クルマ好きなら1度は触れておきたいクルマ
AMWリレーインプレのお題第5弾は、2021年7月にフルモデルチェンジを行ったスバル「BRZ」となった。以前からトヨタ「86」&スバルBRZは乗りたいな……と一方的に思うだけで、タイミングが合わず乗れずじまい。今回は先代との比較などない、まっさらな印象をお届けする。
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ずっと苦手意識を持っていたMTのスバル
その前に先に少しだけ言い訳というか、正直な胸の内を明かしておきたい。スバル車のMTモデルに乗るのはこれが2回目で、最初は「インプレッサ22B-STiバージョン」。スバル好きなら垂涎のモデルを、チャンスがあって「運び役」として少し乗ったことがある。
当時はスズキ「カプチーノ」を所有していたので、同じ年代だから同じ感覚で運転ができるだろうと思っていた。ところが、いまでも鮮明に覚えているが、エンストした数はトホホの20回。どう頑張ってもクラッチミートのタイミングを合わせられず苦戦をした記憶がある。入社したばかりの新米だったことと、運転技術がまったくなかったコゾーだったせいもあるだろう。スバルやインプレッサ22Bの名誉のためにお伝えすると、決して乗りにくいわけではなく、乗り手が下手なだけの話なのだが、それ以来なんとなく、スバルのMTに対して苦手意識を抱いていたのだった。
あの日から5年が経ち、久々に乗ることになったマニュアルトランスミッションのスバル。不安でしかなかった。
BRZも最初はお約束のエンストから
お借りしてきたクルマは、BRZのSグレード。新色となったイグニッションレッドがボディデザインにマッチし素直にカッコいいと思えた。まずは恒例行事となった、クルマをじっくりと眺める時間だ。
低く構えたフロントノーズ、大型のアンダーグリル、フロントホイールアーチのエアアウトレット、絞り込まれたキャビン、ダックテールといった一連のデザインの流れを見ると、どこか旧いヨーロッパ車に似ているとすら思えた。31歳の若造だけに(?)、真横のスタイリングからはフェラーリの「250GTO」やTVR「ヴィクセン」などがつい思い浮かんでしまうのだ。
ウダウダ言っているとあっという間に時間が過ぎてしまうので、さっそくドアを開けて乗り込むことに。お尻から滑り込ませるように乗り込むと「低い」と、思わず声が出そうになった。このシート感覚こそ、忘れかけていた何かを目覚めさせてくれ、久々にスポーツカーを運転するぞ! なんて気持ちにさせられるもの。シートに身を沈めてポジションを合わせ、エンジンをかける。
反発力が強め(に感じた)なクラッチペダルを踏み込み、ギアのニュートラルを確認し、スターターボタンを押す。クスンクスンクスン、バァァァァァンと水平対向エンジンが覚醒する。ギアを1速に入れると、ガコンと音がした。なんだかレーシングカーみたい! と思いながらクラッチを繋げると、お約束のエンスト。
再びギアをニュートラルに入れて、クラッチを踏み込み再始動。1速にギアを入れた時に、ん? とメーターを見ると少しだけ回転数が上がっていたことに気づいた。今度はそーっとクラッチを当てて、スタート。思った以上に駐車場からクルマを出すのに時間がかかってしまったが、撮影場所となるお台場へ向かうことにした。
BRZとの距離を縮めるなら峠かサーキットがいいかも!
「たとえ広報車でも愛車のように扱え」とは元上司の言葉で、MT車に乗るときはクラッチをいたわるために、あまりアクセルを煽らずに発進をするように意識をしているが、BRZは私の運転技術が足りなく少々苦労した。
水平対向エンジンは、レスポンシブなのでコツが必要なのはわかっているが、なかなかリズムが掴めなかった。あくまでも個人的な印象だが、アクセルを踏んでからの吹け上がりの(回転数)反応が少々鈍く、もし所有するとしたらスロットルコントローラーは入れたいと感じた。
何度か苦労しているうちにタイミングが掴めてきた。発進さえしてしまえば、こっちのもの。周りの流れに合わせて運転をしていく。あらためて冷静にインテリアを見れば、水平基調なデザインを採用していることもあり視界が良い。ドライバーズシートからはフェンダーの膨らみが見えるから、フロントノーズの距離もつかみやすいと感じた。
また、インフォテイメントシステムやエアコンスイッチなどの操作系もわかりやすい。ハザードのスイッチはセンターのエアコン吹き出し口にあるから手が迷うことがなく押すことができた。
しばらく走行をしていると一瞬だけ前がひらけたので、従来型より400cc拡大したという2.4L FA24エンジンのフィーリングを試そうとグッとアクセルを踏み込んでみると、エンジン音が途中から同調してくることがわかった。ここからが気持ちいいかも! と思ったが、この続きは高速道路もしくはサーキットじゃないと味わえなさそうだった。BRZと距離を縮めるのであれば、峠やサーキットといったシーンがいいかもしれない。
それから、乗ったときからうすうすと感じていたが、全体的に剛性が高く、コーナーリングも思い描いたラインをトレースすることができた。峠に持ち込むともっと楽しいぞ! どうだ行くかい? とクルマから問いかけてくる感じが伝わってきたのも付け加えておきたい。
視線を集める快感もスポーツカーの魅力
撮影場所に到着し、ファインダー越しにあらためてクルマを見ると、FRスポーツカーらしいスタイリングだなと気づく。じつは現場に向かう道中、タンデムしている1台のオートバイがずーっと後ろをついてきて、こちらに指を向けながらなにか会話をしているのがミラーから見えていた。彼らを惹きつけるスタイリングだったのだろうか。彼らと同じ目線と思えるあたりで確認をしても、サイドからリアにかけたデザインはいいな、と思った。
ちなみに東京のお台場界隈を流すと、居合わせた訪日外国人たちもちょくちょく、こちらに指差ししながら会話しているのが見受けられた。赤いスポーツカーは誰もが憧れるのだろうなと、オーナーでもないのに少し嬉しくなったのはここだけの話だ。
冒頭で触れた不安はいつの間にか忘れ、素直に運転が楽しいと感じていた試乗タイムは、あっというまに返却の時間になってしまった。あらためて振り返ると、クルマの剛性の高さが何より印象に残っていた。サーキットに持ち込むなら、あのパーツを入れたらどうかな? 峠がメインなら、このパーツかな? なんて考えながら乗るのが楽しい1台であった。クルマ好きなら1度は触れておきたいクルマであることは間違いなさそうだ。
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