■納車まで最長3年待ち!? 人気絶好調の最新クロカン4WD
2021年も多くの新型車が発表されましたが、相変わらず好調なカテゴリーといえばSUVです。
トヨタは「ランドクルーザー300系」と「カローラクロス」を発売しましたが、とくに新型ランドクルーザーは納期が1年以上待ち(グレードやオプション装備によっては最長3年という情報もあり)という事態になっています。
市場を見渡すと、2018年7月にフルモデルチェンジしたスズキ「ジムニー」も、相変わらずの人気ぶり。一時は半年まで納期が短縮されましたが、世界的な半導体不足が影響して、再び1年以上待ちになっています。
こうした納期の長さは、いわゆるクロスカントリー4WDというジャンルで顕著に見られます。
クロスカントリー4WDは、ラダーフレーム式というボディ構造を採用しており、通常のモノコックボディ構造よりも部品点数、生産工程が多く、さらに半導体不足が追い打ちをかける状態になっています。
加えて、ランドクルーザー、ジムニーともに、海外輸出がメインの車種ということも納期の長さに影響しています。
ランドクルーザーは生産台数の9割が中東、ロシア、オーストラリアに輸出され、日本市場に出回るのはわずか1割ほど。ジムニーも割合こそは違いますが、やはり生産台数の多くが輸出用にさかれています。
ただし、日本市場への割り当てが少ないというだけで、この納期の長さの要因は語れません。そこには、日本市場でのクロスカントリ-4WD人気が、ここ数年で急上昇しているという事実が存在します。
なぜ、こうしたムーブメントが起きているのでしょうか。
世界では数年前からSUVがスタンダードになっていますが、日本もそれに追従しています。国産車メーカーは次々に新型SUVを投入し、どこを走ってもSUVばかりが目立っています。かつて、SUVは「人とは違うクルマを」という所有欲を満たすことができましたが、昨今はそれも変わってきました。
「SUV市場には、軽自動車からミドルサイズまでモデルが充実していますが、その反面で個性やライフスタイルを演出できるクルマから“乗りやすくて使いやすいクルマ”というポジションに変わってきている感があります。高齢者が積極的にSUVを選ぶようになったのも、その顕れではないでしょうか」(トヨタ系販売店営業スタッフ)
SUVがスタンダード化する一方で、ユーザーが着目したのがクロスカントリー4WDです。
クロスカントリー4WDはSUVに比べると高額ですが、その構造ゆえに頑丈で長持ち。卓越した悪路走破性も備えており、いわゆる“本物感”や“道具感”が外観からも滲み出ています。
加えて、そのデザインには昨今さまざまな市場で着目されている“ネオクラシック”という要素が多分に盛り込まれています。
ジムニーは現行型がデビューした際に「原点回帰」を謳い、ランドクルーザー300系もまたデザインヘリテージを多く盛り込んだことを発表しています。日本で販売好調のジープ「ラングラー・アンリミテッド」もまた、ウイリスMB以来のデザインアイコンを踏襲していることがウケている要因です。
■幅広い年齢層、そして男女問わず人気のクロカン4WD
中古車市場でも、同じようなムーブメントが起きています。
「現在は3世代前のランドクルーザーなど、80年代のクロスカントリー4WDに人気が集中していますね。CMやドラマでアイコンとして使われているのも、人気を後押ししているのではないでしょうか。そもそも長持ちするつくりなので、20年から30年経ったいまでも十分現役で使えますし、イマドキのSUVにはない力強いデザインに惹かれる人が多いのではないでしょうか」(SUV専門中古車販売店スタッフ)
クロスカントリー4WD人気を支えているのは、じつに幅広い年齢層のユーザーです。上は40代から60代、下は20代。さらに、男性だけでなく女性も増えています。
それぞれの年齢層や性別によって、自分の目に映るクロスカントリー4WD像は変わってきます。かつてある媒体で実施したアンケートの結果では、上の世代は1980年代から1990年代の四駆ブームの頃を懐かしんで購入したり、当時は経済的な理由から所有できなかったために、現在購入するという人がほとんどでした。
一方、若い世代は“人とは違うクルマ”を模索した結果、クロスカントリー4WDに行き着いたというユーザーが多く、四角くて無骨なデザインに新鮮さを感じているといいます。30代のユーザーは、かつて乗っていた親の影響を受けていると答えた人も多くいました。
多くの女性ユーザーが口にしたキーワードは、「カワイイ」。ジムニーやジープのスクエアなボディ形状、そして丸目のヘッドライトが女性にはキュートなものに感じるといいます。実際、ジムニーは先代よりも大幅に女性ユーザーが増え、その動向はスズキも予測できなかったようです。
すべての世代で共通していえることは、クロスカントリー4WDはライフスタイルの演出がしやすいクルマと答えたことです。そのライフスタイルが、アウトドアレジャーであることはいうまでもありません。
コロナ禍によって出かける場所や遊び方が限られたことで、さらに人気が上昇しているキャンプは、さらにその人口が増加しました。ソーシャルディスタンスが保てる上に、開放感を味わえるキャンプは、この時世にはピッタリのレジャーです。このキャンプブームが、クロスカントリー4WD需要を後押ししたことは間違いありません。
キャンプ派がクロスカントリー4WDを選ぶのには、いくつか理由があります。第一にデザイン。クロスカントリー4WDは本来、僻地で活躍するためにつくられたクルマであり、悪路を走るためにシンプル、無骨にデザインされています。シャープでスポーティなデザインが多いSUVとは、真逆のベクトルです。
「多くのキャンプ用品や登山用品は、機能を優先したシンプルでいかにも道具的なデザインが採用されており、名品と呼ばれるアイテムは何年も基本的なデザインが変わりません。こうしたモノが持つ雰囲気に惹かれて、つい購入してしまう人が少なくありません。エキスパート用のアイテムには“冒険”を感じさせるモノが多く、閉塞感が漂う今だからこそ人気があるのではないでしょうか。クロスカントリー4WDも共通の雰囲気を持っている上に、何年もデザインが変わらないところが、所有欲を満たすのだと思います」(登山用品店販売スタッフ)
先行きの見えない経済状態が続く上に、自動車の価格は高くなる一方。そんな中で、すぐにデザインが変わってしまうモデルよりも、基本デザインが10年以上変わらないクロスカントリー4WDは、時間がかかっても手に入れるべき賢い買い物なのかもしれません。
アウトドアシーンでは、海外発信の「オーバーランド」というキャンプスタイルも広がりつつあり、カスタム業界ではクロスカントリー4WDをベースにした「オーバーランダー」というカテゴリーが注目されています。こうしたムーブメントもあって、クロスカントリー4WDは新車・中古車ともにますます活況を呈していく予感がします。
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