世の中、猫も杓子もSUV。実際大ヒットしているのもSUVばかりだから仕方がないのかもしれないが、最近増えてきたのがアンダーガードやバンパー、ルーフレール、大型アルミホイールなどを装備した、クロスオーバースタイルの軽自動車。
いってみれば外観だけクロスオーバースタイルにした「なんちゃってクロスオーバー車」。実際にオフロード走行をすることなど、はじめから想定していないだろうが、ここまで増えてくると、ちゃんとアウトドアで使えるのか、と疑いたくもなる。
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そこで、ハスラー、ウエイク、スペーシアギア、キャストアクティバ、ekクロスを取りあげ、どこまで本格的なSUVに近いのか、SUV度指数という採点項目を設けて採点チェックするとともに、各車の魅力に迫ってみたい。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
【画像ギャラリー】ハスラー、ウエイク、スペーシアギア、キャストアクティバ、ekクロスの詳細写真
外観だけ?! のなんちゃって軽クロスオーバー車が増殖中
最近、軽自動車のクロスオーバー車が急増中だ。既存の軽自動車をベースに、ボディの下回りを存在感の強いデザインに仕上げ、アルミホイールの形状も工夫するとクロスオーバー車にアレンジできる。
クロスオーバー車の魅力は、このように既存の車種やプラットフォームを使って、楽しいクルマを開発できることだ。
スパイスやトッピングのようなもので、メーカーは比較的少ない投資により、バリエーションを充実させられる。ユーザーも新鮮なデザインを楽しめるから人気を高めた。そこでクロスオーバー車の数も増えている。
ただし、外観の変更だけでは物足りない。走破力を向上させるメカニズムやアウトドアライフに適した室内装備も欲しい。
実際に使う機会がほとんどなかったとしても「その気になれば出かけられる」機能を持つことは、SUVを所有する楽しさやプライドにつながる。
ここでは背の高い空間効率の優れた軽自動車をベースにしたクロスオーバー車をチェックしてみたい。
本格派SUV車を100点として、そのクルマがどのくらいSUVに近いのか、SUV度指数を出してみた。つまり点数が高いほどより本格的なSUVということだ。
1位スズキハスラー/SUV度指数:95点
価格帯:110万520~170万5320円。2WD/4WD。最低地上高は2WDが180mm、4WDが175mm
最も注目される1位はハスラーだ。先代ワゴンRをベースに開発されたから設計は古くなったが、最低地上高には余裕がある。
現行ワゴンRは150mmだが、ハスラーの4WDは175mmだ(2WDは180mm)。悪路のデコボコも乗り越えやすい。4WDには走破力を高めるグリップコントロール、滑りやすい下り坂を安定して走破できるヒルディセントコントロールの機能も採用した。
前席を倒せば長尺物も積むことができる。汚れにも強いラゲッジもいい。12Vの電源ソケットも装備
荷室には汚れを落としやすい樹脂素材が使われ、ネットや棚を装着する時に便利なユーティリティナット(穴)もある。助手席の背もたれを前方に倒すと水平になり、テーブルのように使うことも可能だ。
このほかディーラーオプションも豊富で、車内を就寝スペースに変更できるベッドクッション、ウインドウに取り付けるカーテンやプライバシーシェードを用意した。走破力から車内の使い勝手まで、SUVの機能をバランス良く高めている。そこでSUV度指数は95点とした。
※編集部注:新型ハスラーのデビューは2019年12月の予定で、ほぼキープコンセプトになると予想されている
2位ダイハツキャストアクティバ/SUV度指数:83点
価格帯:122万5800~171万1800円。2WD/4WD。最低地上高は2WD、4WDともに180mm
2位はキャストアクティバだ。ハスラーの登場から2年近くを経過して発売されたから、後追い的な印象はあるが、最低地上高を180mmに設定して4WDにはハスラーと同様のグリップサポート制御やダウンヒルアシストコントロール制御が備わる。
キャストアクティバのサスペンションとタイヤは、既存の車種の流用ではなく専用に開発され、走行安定性と乗り心地のバランスも高めた。
ただし荷室や収納設備などの機能は、ハスラーに比べるとSUV感覚が乏しい。平凡な軽自動車の機能にとどまる。そこでSUV度指数は83点にした。
これといってSUVらしさを感じないキャストアクティバのコクピット
シート表皮はボーダー柄のフルファブリックを採用。サイドサポートの部分が光沢感のあるシルバー
3位スズキスペーシアギア/SUV度指数:83点
価格帯:161万4600~181万3320円。2WD/4WD。最低地上高は150mm
3位はスペーシアギアだ。最低地上高は150mmで、ノーマルタイプのスペーシアと同じだ。ハスラーと違って拡大されていない。サスペンションのセッティングにも変更はない。
4WDの付加的な機能もなく、ハスラーのようなグリップコントロールなどは採用されない。つまり走りの機能にSUVの特徴は見られない。
その代わり外観はSUVらしさが濃厚だ。ボディサイドのプロテクター風の装飾など、デザインの演出が巧みで、最低地上高に変化はないが車高が持ち上がったように見える。
ツールボックスをイメージしたインパネアッパーボックスなど、道具類に囲まれたガレージのような空間が、大人の遊び心を刺激
アクティブなオレンジステッチが印象的なシートは、全席撥水加工仕様。川遊びやマリンスポーツ、スノーボードの時など、水に濡れてもサッと拭き取れる
内装は水を弾くシート生地が採用され、荷室には汚れ防止の加工を施した。オプションも充実しており、車中泊に適したリラックスクッション、ボディに結び付けて日陰を作るカータープなどが用意される。
走破力を向上させる工夫がないのは残念だが、楽しく遊べるクルマに仕上げた。SUV度指数は80点だ。
後席を倒せばフルフラットになるラゲッジルーム。アウトドア道具をいっぱい積める
4位ダイハツウエイク/SUV度指数:75点
価格帯:135万~184万1400円。2WD/4WD。最低地上高は140mm
4位はウェイクだ。最低地上高は140mmにとどまり、キャストアクティバのような走破力を高めるグリップサポート制御も備わらない。外観はSUV風ともいえるが、ベーシックなグレードのL・SAIIIなどは大人しい印象だ。
しかし唯一全高が1800mmを超えるボディによって車内は広い。収納設備は多彩で、ディーラーオプションを使えば、高い天井を生かして頭上に棚などを装着できる。
ジョイントクッションにより、車内がベッドのようになって車中泊も楽しめる。走破力に特徴はなく、外観もいまひとつSUVの野性味は乏しいが、車内の使い勝手は素晴らしく良い。SUV度指数は75点とした。
撥水処理が施されたシート。シートを倒せば快適な車中泊ができる
高さ1140mm×幅875mmの大きな荷室。例えば、カラビナを使った吊るす収納で、2人分の荷物を積んでも後列の1席を確保できているし、車内に余裕がある。両側パワースライドドアも手伝って荷物の積み下ろしもスムーズ
5位三菱ekクロス/SUV度指数:68点
価格帯:141万4800~176万5800円。2WD/ビスカスカップリング方式の4WD。最低地上高は155mm
5位はeKクロスだ。eKワゴンと基本的には同じクルマだが、フロントマスクはデリカD:5のようなデザインで、SUVらしい野性味を感じさせる。外観はカッコイイ。
最低地上高は155mmだから、eKワゴンと同じだ。4WDに悪路走破力を高めるような機能は採用されていない。内装は上質だが、荷室に汚れを落としやすくするような工夫は見られない。
つまりeKクロスは、eKワゴンのフロントマスクやアルミホイールを変更した仕様だ。ルーフキャリアなどは用意されるが、SUVとしては、走破力と内装ともに物足りない。外観はかなりカッコイイが、もう少し工夫が欲しい。SUV度指数は68点とした。
センスのいいオシャレな柄のシート
まとめ
このように、各車種の外観はどれもSUV風で、走破力や荷室の使い勝手は車種によって差があるが、各車種の機能と個性を把握して選びたい。
街乗りメインでたまに郊外のキャンプ場などで、アウトドアを楽しみたいと思う人には、こうしたクロスオーバー車は重宝するだろう。
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