■ニューCクラスの全部乗せ
6月29日に日本でも発表された新型メルセデス・ベンツ Cクラス(W206)。間もなくセダンからデリバリー開始となるが、当面はガソリン/ディーゼルエンジンに48Vの第2世代ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせたマイルドハイブリッドモデルから上陸する予定で、セダンのみに設定されているPHEVのC350eのデリバリーは、2022年中頃と少し先に予定されている。
このC350eは、ヨーロッパでは「C300e」というモデル名で、セダンとステーションワゴンにそれぞれ2WD(FR)と4WDが用意される。ヨーロッパ市場でも発売は2022年初旬に予定されているので、まだ路上で見ることはない。そんなC300eセダンの2WD仕様に、7月後半にスイス・チューリッヒで行われたEQS試乗会の最終日に試乗することが出来た。
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まだ新型Cクラスの主力であり、販売の中心になるであろうマイルドハイブリッドに乗る前に、いきなりPHEVに試乗というのは、初めて入るラーメン店でいきなり全部乗せを注文するような(例えが適切ではない気もするが)感じ。ニューCクラスの「素」の実力が判りにくい面もあったが、現地で実際にステアリングを握って感じた事を、正直にレポートしたいと思う。
■走行中なかなか始動しないエンジン
「プチSクラス」的なルックスと同様に、新型Sクラスにも採用された「MRA-II(モジュラー・リヤホイールドライブ・アーキテクチャーII)」を採用する新型Cクラスは、新世代電動パワートレーンや最新世代のエレクトロニクスに対応。一層の軽量化も実現するなど、大幅な進化を遂げている。
ボディサイズは、全長4751mm、全幅1820mm、全高1438mm(ステーションワゴンは1455mm)。先代と比較するとサイズ拡大は最小限に押さえながら、一層伸びやかなプロポーションとなっている。2865mmのホイールベースはセダン、ステーションワゴンとも先代から25mm伸びた。
C300eは、最高出力204馬力、最大トルク320Nmの2.0L直4ガソリンターボに、129馬力/440Nmを発揮する電気モーターを搭載し、9速ATの9Gトロニックを組み合わせたハイブリッド パワートレインを搭載する。システム合計最高出力は312馬力、最大トルクは550Nmで、このクラスでは十二分に高性能と呼べるスペックである。
チューリッヒのホテルを出発して、まず感じたのは、とにかく電気モーターを積極的に使うことだ。始動時はEVモードがデフォルトなので当然だが、ハイブリッドモードに切り替えても、上り坂などでアクセルペダルをかなり深く踏み込まないかぎりエンジンは起動しない。それでも街中では非力に感じる事は決してない。電気モーターだけで129馬力と440Nmを発揮するのだから当然だ。
■150km/hまで加速できるEV走行
ステアリング背面にはパドルスイッチが備わるが、EV走行時には、「D+」、「D」、「D−」の3段階に調整出来る回生ブレーキの切替スイッチとして機能する。「D+」ではワンペダルとまではいかないが、かなり強めに回生ブレーキが利くので、ある程度慣れが必要かもしれない。だが、これを駆使すれば、EV走行時でもなかなか積極的なドライビングが楽しめる。さらにはどんな走り方がより効率的か、頭を使いながら走る楽しさもあって、従来のCクラスとの違いをはっきりと感じることができた。
アウトバーンでも、追い越し加速のときを除いてエンジンは始動しない。スイスのアウトバーンは最高速度が120km/hに制限されるので、140km/hまで電気モーターのみで加速できるC300eにとっては、まだまだ余裕があるのだ。ドイツのアウトバーンの速度無制限区間で、何km/hまで電気モーターで出せるか試してみたところ、メーター読みで151km/hまで加速できた。
しかもC300eは、初代日産リーフを上回る、25.4kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載しているので、電気モーターのみで110kmも走行できるのだ。実際、オンボードコンピューターで確認したところ、チューリッヒ~イメンディンゲンの約110kmのうち97%、急速充電のあとに走行したイメンディンゲン~チューリッヒ空港の約100kmのうち95%がEV走行だった。それでもバッテリーは0%になっていなかったので、掛け値なしにEVモードで100kmは走れる。
C300eは、もはや「ICEによるアシスト機能を備えたBEV」といった感じだ。もちろん100kmを大きく越える長距離を走る場合でも、給油さえすれば問題なく走れるので、そこはやはりPHEVなのだが、「限りなくBEVに近いPHEV」という印象である。日本の交通環境であれば、1日走っても1度もエンジンが始動しない、なんてことも十分に起こり得るだろう。
バッテリーの充電は、出力55kWの直流急速充電に対応していて、約30分でフル充電が可能だ。オンボードチャージャーも最大11kWに対応し、家庭用ウォールボックスでも数時間でフル充電出来る。充電時間の短さは、やはりBEVよりPHEVにアドバンテージがあると言える。BEVに興味はあっても充電時間に引っかかっているような人に、C300eはピッタリかもしれない。
■PHEVゆえの欠点も
ただ、気になる所がないわけではない。加速はパワフルで、Sクラス譲りのリヤアクスルステアリングを搭載するなど、シャシーも大幅に進化した新型だけに、特にスポーツモードを選択すると、かなりダイナミックな走りが楽しめるのだが、乗り心地がなんだかゴツゴツしているように感じられたのだ。スポーティに引き締められているというよりは、重たいパワートレインやバッテリーを支えるために固められているといった印象で、ストローク感が薄いのである。まだマイルドハイブリッドのモデルを試乗していないので、なんとも言えないが、新型のポテンシャルはこの程度ではないはず。来年のデリバリー開始までには、ぜひとも改善してもらいたいところである。
また、ラゲッジフロア下にバッテリーを搭載するため、フロアが持ち上げられていて、セダンは通常445Lのところ315L、ステーションワゴンは通常490Lのところ360Lと、それぞれ130Lも荷室容量が小さくなっている点も、購入する場合には要確認だ。
とはいえC300eは、EV航続距離の大幅な拡大によって、PHEVの新たな可能性を感じさせてくれるモデルであることは間違いない。実際に所有してみたら、そのうち「もうBEVでいいんじゃない?」と思うかもしれない。そういう意味では、今後のBEVの普及を後押しする絶妙なパッケージングを備えたモデルなのかもしれない。
<文=竹花寿実 写真=竹花寿実/メルセデス・ベンツ>
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みんなのコメント
1.5リッターの最低グレードで645万円スタートの新型Cクラスの、どこが優等生?
この日本価格設定、一見地味で真面目な顔してるだけで実は反社・半グレってパターンだろ!