■手動消灯不可の「オートライト」義務化へ
2020年4月以降の新型車(普通乗用車)から、周囲の明るさに応じてヘッドランプ(前照灯)を自動で点灯する「オートライト」機能の実装が義務化されます。
夜間の街中も「ハイビーム」なぜ増えた? 相手は目が眩み危険、怒鳴られるケースも
このことは2016年10月に国土交通省から発表されました。背景には、特に薄暮時における交通事故が多いことが挙げられています。周囲が1000ルクス未満まで暗くなると、2秒以内に自動でロービームが点灯するといった動作に関する基準が設けられるほか、この点灯機能は手動で解除できないようにしなければならないとされています(停車中には手動での消灯が可能)。
とはいえ、オートライト機能は動作に関する統一的な基準こそなかったものの、すでに多くのクルマで採用されているほか、ハイビームで走れる場合にはハイビームで走行し、必要に応じ自動でロービームに切り替えるといった機能を搭載した車種もあります。ホンダなどが採用しているのは、対向車のヘッドランプや先行車のテールランプ、複数の街路灯などをカメラ認識し、ロービームに切り替えるというものです。
近年はさらに、「アダプティブハイビーム」や「グレアフリーハイビーム」といったものも登場しています。これは、ハイビームを基本としつつ、対向車や先行車などに当たる部分だけ光量を調整あるいは遮光し、相手にまぶしくないようにするもの。
マツダでは、このグレアフリーハイビームを含む3つのモードを組み合わせた「アダプティブLEDヘッドライト(ALH)」を多くの車種で採用しています。40km/h以上の走行時には、複数のブロックに分かれたヘッドランプのLEDを個別に点灯・消灯するグレアフリーハイビームを作動、それ以下のスピードでは、ヘッドライトの外側に備えたワイド配光ロービームを点灯させ、左右の視界も拡大。一方で95km/h以上の高速走行時には、ヘッドランプの光軸を自動で上げて、より遠くを照らすハイウェイモードに切り替わるなど、シーンに応じて適切なライティングがなされます。
すでに現時点で、オートライトはもちろん、ハイビームとロービームの切り替えという概念すらなくなってきているといえるかもしれません。
■「照射パターン10億通り」も 歩行者にはまぶしくない?
このようにヘッドランプが進化した背景には、センサーやカメラを駆使した制御技術の進化もありますが、2000年代後半から徐々にLEDヘッドランプが普及してきたことが挙げられるでしょう。LEDは1個あたりの照度は小さいものの、複数組み合わせて光を制御することができるのです。
アウディの「マトリクスLEDヘッドライト」などは、その特徴を活かしたものでしょう。2014年発売のA8などから搭載されたこのヘッドランプは、複数のハイビーム用LEDを組み合わせることで、約10億通りもの照射パターンを形成するというもの。アウディジャパンによると、カメラで周囲の光源を認識して細かくパターンをつくり、光量や照射範囲を刻々と変化させていくそうです。「スイッチを入れているだけでいいので、いちど使うとすごく便利です」とのこと。
2017年にマイナーチェンジされたメルセデス・ベンツSクラスのヘッドランプは、片側84個ものLEDを制御するといいます。このSクラスでは、対向車や前走車がない直線道路を約40km/h以上で走行している場合に約650m先まで照射する「ウルトラハイビーム」も搭載。これは2018年7月発表の新型Cクラスにも採用されています。
しかしながら、ハイビームは歩行者にとってはまぶしく感じられることもあります。これまで紹介してきたようなハイビームの制御技術は、基本的に対向車のヘッドランプや先行車のテールランプなどを認識して照射範囲を調整するものですが、歩行者はどう認識しているのでしょうか。
アウディジャパンによると、「『マトリクスLEDヘッドライト』では、照らす先に光源があるかどうかを認識して調整しています。自転車のリフレクターや道路標識に反射した光なども認識しますが、歩行者は基本的に照らされます」とのこと。逆に言うと、まぶしいからといって歩行者を照らさないのは、クルマにとっても歩行者にとっても安全ではないと話します。
ちなみに、2016年10月には、昼間にも点灯する「デイタイムランニングランプ(DRL)」に関する基準も定められました。DRLはすでに欧州各国ではヘッドランプとは別に専用のランプとして取り付けが義務付けられていたものの、日本では未認可だったことから、輸入の欧州車などでは減光したうえで車幅灯などとして使っていたようです。日本での基準制定を受け、アウディでは2017年8月以降出荷モデルから順次、イグニッションをオンにすると自動で点灯するDRLを日本向けにも標準装備しているとのことです。
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