メインに据えた写真は「W18気筒エンジン」。地球の未来を考えたエコな3気筒ももちろんいいですが、超ワガママな変なエンジンも気になってしまうのも我らクルマ好きの性。ということで、今ならちょっとあり得ない、“変態エンジン”大集合!(本稿は「ベストカー」2013年2月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文/フォッケウルフ
16気筒、18気筒、H型、U型もあるよ!!! このエンジンどうなってるの!?? 世界の変わり種エンジン大研究
■16気筒、18気筒……シリンダーが多けりゃエラい!? 変わり種エンジンその1
ブガッティヴェイロン。431.072km/hの世界最高速度記録を持つスーパーカー。市販版はW16だ
最近は高級車であっても4気筒+ターボチャージャーが流行で、下手すりゃ3気筒だったりもするのだが、昔は「パワーの追求=多気筒化」だった。
ということで「やたら多気筒な自動車用エンジン」を探してみると、V型24気筒という強烈なものも過去にあったようだが、これは主に機関車や超大型トラックに少々使われただけ。実際にあった超多気筒エンジンの極め付きはブガッティヴェイロンの「W型18気筒」だろう。
市販バージョンのヴェイロンはW16だが、試作車両としては3バンクのW18が開発されたのだ。が、「構造が複雑すぎて信頼性に欠ける」という、考えてみれば当然の事実が判明し、結局市販バージョンにW18は採用されなかった。
前述のとおり超大型トラックではV24、V20、V18という変態エンジンもあったようだが、市販乗用車ではイタリアのスーパーカー、チゼータV16Tが搭載した、その名のとおりのV型16気筒が有名だ。
排気量6Lの巨大すぎるエンジンをミドに横置きしているため、リアセクションがやたらと張り出しているのがチゼータV16Tの特徴。1989年にデビューし、1992年から月産わずか1台ペースで製造された幻の珍スーパーカーである。
そのほか、何台かの「気筒数が多すぎるモデル」については下記を参照されたし。
●主な変態的多気筒エンジン
・V型16気筒(キャデラック・シリーズ452A)
・V型18気筒(400トン積み超大型ダンプの一部)
・V型20気筒(400トン積み超大型ダンプの一部)
イタリアのチゼータが開発したスーパーカー。市販車としては異例のV16をミドに横置きしている
■直列もV型も……長くつなげて迫力をアピール! 変わり種エンジン その2
直8搭載のベンツ300SLR
右に60°傾けた直列4気筒を縦に2基並べた直列8気筒エンジン。とにかく鼻先が長くて前が見えません!?
「長すぎて邪魔!」ということで直列6気筒すらも絶滅しかけている昨今だが、昔はゼイタクだったというかノンビリしていた。
市販車ではなくレーシングカーではあるが、1950年代に活躍したメルセデスベンツ300SLRは、2基の直4を縦に並べたクソ長い「直列8気筒」をフロントに搭載!
よくわからないがエンジンルーム写真を見る限り、ボンネットの長さは3気筒を積む日産ノートの4倍、フェアレディZの1.5倍ぐらいでしょうか! 運転席からの視界がどうなっているのか、気になるところだ。
そのほか、“走る芸術品”と呼ばれた1920年代のグランプリマシン「ブガッティ・タイプ35」も直列8気筒だった。
さすがに今後、直8が復活することは200%ないはずだが、スペースをぜいたくに使った直列6気筒はぜひ絶滅しないでいただきたいもの。でも、何かと難しいんでしょうなぁ……。
アウトウニオン。シルバーアローことタイプCが搭載したV16!
■単純に2倍のパワーを狙ったのか!? エンジンを2基搭載もアリだ! 変わり種エンジン その3
シトロエン2CVサハラ
FFであるシトロエン2CVのリアに、後輪を駆動させるためのエンジンをもう一つ付けた4WD。油田開発用のクルマを市販化したものだ
「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」と言ったのは故・岡本太郎画伯だが、「クルマにエンジンが2つあってもいじゃないか」と言ったのはシトロエンのエンジニアだ。
いや、そんなことを言ったかどうかは知らないが、2CVサハラは油田開発用の車両を市販したもの。後輪を駆動するためのエンジンをリアに1基追加した4WDだが、片方を切ればFFにもRRにもなる優れモノ(?)だ。
ツインエンジンといえば、モンスター田嶋こと田嶋伸博氏がパイクスピークで勝つために開発された「スズキスポーツ・ツインエンジン・カルタス」も忘れちゃいけない。
400psを発生する1.6L直4を前後に搭載し、合計で800psを叩き出すモンスターマシンだ。駆動配分が難しいが、これを見事にやってのけた。VWもトライしたが物にならなかったのをモンスターが成功させ、1992年のパイクスピークで優勝。
モンスターのカルタスツインエンジン。2代目カルタスベースのヒルクライムスペシャル。400psの1.6L直4エンジン2基を前後に直結で搭載していた!
【閑話休題】昔のクルマには単気筒エンジンも存在していた
BMWイセッタ初期モデルに搭載された単気筒エンジンの透視図。本来2輪車用で排気量は250cc
オートバイの場合は400ccクラスの中型2輪であっても「単気筒エンジン」が存在するが、現在では単気筒エンジンを搭載する4輪車は存在しない。が、大昔はやはりあったんですね。カール・ベンツの相方であるゴットリープ・ダイムラーが1856年に作った世界初の4輪自動車は排気量462ccのガソリン単気筒エンジンを採用していた(3年後はV2に進化)。
また1940年代末からヨーロッパで流行した「バブルカー」でいうと、BMWイセッタの初期モデルは単気筒。そのほかではダイハツのミゼットも単気筒でしたね……って、ミゼットは4輪車じゃなくて3輪か!
■H型、U型……いやそんなムリヤリ作らんでも…… 変わり種エンジン その4
水平対向8気筒でもデカすぎるのに、それをさらに2階建てにしたH16! 当然、失敗作でした
かつてのF1に参戦していたコンストラクター「BRM(ブリティッシュ・レーシング・モータース)」は1951年、V12全盛時代にあえてV16エンジンを開発したが、エンジン自体が長すぎて使い物にならなかった。
が、BRMはまったく懲りずに(?)1966年、今度は水平対向8気筒エンジンを2階建てにした、F1史上類を見ないレイアウトの「H型16気筒」でリベンジを期すことに!
が、当たり前だが馬力は凄いが重すぎて壊れやすい……という明らかな失敗作。アメリカグランプリで勝利を収めたこともあったようだが、結局は1967年シーズン序盤にあっさりと姿を消した。
U型エンジンは、2つの直列エンジンをギアまたはチェーンで結合したもの。今日ではまったく一般的ではないが、直列エンジンと部品を共通化できたため、V型エンジンが一般化するまでは、強力なエンジンを作製する手法として多用された。
といってもU型は基本的には当時の航空機や戦車に使われたエンジンで、自動車用としては1920年代のブガッティがごく少数のU型エンジンを製作したのと、フランスのマトラが1974年頃、U型8気筒の「マトラ・シムカ・バゲーラ」を開発した程度だ(このクルマは結局量産されず)。
V型が一般化する前に用いられたU型。直列をつなぎ合わせた形ですな
【閑話休題】3、5はあって7はない!? 奇数気筒のフシギ
今や希少な直列5気筒エンジンを一部モデルに採用しているボルボだが、最近はやはりエコ系の4気筒が中心だ
3気筒は大注目なのに直列5気筒は廃れ、V型7気筒となると見たことすらない。そのあたりの「奇数気筒問題」について、自動車評論家の鈴木直也氏に聞いた。
「ピストンがガソリン燃焼で動く際の振動を打ち消すのが、他のピストンの振動。互いに振動を打ち消しあっているわけですね。で、気筒数が奇数になると振動が打ち消せないので『バランサーシャフト』が必要になってきます……という話以前に、4気筒を超えると横置きが難しくなる、つまりFF向きじゃないので、必然的に絶滅傾向にあるわけです。ん? なんで『V7』がないか、ですか? え~と、わざわざV7るなら、V8でいいと思いません? そういうことです(笑)」
■クルマ用じゃないけど…… 世界にはヘンテコなエンジンだらけ!? 変わり種エンジンその5
1816年に提出されたスターリングエンジンの概念図。今でも一部で使われる技術です
こうしてみると自動車用エンジンというのは比較的オーソドックスだが、自動車用以外にはかなり変態的なエンジンも存在する。まず上の図版は、「スターリングエンジン」が特許を申請する際に添付されていた図。
スターリングエンジンというのは「シリンダー内のガスまたは空気などを外部から加熱・冷却し、その体積の変化により仕事を得る」という方式の外燃機関。19世紀後半にはすっかり廃れたが、省エネの観点から今も一部で研究は続けられている。
下の宇宙生物のような図版は「ネイピア・デルティック」の模式図。3クランクシャフト対向ピストンエンジンで、上下対向ピストン式の直列6気筒を3つ組み合わせ、三角シリンダーの18気筒/36ピストンとしたド変態エンジンだ。
ネイピアデルティックの模式図
最後は、1950年代にアメリカが開発した航空機用原子力エンジンを搭載するために作られた試作機(下)。さまざまな問題が多すぎて結局は実用化されなかった原子力飛行機だが、「世界中どこでも爆撃しに行けるように」なんてことを考える人類というのは、本当にド変態なのかもしれませんね……。
いずれクルマも原子力エンジン搭載!? でも航空機で実現しないんだからナシですね
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みんなのコメント
よくもまあこんなめんどくさいメカつくったなと感心する。
8気筒を4気筒にまとめたようなホンダの楕円ピストン
こいつらも変態具合ではかなりかと。