愛知県長久手市にある「トヨタ博物館」。カメラマン西尾タクト氏が、仕事の合間に立ち寄ってみると、そこには「30年前の未来のクルマたち」の姿がズラリ。
過去の東京モーターショー等で展示された「未来のクルマたち」の様子を、トヨタ博物館の魅力、自動車評論家永田恵一氏の車両解説とともにお楽しみいただきたい。
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※本稿は2020年10月のものです。特別展示『30年前の未来のクルマ』は、現在は終了しています。
レポート・写真/西尾タクト、車輛解説/永田恵一、取材協力/トヨタ博物館
初出:『ベストカー』 2020年11月10日号
■ブラリと寄ってみた『トヨタ博物館』がスゴかった!
先日、愛知県で撮影があった“ついで”にブラリと『トヨタ博物館』(愛知県長久手市)へ寄ってきたのだが、いろいろな驚きや発見があったのでレポートしてみたい。
クルマの場合は名古屋瀬戸道路 「長久手IC」より西へ0.4km(東名高速道路日進JCT経由)、公共交通機関を使う場合はリニモが便利だ(東部丘陵線で芸大通駅(トヨタ博物館前)下車、1番出口から徒歩約5分)。料金は小学生400円、中高生600円、一般1200円などとなっている。
まず、トヨタ博物館という名前を聞いて読者諸兄にお伝えしたいことは、「ここはトヨタが運営しているが、トヨタのショールームではない」ということ。
当日、館内を案内してくださった学芸スタッフの平田さんは本当にクルマと機械が大好きな方で、冒頭で私にそう語ったのである。
パリのルーヴル美術館ならば「サモトラケのニケ像」があるメインエントランスには、「トヨダAA型」の復刻車が置いてあり、トヨタの歴史を彷彿とさせる。
が、先の言葉どおり、2階展示コーナーから「世界のクルマ史」ともいうべき、数々の文化的価値の高いものが続く。
2000GTも展示
例えば、18世紀に蒸気自動車が発明され、19世紀に実用化されたことは有名だが、同時代の1899年には米国でEVの「ベイカー・エレクトリック」があったことをご存じだっただろうか。
このEV、1psのモーターで40km/hでの走行が可能だった。
「貴族のための乗り物である豪華馬車が発展し、『ロールスロイス 40/50シルバーゴースト』のように豪華さを競うなか、爆発的ヒットを遂げてクルマの歴史を庶民のものに変えたのが『フォードモデルT』なんです」と平田さん。
ようやく聞いたことがある名にこちらも興奮する。
さらに、「リーフサスの簡略化」、「ヘッドライトがガス灯から電気へ」、「クランクスターターが廃止につながった哀しい事故の話」と、クルマ好きなら聞き逃せない興味深い解説が続いていく。
展示を時系列で追うと、1936年の展示にきてようやく『トヨダAA型』が、その開発時に参考とされた『デソートエアフローシリーズSE』と『シボレーマスターシリーズDA』とともに比較展示されていた。
その後展示は哀しい戦争の時代、アメリカンスポーツカーの時代を経て、我らが日本車の黄金時代へと続く。最終的に常設展示はプリウス、インサイト、i-MiEVに並んで、トヨタMIRAIで締めくくられる。
特別展『30年前の未来のクルマ』のエリア(現在は終了しています)
●30年前の技術者たちの熱い想いが展示車から感じられる
さて、今回メインで紹介したいのが期間特別展示の『30年前の未来のクルマ』。そう、30年前の1990年前後は札束が舞うとまで言われたバブリーな時代。皆さんはパッと思い出せるだろうか?
今でも未来感あふれるデザインの『セラ』のプロトタイプで、モーターショーで展示された『AXV-II』の現車が倉庫から発掘されたそうで、ほかにも1987年の2軸式ガスタービンエンジン車『トヨタGTV』には技術者たちの挑戦心が窺える。
AXV-II
1997年の『トヨタ e・com』は今でこそ求められる、カワイイ小型モビリティじゃあないか!
ちなみに、ここまでの展示車はほとんどが可動状態で保存されているのだそう(※コンセプトカーなどを長期間保管するのには大変な手間とコストがかかる)。
トヨタ e・com
話は戻るが、常設展示での『キャデラックエルドラドビアリッツ』(1959年)にはなんとクルーズコントロールがついていた。「時代に対して早すぎたもの」が後の時代の正史になったりするものだ。
アイサイト、e-POWER、燃料電池車などなど今もどんどん進化している日本の凄い技術が、また30年後にはどう評価されるのだろうか。
展示を見ていて心に熱く湧きたってくるものがあった。ふと、芸能人のタモリさんが「知識があることは、人生で見るモノを人より多く楽しめるチャンスになる」と話していたのを思い出した。
ベストカー読者である皆さんのクルマ博学こそ、こういう場所で「トリビア」をたくさん吸収し、「ブラトヨタ博物館」してみることをオススメしたい。
皆さんなら入館料の倍はモトを取る楽しみ方ができるのではないだろうか。
■特別展示『30年前の未来のクルマ』から、かつての「未来のクルマ」たちを解説!!!
特別展示『30年前の未来のクルマ』(現在は終了しています)
(車両解説/永田恵一)
●4500GT EXPERIMENTAL(1989年)……「先進技術」と「遊び心」も高次元で調和
4500GT EXPERIMENTAL(1989年)
“300km/h巡行が可能な次世代高性能スポーツカー”を目標に、その当時の「現代のトヨタ2000GT」を目指したコンセプトカー。
2ドアの4人乗りFRクーペ(2+2シーター)で、4人の乗員と荷物を快適に運ぶ高級車として登場した。Cd値は0.29と優秀で、エンジンはV8、4.5L DOCHをフロントミドに搭載する。
これは初代セルシオの積んでいた1UZ-FE型V8、4L DOHCをベースとしながら排気量が500ccボアアップされており、1気筒あたり4バルブから5バルブに変更されている。
エンジンのスペックは最高出力295ps/6600rpm、最大トルク39.8kgm/4800rpm。また、前後重量配分50:50に近づけるため、6速MTと一体化されたリアデフをトランスアクスルとなる点は、6速MTが80スープラ、トランスアクスルがLFAに通じる。
後輪舵角を電子制御するアクティブリアホイールステアリングを採用。ボディサイズは全長4365×全幅1830×全高1210mm、エンジンフードやフロントフェンダーなどにCFRPを採用し、車重1450kgと軽量に仕上げられていた
●AXV-II(1987年)……あの「セラ」の原型!
AXV-II(1987年)
1990年登場のセラの原型となったコンセプトカー。ガルウイングドアを採用し、「単なる快適な移動を超えた、感性に訴えるライブ&パフォーマンス」というコンセプトを掲げていた。なお、セラのガルウイングドアは全面ガラスルーフを実現するためのものだという
●AXV-IV(1991年)……450kgと超軽量なコミューター
AXV-IV(1991年)
1991年の東京モーターショーに出展されたパーソナルコミューター。地球環境対策を主眼に据えたコンセプトモデルで、軽量化と高効率を追求したほか、省資源とリサイクルにまで踏み込んでいる。
アルミボディやマグネシウム製ドアといった軽合金材やFRP製スプリングを採用したサスペンションなどで、車重はなんと450kg。804ccの2サイクル2気筒スーパーチャージャーS2エンジンを搭載していた
●AXV-V(1993年)……「ハーモニックエアロサルーン」がコンセプト
AXV-V(1993年)
人と環境の調和を目指した都市間交通の次世代ツアラー。このコンセプトを実現すべく直噴エンジンを搭載し、Cd値も0.20まで下げられ、高速域での燃費を追求した。
また現代に通じるダイヤル式のシフトや自動ブレーキ、電子制御ブレーキの採用も注目を集めたほか、従来型ポート噴射式エンジンの5倍以上の速さで噴出可能な世界初のピエゾEFIシステムを採用した直噴エンジンのD-4(1996年に初代コロナプレミオの3S-FSE搭載車で初採用)を搭載していた。
●GTV(1987年)……低公害なガスタービンGTコンセプト
GTV(1987年)
ガスタービンエンジンを搭載するコンセプトカーで、GTVは単刀直入にガスタービンビークルを意味する。4代目カリーナがベースとなり、コンセプトは「パーソナルグランドツアラー」。
ボディサイズは全長4725×全幅1790×全高1325mm、ホイールベース2595mm。最高出力150psの小型2軸式ガスタービンエンジンはスムーズさ、高い静粛性、灯油などにも対応する燃料の多様性、高速燃費のよさといったメリットも多かったが、残念ながら幻となった。
●e・com(1997年)……都市交通に適した新しい交通手段
e・com(1997年)
家庭用の100V電源でも充電可能(フル充電まで約6時間)なEVの2人乗りシティコミューター。ボディサイズは全長2790×全幅1475×全高1605mm、ホイールベース1800mm。
FFレイアウトで搭載された永久磁石型モーターの最高出力は22ps/2200~3500rpm、最大トルクは7.7kgm/0~2300rpm。航続距離と最高速はそれぞれ100kmで、駅までの足に使うパーク&ライドの実証実験も行われた。
かつてメガウェブでは、1999年の開業時から2010年まで「e.comライド」というガイドウェイ上を自動運転するe.comに乗ることができるアトラクションが存在していた。
また、「Crayon」(クレヨン)というITSを活用した共同利用システムが1999~2006年まで実証実験を実施。e-COMのコンセプトはひとり用のコムスや近々登場するふたり乗りの超小型EVにキチンと引き継がれている
●MRJ(1995年)……ミドシップ2+2オープンスポーツ!
MRJ(1995年)
「ニュージェネレーション・ライトウェイトスポーツ」をテーマとし、1999年に市販化されたMR-Sの原型となったオープンのコンパクトミドシップスポーツカー。コンセプトカーは狭いながらもリアシートを持つ4人乗りかつ電動オープントップだったことに驚く。
2代目のSW20型MR2をベースとするコンセプトで、ボディサイズは全長3995×全幅1695×全高1240mm、ホイールベース2550mm。フロントにマクファーソンストラット、リアにスーパーストラットサスを採用し、車速やハンドルの切れ角に連動して車両のヨーレイトをフィードバックするアクティブリアホイールステアリングで安定感ある走りが特徴。
エアロキャビンはスイッチのワンタッチ操作でクローズからオープンに変身する。欲を言うと搭載された最高出力170psの直4、1.8Lの5バルブDOHCで可変バルブタイミング&リフト機構を持ったエンジンの市販化も見たかったところだ
●レクサスLF-LC(2012年)……コンセプトがまんま市販車に
レクサスLF-LC(2012年)
現在のレクサスLCの原型となった、レクサスのデザインスタディを目的としたハイブリッドを搭載するプレミアムクーペのコンセプトカーで、2012年のデトロイトモーターショーでワールドプレミアされた。
エクステリアデザインは米国カリフォルニアのデザインスタジオ、キャルティが担当。その完成度は非常に高かったことが当時も話題になっていた。当初は市販予定はなかったものの、コンセプトモデルの反響があまりにも大きかったことから市販されることになったエピソードを持つ。
結局、市販化までに6年以上もかかったが、市販車とコンセプトカーのスタイルの近さには驚かされる
●RAV-FOUR(1989年)……「新感覚、都会派4WD」!
RAV-FOUR(1989年)
こちらは1994年に登場のライトクロスオーバーSUV、初代RAV4の原型となったコンセプトモデル。オフロード機能をアート感覚でスタイリングしたのが特徴で、当時はなかったモノコックボディの乗用車ベースのSUVであることは初代RAV4にも引き継がれたが、初代RAV4とはだいぶ違う趣の月面車が似合いそうなスタイルも面白い。
ボディサイズは全長3485×全幅1695×全高1635mm、ホイールベース2200mm。エンジンは100psの直4、1.6L DOHCを搭載
●モーグル(1995年)……フォレストワーカーたちへ
モーグル(1995年)
当時のトヨタが「トヨタの森」という計画を進めていたこともあって開発された、林業従事者向け作業車のコンセプトカー。それまでは徒歩でしか行けなかった山岳路のような悪路でもクルマが傾かないようにアクティブサスを採用していたほか、現代のSUVに通じる下り坂をペダル操作なしで下れるヒルディセントアシストも搭載。
ボディサイズは全長3165×全幅1640×全高1795~2295mm、ホイールベース2000mmでエンジンは直4、1.5L OHCを搭載。
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