EVによるショッキングな事故が…
ドイツを起点に取材活動を続ける池ノ内みどりさんは、ある日ドイツの警察のプレスリリースを読んでいて電気自動車による車両火災を知りました。電気自動車(EV)の火災は猛烈な勢いで燃え広がるため、ガソリン車やディーゼル車よりもはるかに消火が困難といわれています。実際に起きた事故は、どのような状況だったのでしょうか。
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EVの火災は1200℃まで温度が上昇
ドイツの警察のプレスリリースを読むのが日課のようになっていますが、先日はかなりショッキングな車両火災のニュースを目にしました。ニーダーザクセン州のバート・ネンドルフという小さな村で起きた単独事故。それはドイツではどこにでもある道路サイドに並木のある田舎道で、シュコダの電気自動車(モデル名は不明)が道路脇の木に衝突して火が上がったようです。
あまりにも火の上がりが酷すぎてこの車両に乗っていたであろう2名の身元はすぐには分からず、DNA鑑定でやっと事故から10日後に判明しました。その遺体が「溶けていた」との報道があり、なおさら身元が判明するのに時間がかかったようです。「溶けていた」という表現は、恐らく灰になる程に原型がまったく留まっていなかったということが想像できます。車両所有者の娘さんとそのボーイフレンドが一緒に乗っていたようだったのですが、DNA鑑定で判明するまでは性別も何も分からない状態だったようです。
詳細な事故原因は現在もまだ調査中とのことですが、走行中に何らかの理由で道路脇の樹木に激突し、すぐにバッテリーから炎が上がったようです。フラッシュオーバーによりバッテリーから何度も炎が上がり、消火には異例とも言える5時間も要したと報道にありました。専門家の方からは「電気自動車の火災は1200℃まで温度が上昇する。火葬場で遺体を焼く温度が900℃」とのコメントがあったのですが、その想像を絶する高い炎の温度を見る限り、どれだけの凄惨な現場になってしまったのか、言葉に詰まります。EVや内燃機関にかかわらず、交通事故で火災に遭う可能性は誰にでも起こり得るだけに恐ろしいことです。
緊急時に使えるレスキューカードとは
電気自動車のバッテリー火災の消火には、専用に開発された特殊機械を導入するようです。鉄鋼製のスパイクで車両バッテリーカバーを突き刺して直接水で消火することができるようですが、消火前に大がかりな作業が必要となります。また、今回の事故で使用された消火水の量は約1万3000L。内燃機関で同様の事故が起きた際に使用される水の10倍もの量を要したようです。今回は単独事故だったものの、電気自動車同士の正面衝突事故で火災が起きた際には、さらに消火活動には時間と水が必要となる可能性がありますね。
「レスキューカード」はADAC(ドイツ自動車連盟)とVDA(ドイツ自動車工業会)によって開発されたもので、事故の発生時に使用します。ADACでは、愛車のレスキューカードをダウンロードして車内に積んでおくことを推奨しています。今回の事故車はシュコダのどのモデルだったかは不明ですが、最近よく売れている「エンヤク」というEVモデルと仮定してダウンロードをしてみました。
消防署でも可能な限りすべてのモデルのレスキューカードを持っていて、これを参照に消火・救命活動が行われるのですが、一歩間違えば消防や救急隊員の方さえも命の危機に陥る可能性も出てきます。ガソリン車の私の愛車と比較しても電気自動車は非常に複雑なのが一目瞭然です。
以前、ミュンヘンの消防本部の方にインタビューをした際に電気自動車の火災の件を伺ったところ、
「ミュンヘン市内では電気自動車に限らず、毎日のように何かが燃えています。ガスや化学爆発、電気設備の故障火事、車両火災、住宅火災等、すべてに対応できるように日々訓練を積んでいます」
とおっしゃっていました。電気自動車に関しては自動車メーカーやADACやさまざまな研究機関と連携して、つねに最新の情報収集と対策を練って訓練に励んでいるとのことで非常に頼もしく思いました。
>>>ドイツ在住池ノ内みどりさんのクルマにまつわるコラムはこちら
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みんなのコメント
何が書いてあるの?
窓を割るあのカードをイメージしてしまった