なぜか心に残る「ベイビーJ」
10年ほど前なら、SUVは試乗するクルマの2割程度だったはず。ところが最近はずっと5割を超えている。
【画像】大きく代わったEペイスのインテリア レンジローバー・イヴォークとの違いは?【兄弟比較】 全62枚
泥っぽいクロカンや都会的なクロスオーバー、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、2駆、4駆等々、個性は色々あっても分類としてはSUVなのである。
そんな「猫も杓子もSUV」の時代なので、すぐに乗ったことを忘れてしまうモデルもなくはないのだが、その逆もある。
決してよく見かけるわけではないのだが、ジャガーEペイスは個人的に「心に残る1台」の筆頭だ。
今回試乗できたEペイスは今年2月に導入が開始された2021年モデルで、グレードはD200 AWDとなる。
ディーゼル搭載のベーシックモデルとなるD200は、204psの最高出力を発生する2L直4インジニウム・ディーゼル・エンジンを搭載している。
2021年モデルのEペイスは内外装ともに変更を受けているが、アーキテクチャー自体が最新のPTA(プレミアム・トランスバース・アーキテクチャー)に変更されているというのだから驚かされる。
外観はヘッドランプやグリルなど細かく変更されているが、それでもお化粧直しと言ったところ。
だが室内の変更点はわかりやすい。シフトレバーがガングリップタイプから低いレバータイプに変更されているし、センターコンソールにはめ込まれたタッチスクリーンディスプレイも11.4インチに大型化され、表面が僅かにカーブしているのである。
2020年代の「ネコ脚」ここにあり?
ジャガーEペイスは2017年に発表され、2018年に本邦デビューを果たしている。このため、その2021年モデルはモデルライフ半ばのマイナーチェンジという意味合いがあるのだと思う。
果たして熟成なったEペイスは今なお心に残る1台足りえるのだろうか?
EペイスはジャガーSUVの末っ子だが、実車を目の当たりにするとそこまでコンパクトというわけではない。特に全幅は1900mmもある。
ところがドライバーズシートに座り、走りはじめるとクルマ自体がキュッと引き締まって感じられるから不思議だ。
ドライビングポジションが少し高めで視界がいいということもあるし、直感的に車幅を把握しやすいということも効いているのだと思う。
首都高やワインディングのような少しツイスティな道路で見せる、車高の高さを悟らせることのないスポーティな走りは相変わらずだった。
だが一方で乗り心地は確実に良くなっていると感じた。バネ下が軽く、路面へのしっとりとしたタッチが手に取るようにわかる。
今回のD200は20インチ、50扁平のピレリを履いていたが、乗り心地自体はもう少し懐かしい60扁平くらいの印象。
スポーティだが当たりが柔らかい、かつてジャガーのドライブフィールの代名詞だった「ネコ脚」がSUVにおいて再現されたかのよう。
しばらく試乗するうち、今回もやっぱりEペイスの雰囲気に惹かれていたのだった。
日本のジャストサイズ 現実的な1台
先にD200が搭載するエンジンを直4ディーゼルと記したが、実際は2021年モデルからMHEV(マイルドハイブリッド)化されている。
電気の助けがなかった以前よりも確実に静かになっており、体感することは難しいのだが、恐らく発進時にはモーターによる大トルクがしっかりと加担しているのだと思う。
このため2t弱ほどある車重をほとんど感じないまま、また車高の高いSUVであることも忘れ、気が付くとけっこうなペースで走ってしまっている。
ディーゼルなのでレッドゾーンは4100rpmと低めだが、そこに至る吹け上がりは思いのほか速く、レブリミットに当たる瞬間にパドルを引いてシフトアップする楽しみもちゃんと残されている。
結局のところ、ジャガーEペイスというクルマは「現実的」とか「ちょうどいい」という感じなのだと思う。
楽しくてスポーティというだけでなく、サイズ感や使い勝手の良さ、優れた燃費(D200はWLTCモードで14.3km/L)、さらにはジャガーが誇る最新のインフォテインメントシステム「Pivi Pro」の直感的な操作感等々、おおよそ欠点がない。
Eペイスは高速道路を走っているうちはいいけれど、車庫入れになるとドライバーを憂鬱にさせるようなSUVではないのである。
だから試乗する時いつも、このジャガーSUVの末っ子を未来の愛車として捉え、感情移入してしまっている自分がいる。
刷新されたEペイスは、もっと注目されていいはずだ。
ジャガーEペイスD200 AWDのスペック
価格:576万円
全長:4410mm
全幅:1900mm
全高:1650mm
ホイールベース:2680mm
車両重量:1980kg(12ウェイシート/サンルーフ装着車)
パワートレイン:直列4気筒1997ccディーゼル・ターボ
最高出力:204ps/3750rpm
最大トルク:43.8kg-m/1750-2500rpm
ギアボックス:9速マニュアル
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