ア・トレイラー(Bring a Trailer)」で2万5500ドル(邦貨換算約369万円)で落札された、1985年式のこの1台です。
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1人乗りの3輪車は440ccのロータリーエンジン搭載
別にLSRカー(最高速度記録車)ではありません。グラフィックの通り、なんとドミノ・ピザが1980年代半ばにピザの宅配のため、店舗に配属すべく開発したデリバリー車両の、10台の内の1台なのです。車名は開発を担当したベンチャー企業の名そのままに「トライタンA2」といいます。
ストリームラインのモノコックはファイバーグラス製で、前方スライド式のキャノピーから配達員は乗り込みます。シングルシーター仕様で、ブルーと白のビニール製シートは最盛期のアメ車のようなテイストで、ダッシュボード下にはAMラジオが備わっています。
そしてリアシートにはピザを温かく保つためのウォーマーが積まれていたとか。コクピットの頭上スペースは意外と広く、従業員のコンフォートに敏感なアメリカのホワイト企業らしさがうかがえますね。
左右の勇ましいNACAダクトの側には、「Fast, Friendly, Free Delivery(速い、フレンドリー、配達無料)」というモットーが入っています。ボディのほぼリア半分が赤いカラーリングですが、ロケットのようなアーチ状スポイラーのおかげもあって圧巻の存在感です。
トライタン・ベンチャー社を率いたエンジニアのダグラス・J・アミックは、1960年から空力的な3輪車を開発していたそうで、トライタンA2の前身である「トライタン エアロ135」はなんと、Cd値0.135にちなんでいました。1984年に発売されたA2はCd値0.15とはいえ、イスラエルのサヴケル社の440ccのヴァンケル・モーター、つまりロータリーエンジンを積んでいました。
実際にピザの配達に使われた個体で実走行2500キロ以上
今回落札されたトライタンA2は約1600マイル(2500km強)の走行距離を刻んでおり、10台はドミノ・ピザの限られた店舗に、実際に配達に使われるために配備されたそうです。速度メーターのスケールは85mph(約137km/h)とあるので、ドミノ・ピザの導入時の公算としては、郊外などへ素早く効率的なデリバリーが可能になって、1店舗がカバーできる配達レンジも拡大できる……はずだったのでしょう。
もちろんそうはいかず、10台のみでドミノは計画をストップし、トライタン・ベンチャー社は1988年に閉鎖されましたが、いくつかのフランチャイズ店はこのA2を使い続けたのだとか。80sな空気感を、そのまま広告塔として使っていたってことでしょう。
たしかに、ラジオからヒューイ・ルイスかマドンナでも流れていそうな、こんなクルマで届けられたら、ピザのトッピングが多少なり崩れていようが、なんだかどうでもよくなっちゃいそうですね。
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