長年、欲しいと思っているクルマがあるとしよう。
手に入れられる人とそうでない人。その違いはどこにあるのだろうか。
クルマのために仕事をする 自分の子供のような愛おしい存在…若き女性スポーツカーオーナーの愛し方とは【クルマ好き女子部PART2】
お金? 運? タイミング? どれも正解であり、どれか一つが欠けたとしても成し得ないだろう。
それと同じか、それ以上に大事なことがあるように思う。それは「本気度」だ。
本気で欲しい、必ず手に入れたいと思っていればいつかチャンスが巡ってくると信じたい。また、そうでなければやっていられない。
今回、取材させていただいたオーナーの方も「本気だったからこそ」現在の愛車と出会うことができたようなのだ。
オーナーの小野 大輔さん。愛車である1998年式 日産スカイラインGT-R 4ドア AUTECH VERSION 40th ANNIVERSARY(R33型)とは23年の付き合い
文/松村 透
写真/松村 透
[gallink]
■プロフィール&愛車紹介
・お名前:小野 大輔さん
・ご年齢:46歳
・ご職業:会社員
・所有しているクルマ(年式、グレード名):1998年式 日産スカイラインGT-R 4ドア AUTECH VERSION 40th ANNIVERSARY(R33型)
・購入時期:1998年(平成10年)12月
・所有年数:23年
・購入時の走行距離:1km
・現在の走行距離:56700km
・購入時の金額:440万円
23年間という時間の流れを感じさせないほどのコンディションを誇る小野さんのスカイラインGT-R。まさにコンクールコンディションだ
■このスカイラインを手に入れようと思ったきっかけを教えてください
免許を取得したらいつかはスカイラインGT-Rに乗りたいと考えていましたが、すぐに購入できず、18歳の時にスカイラインGTS-4(R32型)を手に入れました。
いつかはスカイラインGT-Rという想いはありましたが、なかなか踏み切れず・・・。せっかく所有するなら限定車のような特別な仕様が欲しいと考えていました。
当時のカタログや価格表、そしてR33 4ドアGT-Rのミニカーも大切なコレクション。毛ばたきは外装用、内装にはクイックルワイパーを愛用しているのだとか
それからしばらく経ったある時、40周年記念で4ドアGT-Rが限定で発売されると聞き、ディーラーへカタログをもらいに行きました。
偶然、展示車が置いてあり、すっかり一目惚れしてしまいました。運転はできなかったんですが、座らせてもらって、そこで一気に購入意欲がわいてきまして。まずは最初は頭金作りから。少しでも頭金をそろえるように頑張りました。
登録済未使用車として手に入れたというこのGT-R。取材時の実走行は56700kmだった
その後、偶然、雑誌で登録済未使用車の4ドアGT-Rを見つけ、現車を確認に行ったんです。
中古車店の店長さんが、知り合いに頼まれて注文した車両がギリギリになって何らかの理由でキャンセルとなり、在庫車になっていた個体とのことでした。売りに出していたあいだも店頭に並べず、お店のガレージで保管していたそうです。
そのため、雨にも当たらず、日焼けや傷ひとつない文句なし状態だったこともあり、さらに希望のボディカラーだったこともあり、その場で購入を決めました。
シート(R34GT-R純正)とシフトノブ(純正オプション)以外、オリジナル然とした車内。星光産業製ドリンクホルダーが懐かしい(現在も購入可能)
とはいえ、私としては「一生モノ」という意気込みで購入を考えていたので「新車が買える時に新古車を買うのはどうなんだろう・・・」。そして「ワンオーナーではなく実質ワンオーナー」という点がネックとなり、悩んだことも事実です。
今でも少し気にすることもありますが、なにはともあれ、4ドアGT-Rオーナーになれた喜びの方が強いので、結果大満足です(笑)。
このクルマの心臓部にあたるエンジンはRB26DETTが搭載される
■愛車との濃いエピソードについて聞かせてください
濃いエピソードかどうかは分かりませんが・・・(笑)。
●ボディカバーを3ヶ月ごとに交換
購入当初は屋外駐車場だったので、ボディカバーをかけていました。この時、初めてのボディカバー選びに悩みましたね。
耐久性は商品によって違いはあるようですが、常に日差しを浴び、経年劣化していくのは結局どれも同じことだと考えました。その結果、あえて安価なボディーカバーを3ヶ月毎に新品に取り替えていました。
3ヶ月を目安にしたのは、エンジンオイル交換のサイクルに合わせれば忘れずに済むという理由でした。
地道なコンディション維持の結果は細部にも表れている。取材用ではなく、普段からこのコンディションなのだ
安価なボディカバーでしたし、撥水効果も相応でした。しかし、3ヶ月おきの出費はかなり痛かったです(笑)。
●1週間・1400km走破してもいちども雨に降られずに済んだ!
北海道で働いてる友人に会いに行った時のことです。1週間・1400kmくらい走って1度も雨にぬれず帰ってきたという奇跡がありましたね。
行きはフェリー、帰りは東北自動車道を南下しました。
ちょうど北海道で雪が降りはじめる時期だったんですが、道中、いちども雨や雪に遭遇することなく済みました。その後もこのGT-Rで旅行に行く機会がありましたが、雨の日は極力使わないように頑張りましたよ。
●車内で飲み物はOK、食べるのはNG
子どもたちには気の毒ですが・・・(苦笑)、車内で飲み物はOK、食べるのはNGとしています。
●家族との初詣は必ずこのクルマで
験担ぎ・・・というわけではないのですが、新年の初詣は必ず家族みんなでこのGT-Rに乗って行きます。ただし、駐車場は近くにあるジャリではなく、遠くてもアスファルトのところに停めて家族を歩かせるっていう(笑)。
■愛車に対するこだわりについて聞かせてください
こだわりというほどではないかもしれませんが・・・以下ことは気にかけています。
オリジナルのシートは大切に保管され、代わりにR34GT-R用シートを装着している
●雨の日(それに準じるコンディション)は乗らない
雨の日や降水確率が高い日、雨が止んだ後でも路面がまだ濡れてる時は乗りません。
雨の日はボディカバーをつけたり外したりできなかったことがきっかけでした。
ガレージ保管になった今でもそのまま「雨天未使用」にこだって頑張ってきましたが、ディーラーの定期点検の時に雨のなかを数km走ってしまいました、それが悔やまれます・・・。
●洗車は手洗い
上記とは矛盾しますが、洗車は水を使って手洗いです。これまで1度も洗車機に入れたことがありません。
ボディカバーを使用する以上、ボディに埃や汚れがついたまま被せることは避けたいですし、夜遅くに帰宅しても必ず洗車し、20~30分走って水分を残さないようにしてからようやく終了です。
23年間、これを続けたおかげなのか、普通のカーシャンプーとワックスのみで、塗装面は良い状態を維持できています。
●暖機運転
出かける前の暖気運転は必ず行っています。水温計の針が動き出してから2000回転リミットで走行し、油温計が動き出したら3000回転リミットまで上げる、といった手順で走り出します。
シフトチェンジも常にダブルクラッチです。免許を取得して以降、最初は遊び半分で操作していたことが、今ではすっかり身についてしまいましたね(笑)。
お子さんが小さい時、チャイルドシートを取りつけた際に純正リアシートが傷むことを避けるため、「インパルR33-R」専用のオプションのリアシートに交換されている
●エンジンオイル&エレメントは3ヶ月ごとに交換
エンジンオイル&エレメント交換は3ヶ月サイクルと決めています、3ヶ月3000キロ目安で、と考えているのですが、R33GT-Rの場合はほとんど走行距離も増えずに交換しているので、作業の方から再確認されることが多いです(笑)。
●ウィンドウフィルムは貼らない
リア3面に敢えてウィンドウフィルムを貼っていないのもこだわりです。
●純正オプションへのこだわり
マイクロツインフォグランプやニーパッド等、純正オプションにこだわっています念願のホログラフィックマーカーも入手したのですが、内装に加工が必要なので少々躊躇しています。
時折やってくれる(?)日産らしい摩訶不思議な装備はぜひ動作を見てみたいものです(笑)。
幻(?)のオプションであるホログラフィックマーカー。いわゆるコーナーポールの代わりになるアイテム(当時世界初)だ
■大まかな年間維持費(自動車税、オイル関係、ガソリン代などを含めた概算)を教えてください
ざっくりですが以下のようになります。
・自動車税:58,600円
・ガソリン代:約36,000円(2~3か月に1度、満タンに給油している感じです
・エンジンオイル&エレメント代:約48,000円
エンジン始動は週に1度。近所をぐるっとまわるだけのこともありますが、とりあえず動かすようにしています。
きちんと燃費を計測したことはありませんが、高速道路で流れに乗るペースだと12~13km/Lです。もともとガンガンに飛ばすタイプではありません。エンジンを高回転域まで回すのも、コンディション維持が主な目的ですし。
現在はガレージ保管なので、洗車は月に1度するかしないかの頻度です。水垢落としを使ったことはありませんし、専門店に依頼してのコーティングもありません。あくまでも「あっさり、さらっと」の洗車を心がけていますね。
出かける前にエンジンの暖気運転は必ず行っているという、水温計の針が動き出してから2000回転リミットで走行し、油温計が動き出したら3000回転リミットまで上げるという手順を守っているのだとか
■失礼ながら、これまで大小の故障はありましたか?
故障は今のところありません。
一度、給油口の蓋が開かなくなるトラブルがありました、原因は分かりませんが、ヒンジステーが曲がったようです。
フタとボディが干渉してしまい、オープナーを引いたままフタを手で押したり引いたりしながら開けなければならず・・・。また、閉めるときも干渉部分を傷つけないように優しく閉める・・・といった状態になり、ディーラーに相談しました。
その対応はというと「特装車なのでウチでは何もできません」といわれ追い返されたことがありました・・・。
結局、自分で手曲げ修正して直しましたが、ディーラーの対応が不満でした。せめてオーテックジャパンに問い合わせてくれるとかあっても良かったかなといまだに思います。
給油口のフタの部分が少し浮いている気がするが、これで正解なのだという
■純正部品の入手に苦労していますか? 欠品・製造廃止している部品などご存知でしたら教えてください
苦労しています。
内外装はいずれも新品の入手はほぼ期待できません。ネットオークションに出品されている中古部品も、ここ最近の高騰ぶりに驚いています。
数年前まで1000円スタートだったモノが、今では10000円スタートだったり・・・。全体的に出品価格の桁が1つ増えた印象です。純正の新品部品を買い占めて高額転売している業者もいるようです。
現在ストックしている部品はあまりないんです。とはいえ、純正部品の価格が上昇していることもあり「コレちょうどよさそうだからストックしておこう」という気軽さはなくなりました。
他の旧車およびネオクラシックカーと同様、部品の争奪戦はこのクルマとて例外ではないようだ
■愛車の主治医どのようなお店ですか?
メンテナンスはディーラーにお願いしています。
今後はGT-R特有のトラブルや整備が必要になってくると思いますので、専門店などのお店探しはしていこうと思っています。
前後のドアの厚みに注目!
■これからも乗り続けるご予定ですか?
もちろんこれからも乗り続けます。
2人の子ども(男の子と女の子)がいるのですが、どちらかに乗り継いでもらえたらうれしいですね。
息子はクルマにはあまり興味がないようですが、娘の方はもうひとつの趣味であるバイクにまたがったり、クルマの運転席に座ったりするので期待が持てるかも。
小野さんの2人のお子さんが次期オーナー候補のようだ。ぜひ実現していただきたい
■未来のオーナーのために購入時のチェックポイントや愛車のウィークポイントを教えてください
R33GT-Rはボディを重視した方が良いと思います。
内装やエンジンまわりは何とかなるとしても、ボディがアウトだったらすべて台なしになります。特に、各部の錆のチェックは必須です。具体的にはフロントストラットの取り付け値の部分とか。
しかし、エンジンルームを見ただけでは分かりませんし、むしろ一見して錆が見つかるとしたら・・・かなり進行している「末期状態」なので、購入後の出費がかさむかもしれません。
「手に入れればあとはどうにかなるだろう」といった選び方はオススメしません。
ボディのコンディションがキモと語る小野さん。「手に入れればあとはどうにかなるだろう」といった選び方はオススメしませんとのことだ
現役のR33GT-Rオーナーと一緒に身に行くのもアリかとは思いますが、それでも判別するのは難しいと思います。錆が発生するはボディの内側や下回りが多く、リフトアップでもしない限り見えにくくて判断が難しいですよね。
以前は走行距離やボディカラー、修復歴や装備等の車両の状態を加味したうえで価格が表示されていた印象があります。そのため、買う側もある程度の判断ができました。
現在はプレミア価格か、海外流出対策なのかは分かりませんが、本当に分かりにくくなりました。とはいえ、あるところにはあるはずです。タイミングが合えば極上車に出会える確率はあります。
これまでずっと欲しいと思っていたクルマを目の前にするとつい妥協したくなると思うんです。そこをグッと堪えて「欲を出さずタイミングを気長に待つ」これですかね。
妥協せず、グッと堪えて「欲を出さずタイミングを気長に待ってください」と小野さんは語る
■あなたにとって愛車はどんな存在ですか?
常に放っておけない気になる存在であり、苦労を共にしてきたし、そばにいて欲しい・・・等々、まとめると「永遠の彼女」ですね。奥さんには悪いですが(笑)。
このクルマの存在を、奥さまに申し訳ないといいつつ「永遠の彼女」語る小野さん
■取材後記
今回、小野さんの愛車であるR33型スカイラインGT-R 4ドアを拝見して「ぶっ飛んだ」。怒られるかもしれないが、あえてこの表現を使わせていただく。それほど驚愕のコンディションだったからだ。
このクルマのまわりだけ時間がゆっくり流れいるのではないか(もちろん、そんなことはないのだが)と疑いたくなるほどの驚愕のコンディションだったからだ。
取材があるから・・・と本気で洗車をしてもこのようにはならないし、莫大な費用を投じて専門の業者にコーティングを依頼しても細部までは手が回らない。
正面:純正オプションのフォグランプも健在! 背面:まさに唯一無二! 4ドアGT-Rでしか見られないリアビュー
この23年間、小野さんが心血を注いで維持してきたことは(小野さんは多くは語らなかったが)クルマを見れば一目瞭然。まさにコンクールコンディションといえる状態であったことは間違いない。
かといってガレージにしまい込んだりせず、小野さんがきちんと走らせている点にも注目したい。
生産台数422台(諸説あるようだ)といわれるレアなこのR33型スカイラインGT-R 4ドアのなかでもトップクラスのコンディションを維持していることは間違いない。
この貴重なクルマを、小野さんとそのお子さんたちが後世へと受け継いでくれるはずだ。
ストレート6特有のエンジン音を響かせながら走り去る、小野さんのスカイラインGT-R
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