すべてが一新されたトヨタブランドの最高峰ミニバン「アルファード/ヴェルファイア」が目指すのは、「快適な移動の幸せ」。初の公道試乗では、そのショーファー力とドライバビリティのグレードアップぶりを実感することができた。進化の秘訣は、磨き抜かれた「強靭な身体」にあり。見えるところ、見えないところも含めてまずは、日常から感じられる優しさを演出してくれるこだわりの細部について、見ていこう。
極められた「ショーファーとしての才能」にちょっとだけ緊張する
8年ぶりにフルモデルチェンジした新型アルファード/ヴェルファイア(以下、便宜的にアルヴェルに短縮)は、開発のメインテーマとして「快適な移動の幸せ」を謳っている。誰のための幸せか?と問われれば、トヨタいわく「乗る人すべてが相手を思いやり感謝し合える空間を実現するため」だという。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
もちろん、ショーファーカーとしての才能に文句をつけることはできない。日本での利用に最適化しながらギリギリ最大化されたボディサイズ(全長4995×全幅1850mm)といい、3列すべてが快適に過ごせるゆとりの空間といい、プライベートでもビジネスでも満ち足りた時間を演出する充実の装備といい、まさに至れり尽くせり。
従来比で40mmも拡張されたスライドドア開口部(820mm)は、乗り込む瞬間からおもてなし力を実感させてくれる。トヨタ車としては初めて、右リアにも設定されたユニバーサルステップのステップ高220mmも、高すぎず低すぎずのちょうどいいポジション。ちなみに1360mmという最大室内高は、もっとも心地よい開放感を狙った数値だという。
新型アルヴェルの導入当初のラインナップは、2列目キャプテンシートを備えた7人乗り仕様のみ。試乗した最上級仕様「Executive Lounge:エグゼクティブラウンジ」の2列目シートは、その中でも豪華な設えが与えられている。
個別に設定された脱着式のマルチオペレーションパネルなど、見るからに「できる」雰囲気がひしひしと伝わってくるデザイン、2種類のクッション素材を最適に組あわせて座っている姿勢の安定感を高めるとともに、サスペンションやボディからの共振を身体に伝えにくくする「見えない部分」での工夫も施されている。
その質感の高さにちょっとばかり気おされながら実際に座ってみると、「肌感」としての優しさをすぐに実感することができた。ただ広いだけでなく、きわめて洗練された機能性を視覚的にも理解することができる。
オットマンも出して背もたれをフルに倒すと、雰囲気はちょっとした国際線のビジネスクラス。乗ったことはないけど、もしかするとファーストクラスにも匹敵するのか??いや、実は、これぞまさしくプライベートジェットのレベルか???
そういった飛行機的上級キャビンを彷彿させる要素となっているのが、天井中央に機能装備や収納スペースを集約した、スーパーロングオーバーヘッドコンソールだろう。
開発者によれば、ここは単なる実用性だけではない、大型ミニバンだけがもたらすことのできる豊かな空間性、世界観を象徴する部分なのだという。収納ボックスが2列目用と3列目用。それぞれに独立して用意されているあたりにも「すべての乗員」のことを考えた、妥協のない思いが感じられた。
心地よさを実感させるために重要なもうひとつの要素が、ノイズ対策だ。ただしここでも、単に「静寂に満ちた空間」を目指してはいない。発生する周波数を分析することで、つぶすべき不快な音と残すべき心地よい音を区別して対処している。
たとえば前車の代表選手は、タイヤから発生するロードノイズ、風切音など。それぞれに男性の声、女性の声の周波数に分けて、会話の妨げにならないように遮音を調整している。不快なノイズについては、車室内への侵入経路を徹底的にチェック、スモークの流れで「穴」を確認し、ひとつひとつを丁寧に塞ぐ対策を施しているという。
極上の快適性を突き詰めるためにこだわりぬいた「ブレない身体力」
さらに新型アルヴェルがこだわった新たな価値を強く感じられたのが、さまざまなシーンでの「ブレない身体力」だ。「揺れない・・・」とか「ずれない・・・」などと、言い換えてもいい。がっしりとした強靭ボディと、大小さまざまな部分での不快・不要な振動を巧みに制御する技術が、卓越した安定感を生み出している。
まず注目すべきが、優れたボディ剛性の実現だ。環状構造の骨格を採用、超高張力鋼板は使用する部位に合わせて硬度の高さだけでなくプレス加工の種類も熱間・冷間を使い分け、最適化を図っている。床下V字ブレースとの相乗効果で、従来比で約50%の剛性向上が達成されているという。
軽量化に効果的な構造用接着剤の使い方にもひと工夫がある。特性が異なる2種類の接着剤を部位の要件に合わせて使い分けることで、ボディの変形を効果的に抑制することが可能になった。使用量は実に、従来型の約5倍に達するというが、ただ量が多いだけではないところもキモだ。
機能面でも、剛性向上につながるさまざまな技術的新機軸が盛り込まれている。スライドドアの利便性を確保しながら、開閉用モーターの位置を変更することでボディ中央線に近い位置まで上げた。ユニット自体のコンパクト化、軽量化も徹底。ロッカーをシンプルなストレート構造にすることが可能となり、重量的にも剛性的にもバランスのとれた機構を作り上げた。
ブレないボディ構造とともに、新型アルヴェルでは不快な「揺れ」への対策も徹底されている。凝った機構を備えた周波数感応型ショックアブソーバーを採用するとともに、EPSアクチュエーターをよりフロントアクスルに近い位置に配することで、リニアリティを高めた。搭載されるエンジンや駆動方式によって、チューニングはそれぞれ最適化されている。
後席の乗員を酔いにくくするための姿勢制御にも気を配っている。たとえば路面の凹凸に応じて、ハイブリッド車のモーターおよびガソリン車のエンジンが生むトルクをリアルタイムで制御するととともに、サスペンションが車体の縦揺れを抑制する機能まで備えているのだ。
トルク制御という意味では、ハイブリッド車のモーターについて、ゼロ発進加速時の立ち上がりトルクカーブも最適化、急激な加速感を抑えることでパッセンジャーが酔うのを防いでくれるのも重要なポイントだ。
さらに後輪ベンチレーテッドブレーキディスクのサイズアップ(従来の16→17インチ化)も、実は酔いにくい走りを生む秘訣となっているという。フロントブレーキだけでなくリアブレーキにもしっかり制動力を発揮させることで、減速時の姿勢がよりフラットになる。
いわゆる「船が波にあおられる時」のような前後方向のゆらゆらした動きは、視線を不安定にさせてしまうことで、乗り物酔いを助長する。体感的なGと視線移動とのマッチングを高めることで、平衡感覚の違和感を抑えることができるはずだ。
実は、走行中に後席に座る機会を逸してしまったのだが、同乗したカメラマンの評価は非常に高かった。不快な振動も無駄な揺れも最小限で、しかも静粛性が高いという。プロ目線で言うと「並走撮影をするにも最適の1台」だったようだ。
もっとも、カメラマン氏にロケ後の帰路、快適すぎて爆睡されてしまったりすると、運転手としては少々ジェラシーを覚えることは確かだろう。もちろん、それが家族だったり仲間だったりするなら、オーナーとして非常に誇らしい気分が味わることは間違いない。【新型アルファード&ヴェルファイア初試乗(2)ドライバー編】に続く。(写真:井上雅行)
トヨタ アルファード エグゼクティブラウンジ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4995×1850×1935mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2230kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:2487cc
●最高出力:140kW(190ps)/6000rpm
●最大トルク:236Nm(24.1kgm)/4300−4500rpm
●モーター最高出力:134kW(182ps)
●モーター最大トルク:270Nm(27.5kgm)
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:2WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・60L
●WLTCモード燃費:17.5km/L
●タイヤサイズ:225/65R17
●車両価格(税込):850万円
[ アルバム : 新型アルファード/ヴェルファイア初試乗(1) はオリジナルサイトでご覧ください ]
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発表後数日目で契約、再来月のじゃなかった9月の3週目ぐらいの納車予定です。