排気量などで数が決まるわけではない
近年、環境性能を意識するためか、あえてマフラーのテールエンドを隠したスタイリングも増えてきている。とはいえ、スポーティさをアピールしようとするクルマにおいてはマフラーというのは重要なアイコン。そのテールエンドが大きいほどスポーツ性を強く感じるというユーザーも多いことだろう。
さて、テールエンドにも歴史あり。たとえば歴代のマツダ(ユーノス)ロードスターのマフラーは、初代・二代目が右側のシングル出し、3代目と現行型は左右に別れたデュアルテールとなっている。歴代ロードスターにおいて最小排気量なのが最新のND型であることを思うと、けっして出口の形状やデザインと排気量がリンクしているわけではないと理解できる。
結論から言ってしまえば、マフラーの出口とパワーユニットの関連性というのはほとんどないのだ。
では、出口部分にシングルやダブル(最近ではトリプルも見られる)が存在している理由はなぜだろうか。旧車の時代まで遡ると、パイプの加工技術の問題から太いテールエンドが難しかったので、必要な排気口の総面積に対してパイプの本数を増やすことで対応していた。しかし、近年では最低地上高の問題からサイレンサーの径が決まってしまい、そのために大径シングルのテールエンドが難しいために2本出しにしているケースが多いようだ。
また、マフラーの出口位置をノーマル位置からセンター出しなどに変える場合も、クリアランスを確保するために2本出しとしているケースも見受けられる。
むしろ、前述したようにハイブリッドカーなどによく見られる、マフラーエンドをバンパーの内側に隠して、排気口が目に見えないように処理しているパターンも存在する。マフラーを見せないことで環境意識の高さをそれとなく示しているのだ。その意味ではマフラーが自己主張をしているようなクルマは、作り手がパフォーマンスを誇示したいという思いが強いという見方もできる。
たとえば、レクサスLFAやホンダS660といった国産スポーツカーが、いずれもセンター出しレイアウトとしているのは、そうした点でスーパーカーの記号的な意味合いも無視できない。
日産GT-RやスバルWRXが左右それぞれの2本出しテールとしているのも、4WDやエンジン形式を暗示しているという面はあるだろう。
ただし、左右出しといって必ずしもV型エンジンや水平対向エンジンをアピールしているとはいえないし、2本出しだから大排気量・大パワーというわけではない。そもそも、触媒などの排ガス浄化装置が必要な市販車においては、出口の数や形状だけで排気音や性能が決まるとは言い切れないのだ。
(文:山本晋也)
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