どんなクルマ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
【画像】セダン派、ファストバック派? それともSUV? マツダ3/CX-30【比べる】 全120枚
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)
新旧を並べて見る、見分けが付かない。
スカイアクティブX車はバッヂが追加されているので辛うじて判別できたが、ディーゼル車は仕様書とナンバーで新旧の確認をしなければならなかった。
スカイアクティブXが「e-SKYACTIV X(eスカイアクティブX)」に変わっているが、これは名称変更。また、サススプリングのバネ定数および形状、ダンパー減衰力を変更するものの機構的な変化はない。
ならば何が目的のMCか。
1つは運転支援機能の拡張。従来は約60km/hが上限だった走行ライン制御型LKAの支援速度域を高速域にまで拡大し、実用性を向上させている。
もう1つは走りの洗練と熟成、あるいは人馬一体のちょっとしたこだわりである。
手を入れた部分は「制御」。GVCが代表的だが、機構的な変更や付加を行わずに性能向上を図っているのがミソ。効果についてもGVC同様にドライブフィールを中心とした特性変更であり、操り心地の改善を要点にパワートレインとサスに手が加えられている。
ただし、サスまわりの改良は全モデルに共通しているが、パワートレインの改良についてはeスカイアクティブX車とディーゼル車に施され、1.5L車と2L車は従来どおり。
また、従来はATに限定されていたファストバック2L車に、FF車限定だが6速MTが追加されている。
そして何よりも重要なのは価格。“据え置き”なのだ。
LKAの機能向上だけでも買い得感アップ。走りのブラッシュアップでさらに。eスカイアクティブX車とディーゼル車はそこに上乗せ。知恵を使ってユーザーにコスト負担を強いない改良というのもマツダらしい。
eスカイアクティブXに試乗
eスカイアクティブXはピストンによって着火直前まで高まった圧力に、プラグ点火の発火で一押しかけて混合気全体を圧縮着火で一気に燃焼させる。
いわば爆縮着火とも言える燃焼方式を採用している。このためSPCCI稼働中の吸入空気量は一定に保たれる。しかも極低負荷域と全負荷高回転域以外は、吸気の半量をEGRが占める。
こういった制御は従来と変わっていない。
全開で加速させると、新旧ともにメーター読みで約4500rpmでSPCCI稼働から通常燃焼に移行。その他の走行状況においても、SPCCI稼働/通常燃焼の制御で明確な違いは見られなかった。
しかし、ドライブフィールは違っていた。
従来車では応答性や加減速などのコントロール性のよさは内燃機車では群を抜いていたが、全体的に線が細い印象。力感に乏しいという言い方をしてもいいだろう。
新型は踏み込み直後にトルクが盛り上がる。瞬発力という程に過剰でもなく、その後の加速の繋がりもいい。
応答性をそのままに力感や小気味よさを高めたような感じだ。最高出力/最大トルクともに従来車を上回るが、全開加速よりも通常走行のほうが改善効果は大きかった。
ディーゼルの改良は?
ディーゼル車はeスカイアクティブX車と逆に、踏み込み直後のトルクの盛り上がりを抑えている。
従来は僅かなタイムラグの後に大きくトルクを立ち上げ、その後のトルク増は穏やか。力感が誇張された感じである。
新型はタイムラグを減らし、早めにトルクを立ち上げ過速度の増加を連続的にしている。
力感や瞬発力よりも伸びやかさに重点を置いた特性。パワーフィールの洗練感を高めているのが印象的。
高い許容回転数や高回転域の伸びやかさなど、元々ディーゼル車相対ではガソリン車に近いパワーフィールを特徴にしていたが、この改良によりさらにガソリン車的になっていた。
なお、過渡特性の改善ではディーゼル車、eスカイアクティブX車ともにEGRの制御精度向上を要点としている。
だからという訳でもないだろうが、特性的には両モデルが歩み寄った感じだ。要するに長短異なるハードウェアを用いてもマツダが求める走りの理想は同じなのだ。
シャシー性能の話
サスはフロントまわりを中心に改良が加えられている。
ダンパーはピストン速度の高い領域での減衰力を下げ、スプリングは従来車対比でバネ定数を約3%アップ。数値だけ追うとバネ勝ちに思えるが、試乗のサスまわり全般の印象では、従来よりも多少ながら穏やかに感じられた。
一般論での硬柔ならば相変わらず硬い。明らかに高負荷域での操安重視、要はスポーティ&ツーリング向けのサスチューンであり、刺激少ない快適を求めるタイプではない。
大雑把な動的な特性は変わっていないのだが、路面段差などの突き上げが穏やかになった。当たるような衝撃を受けた時の初期の往なしが、乗り心地にしなやかさを与えている。乗る人に優しいとも言い難いが、一般走行における乗り心地が改善された。
操縦性では、eスカイアクティブX車のスポーツモード選択時のGVCの制御を変更。
マツダ3はマツダ車の中でも操舵初期の回頭が大きめ、多少切れ味を誇張した特性。そこからさらに切れ味を強くした特性を予想していたのだが、感覚的には穏やかになったように思えた。
定常円旋回に移行するまでの操舵量や回頭量は変わらないが、ノーマルモードでは回頭反応に僅かなタイムラグがあり、その分だけ回頭挙動が急になる。大袈裟に言えば遅れて強く切れ込む訳だ。
新制御はタイムラグをほとんど感じない。操舵のごく初期から操舵量どおりに回頭する。操舵/回頭/荷重移動の滑らかな連動が、ターンイン時のコントロール性をさらに向上させる。
ノーマル制御から悪化した要素もないので、新制御を標準にしてしまえばと思うのだが、この辺りは多少の誇張があったほうが味を楽しめるということなのだろう。
マイナーチェンジ 「買い」か?
このMCの一番の評価ポイントは、走行ライン制御型LKA(CTS:クルージング&トラフィックサポート)が最も活躍する高速道路の巡航に対応したこと。
従来はコーナー半径などの状況によって走行ライン制御精度があまくなることもあったが、運転支援能力は確実に向上した。
ちなみにACCやBSMなどの多くの安全&運転支援装備は全車標準だが、CTSはプロアクティブ・ツーリングセレクション以上に限定。CTS装着で最も安価なのは約264万円の20 Sプロアクティブ・ツーリングセレクションである。
走りの改善については着実にステップアップしているが、走りの魅力やキャラの9割以上は従来車と共通。
MC以前からマツダ3に興味を持っていたならそのまま検討を進めてもいいし、このMCで購入意欲が一気に高まるというほどでもない。スポーツ&プレミアム志向のセダン&ハッチとしての魅力は大きく変わらない。
看板モデルのeスカイアクティブX車のコスパ評価が難しいのも従来同様。ディーゼル車の価格差は40万円強。
際立って素直なドライバビリティは特筆に値するが、加速性能や燃費まで含めて価格相応のアドバンテージがあるとは言い難く、「レシプロエンジンの究極の1つ」と考えるこだわり派向け。
価格/燃費/ファントゥドライブのバランスなら、ディーゼル車が無難である。
改良新型マツダ3 スペック
マツダ3セダンX Lパッケージ(FF)
価格:338万463円
全長:4660mm
全幅:1795mm
全高:1445mm
ホイールベース:2725mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:17.2km/L(WLTCモード)
CO2排出量:135g/km
車両重量:1450kg
パワートレイン:1997cc直4+モーター
使用燃料:プレミアム・ガソリン
最高出力(エンジン):190ps/6000rpm
最大トルク(エンジン):24.5kg-m/4500rpm
最高出力(モーター):6.5ps/1000rpm
最大トルク(モーター):6.2kg-m/100rpm
ギアボックス:6速オートマティック
マツダ3ファストバックXD Lパッケージ(4WD)
価格:320万9555円
全長:4460mm
全幅:1795mm
全高:1440mm
ホイールベース:2725mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:18.8km/L(WLTCモード)
CO2排出量:136g/km
車両重量:1470kg
パワートレイン:1756cc直4ディーゼル・ターボ
使用燃料:軽油
最高出力:130ps/4000rpm
最大トルク:27.5kg-m/1600-2600rpm
ギアボックス:6速オートマティック
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