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ディーラーとユーザーの信頼回復への「第一歩」! トヨタが「J-SLIM」導入でクルマの生産から納車までを可視化!!

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ディーラーとユーザーの信頼回復への「第一歩」! トヨタが「J-SLIM」導入でクルマの生産から納車までを可視化!!

 トヨタは2023年10月13日、名古屋本社で新車の受注について生産から配送、ユーザーの元に配車されるまでを可視化する新しいシステム「J-SLIM」の説明会を開催。現地で参加した国沢光宏氏の速報をお届けしよう。

文/国沢光宏、写真/トヨタ

ディーラーとユーザーの信頼回復への「第一歩」! トヨタが「J-SLIM」導入でクルマの生産から納車までを可視化!!

■豊田章男会長の指令で友山茂樹フェローが動いた!

豊田章男会長から直々の指令で友山茂樹フェロー(役職は国内販売事業本部本部長)が「J-SLIM」構築に向けて動き出したという

 フェアレディZのデタラメな売り方を挙げるまでもなく、半導体不足や新型コロナによる大幅減産を受けディーラーは大混乱に陥ってしまった。ユーザーからすれば納期がまったくわからない。

 さらに入手難だと言われているクルマなのに、未登録の新車が中古車屋の店頭に新車よりも圧倒的に高い価格で並んでいる。結果としてディーラーが転売屋に流しているということです。もはやカオスと言える状態。

 そんな動きを見て豊田章男さんが「何とかしなければならない」と、友山茂樹フェロー(役職は国内販売事業本部本部長)に「3カ月でシステムを作って欲しい!」と命じたらしい。

 友山さんは私と同じ歳なので65歳。御本人もそろそろ引退してノンビリしようかと思っていたそうな。入社以来の「直属の上司」である章男会長からのリクエストということもあり、引き受けてしまったという。

[articlelink]

■なぜ30年間も納期の透明性を確保できなかったのか?

説明会ではまずは従来型需給システムについての構図が明示された

 ここまで読んで、多くの人は難しい仕事だと思わないだろう。ところがどっこい! 納期の透明性を確保するというシステム、バブルでクルマ売れまくった30年以上前から多くの自動車メーカーがやろうとしたのにできないでいる。

 なぜか? メーカーってクルマを作る担当。仕入れて販売するのはディーラーだからだ。ディーラーからすると「好きに売りたい」。

 クルマを買いに来るのは初見の人もいれば、長年の顧客もいる。はたまた一度に10台以上のクルマを買ってくれるフリートユーザーだっています。さまざまな「特殊案件」を抱えているのだった(だからこそ転売が疑えるようなケースでも取り引きを続けている)。

 半導体不足や新型コロナ禍前まで、ディーラーはそんな流れをコントロールしてきたワケです。美味しい部分だってあったと思う。

■受注システムの透明さに切り込んだトヨタ

今回、J-SLIMが開発された背景とその狙いについて

 今回トヨタが切り込んだのは、透明性のある受注システムである。内容を聞いて驚いた。トヨタは車種だけでなくパワーユニットやグレード、さらにメーカーオプションまで含む生産計画台数をリアルタイムでわかるようにしてきた。

J-SLIMのシステム概要について

 ディーラーは端末でお客さんの欲しい車種&仕様を検索すれば、かなり正確な納期を提示できる(3カ月先までは10日単位。それ以上だと1カ月単位)。

クラウンクロスオーバー2.5Lハイブリッドの機能項目ごとの一覧が示される

 参考までに書いておくと、半導体不足と新型コロナによる生産不足を受け、最初に納期の目安を出してきたのはトヨタ。それすら難しいことである。日産なんか「トヨタやホンダは納期目安を公表しているに、なぜアンタのところだけ出さない!」とクレームが出ても、数カ月も知らんぷりを決め込んだ。納期の透明性を出そうとすると、さまざまな抵抗が出る。だから30年間できなかった。

 今回も抵抗はあったようだ。特にトヨタでいえばメーカー直販店がほとんどなく、販社は地場企業。それでもシステムを作り上げられたのは、

1)ディーラー自身、多くの納期トラブルを抱えて対応に苦慮していた。

2)豊田会長にシンパシーを持つディーラー経営者が多かった。

3)友山さんは65歳で出世欲がなく怖い者なしだった(同じ歳なので気持ちは100%理解できる)、という点にあると思う。

 このシステムの凄さは、怖い者なしになった友山さんが大暴れした部分にある。項目のなかに「名義変更」とあった。何かと聞いたら、オーダーした人の名前と、登録した人の名前の違いを追いかけているそうな。

 つまり、転売目的で見込みオーダーを入れ、登録する時は違う人というケースを追いかけようというもの。数字に出てしまう! 見つけたらトヨタから詳細な調査依頼を出す。

■納期が可視化され、ユーザーとディーラーの信頼関係も取り戻せる?

車種ごとの生産予定日が明らかになるというJ-SLIM

 このシステムが本格的に立ち上がり、上手に使いこなせるようになれば、ユーザーとディーラーの信頼関係を修復できることだろう。多くのメディアは今回の『J-SLIM』というシステムを「トヨタの効率主義のひとつ」と紹介するだろうが、根っ子にあるのは顧客第一主義にある。

J-SLIM本格導入の根っこにあるのは「顧客第一主義」と筆者は指摘する

 ほかのメーカーには豊田章男も友山茂樹もいないため、頭からフトンを被って長納期状態をやり過ごすしかできまい。

トヨタがJ-SLIMの導入で狙っているのはビジネス変革そのものだ

 興味深かったのは2023年10月13日時点でバックオーダーが75万台もあること! 半年前で95万台だった! 今の調子だと2024年10月は55万台。トヨタの年間販売台数は2022年で125万台だったため、それでも平均的な納期は6カ月ということ。

 車種ごとの納期も可視化されており、ノア/ヴォクシーのハイブリッドだと11カ月とな! 可視化することでさまざまな課題も見えてくると思う。

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