日本政府が「2035年ガソリン車の新車販売禁止」を打ち出し、そして世界的な脱炭素化や電動化などの流れがあるなかで、これから純ガソリン車は生き残ることはできるのか?
そのなかでも特に気になるのが86/BRZ、GRヤリス、スープラ、GT-R、ロードスターといった純ガソリン車の現行スポーツモデルの将来だ。
脱炭素が自動車業界の大きな課題となったことで、今の国産スポーツモデルたちは生き残れるのか? 最近の動向などから、各メーカーごとに現行スポーツモデルの未来を予測する。
文/桃田健史
写真/TOYOTA、NISSAN、MAZDA、ベストカー編集部
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■日本のスポーツカーは本当に生き残れるのか?
日本のスポーツカーは「永遠に不滅」と言い切れるのだろうか?
GT-R、シビックタイプR、GRヤリス、スープラ、86/BRZ、ロードスターなど、日本を代表するスポーツカーはこれからも量産モデルとして”本当に”継続されるのだろうか?
こうした疑問を持つユーザーが近年、増えてきている印象がある。
理由は、電動化に対する懸念だろう。
直近では、経済産業省が2020年12月に公表した「グリーン成長戦略」のなかで、“遅くとも2030年代半ばまで”軽自動車を含む日本国内販売の新車100%を電動化する、という国の方針が日系自動車メーカーやユーザーに強烈なインパクトを与えた。
また、菅偉義首相は2021年1月の通常国会の施政方針演説のなかで、電動化の達成目標を「2035年」と言い切ったことで、ユーザーのスポーツカーの未来に対する不安感はさらに高まったのではないだろうか。
「脱炭素社会実現のため」のお題目の下、内燃機関車は存続の岐路に立たされているのは事実。しかし電動化との共存共栄の道がないかのような現在の国の姿勢には大いに疑問だ
もちろん、パワートレーンが電動化されることが、スポーツカー消滅に直接結びつくとは言えない。電動化とは、マイルドハイブリッド車、プラグインハイブリッド車など、ガソリンエンジンに軸足を置いた”改良”も含まれており、スポーツカーへの対応も余地は充分にあるように思える。
■日産はGT-R、Zとも継続を発表! モータースポーツ活動を含め日産DNAを継承!
では、具体的に自動車メーカー各社のスポーツカービジネス戦略の行方について、各社が公表している事業戦略を基に予想してみたい。
まずは、日産だ。
2020年5月、内田新体制による事業構造改革計画 「NISSAN NEXT」を公開しているが、そのなかでGT-RとフェアレディZについては、モータースポーツ活動を含めた”日産DNAのパッション”として捉え、今後も継続するという意思表示をしている。
フェアレディZは2021年8月21日に米ニューヨークモーターショーでワールドプレミアが確定しており、これまでのオンラインでのプロトタイプ発表では、V6ツインターボ+MTが強調されるも、電動化の文脈では話はいっさい出てきていない。
新型フェアレディZ(Z35)はスカイライン400Rのエンジンを搭載したモデルとなる予定。プロトタイプを公開してから約1年。今年8月21日にワールドプレミアされる予定だ
GT-Rについてはマイルドハイブリッド化の噂が絶えないが、詳しい情報は関係筋からなかなか漏れてこない。だが、気になることもある……。本稿執筆時点で「スカイライン消滅」という一部報道があり、GT-R存続についても気をもんでいるユーザーが多いはずだ。
仮に報道のとおりに日本市場からスカイラインが消滅しても、グローバルではインフィニティとしてセダンモデルは継続される可能性が高い。そのため、GT-Rの母体としてプラットフォームがなくなるという最悪のシナリオには至らないだろう。
一方で、スカイライン消滅を機に、GT-Rは生誕以来のスカイライン最上級スポーツモデルという立場を離れて、別物の超高級スポーツカーとして生まれ変わる可能性も考えられる。
日産はスポーツカー以外の電動化を強力に推進しているメーカーであり、企業としての燃費規制への対応もできている。それだけに内燃機関のスポーツカーの可能も期待したい
日産の電動化については、過去10年以上に渡りリーフであり、次世代電動車の象徴がアリアである。また、e-POWERについては発電機として使用するエンジンをこれまでの排気量1.2Lから1.5L化するモデルも随時導入していく。
こうして電動化技術がGT-Rへ、またフェアレディZにどのように応用されるのか、その方向性はまだ見えてこない。
■トヨタはGRブランドにモータースポーツと量産スポーツカーを集約
次にトヨタだが、「もっといいモビリティ社会へ」を合言葉に、環境対応車からスポーツカーまでフルラインアップ化を強調している。
そのうえで、モータースポーツを環境とスポーツの融合の場として捉え、FIA世界耐久選手権(WEC)参戦マシンをベースとした量産ス―パ―スポーツ、また世界ラリー選手権(WRC)参戦から技術的にフィードバックしたGRヤリスなど、”本物系”スポーツカーの存在感が強い。
またブランド戦略としては、ス―パーGTでスープラという名称を活用している。
見方を変えると、モータースポーツ撤退により量産スポーツカーが一気にモデル縮小する危険性を秘めているといえる。
GRヤリス。GRブランドがトヨタのスポーツカー戦略を担う。耐久レースで話題となった水素エンジンもGRヤリスの3気筒エンジンをベースに開発。電動化一本槍ではないことをアピールしたい思いも見える
さらに、トヨタのスポーツカー存続のキモは、モータースポーツでも開発が始まった水素エンジンであり、86/BRZもこの領域での生き残りが考えられる。
さらに、EVについては新規bZシリーズもあるように、トヨタはスポーツカー生き残りに対するさまざまな引出しがある。
■ホンダはEV/FCV化のなかでスポーツカーを模索か、マツダも電動化に舵を切る
モータースポーツといえばホンダだが、F1撤退発表に次いで「2040年までにグローバルで100%EV・FCV」という大目標を掲げており、トヨタ、日産に比べるとスポーツカー存続に対するハードルが高い印象がある。
2021年4月、三部俊宏氏の社長会見の際、筆者を含めた記者らがオンラインでの質疑応答に参加したが、そのなかで三部社長は「EVでも”タイプRのような存在”も考慮する可能性あり」、「ホンダとして参戦に対するしっかりとした理由付けがあれば、電動車レースの参戦を検討する」といった発言があった。
足もとでは、新型シビックタイプRがグローバルで登場するが、これからEV/FCV化を一気に加速させるホンダにとって、これが非電動化の最後のタイプRになる可能性が高い。
ホンダはタイプR戦略もすでに見直しに入っているものと推定される。2040年までにすべてEV/FCV化する計画を推進するなかで、電動化時代のタイプRのあるべき姿を模索していくのだろう
そのうえで、本田技術研究所ではNSXを早期に完全EVまたはFCV化する動きや、シビック級またはSUVでの”タイプRのようなハイパフォーマンスEV”に関する基礎研究が加速するだろう。
また、マツダロードスターについては、2021年4月に別件取材で歴代ロードスター主査にロードスターに対する電動化についての意見を聞き、皆さん個人的な思いは語るもマツダとして正式な方向性は示していない。
マツダも2030年までに電動化100%を宣言した。ロードスターも何らかの形で電動化される模様だ
このように、日系スポーツカーが今後、どのタイミングで、どのように商品性や技術面で大きく変化するのかは、現時点(2021年6月)でははっきりと予測することは難しい(マツダは6月18日に開催した中期技術・商品方針説明会で2030年までに100%電動化することを発表)。
今後の市場動向を注視していきたい。
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みんなのコメント
工業・自動車産業ばっかり責める政府は頭硬すぎ
車も燃費かなり向上したのだから、現状維持で良いじゃない!