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ライダーの個性が現れたミサノ。ライバルの急速な進歩に取り残される日本勢……/MotoGPの御意見番に聞くサンマリノGP

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ライダーの個性が現れたミサノ。ライバルの急速な進歩に取り残される日本勢……/MotoGPの御意見番に聞くサンマリノGP

 9月8~10日、2023年MotoGP第12戦サンマリノGPが行われました。レギュラー陣ではドゥカティ勢が速さを見せましたが、テストライダーではダニ・ペドロサが驚きの結果を残す一方、高橋巧が予選落ちするなど多くのトピックスがありました。

 そんな2023年のMotoGPについて、1970年代からグランプリマシンや8耐マシンの開発に従事し、MotoGPの創世紀には技術規則の策定にも関わるなど多彩な経歴を持つ、“元MotoGP関係者”が語り尽くすコラム第17回目です。

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※ ※ ※ ※ ※ ※ 

--前回のカタルーニャGPではスタート直後のチャンピオンの転倒もあって、アプリリアの強さが際立っていましたが、今回は再び強いドゥカティが戻ってきましたね。

 ホルヘ・マルティン選手の完勝でチャンピオンシップ争いも面白くなって、DORNAの思惑通りの展開になって来たね。フランセスコ・バニャイア選手も無事に復帰して表彰台獲得したし、こちらも結果オーライ。

 レース結果は、今シーズンの全般的な勢力図のイメージを反映していたと言えるのではないかな。ドゥカティが表彰台を独占し、トップ6にKTMとアプリリアというのは順当な結果と言えるけれど、少し顔ぶれが違ったような……

--ワイルドカード出場のダニ・ペドロサ選手の走りは驚きしかないですよね。前回出場したスペイン・へレスではスプリント6位・決勝7位と素晴らしい結果でしたが、今回はどちらも4位とあと一歩で表彰台というところまで来ましたね。

 スプリントはともかくとして、体力の必要な決勝レースではどうなのかなと思ったけど、前回の事故の影響があるとはいえ、現役チャンピオンのバニャイア選手を抜きそうな勢いだったのには脱帽だね。それに引き換え、レギュラーライダーのブラッド・ビンダー選手とジャック・ミラー選手が転倒という非常事態に見舞われて、KTMにはちょっと気の毒な微妙な結果だったね。

 ビンダー選手は、なんとかペドロサ選手の前を走っていたけど、相当なプレッシャーを感じていたのは想像に難くない。ペドロサ選手の後について、KTM機の正しい操縦方法のレッスンを受けてからプッシュすれば良かったのにと思うけど、そんな心の余裕は無かったらしいね。

 ミラー選手については良くわからんね。ドゥカティ時代は得意なコースだったのに、マシンが変わるとここまで苦戦するかねって感じだね。

--ペドロサ選手としても素直に喜べない後味の悪い結果になってしまいましたが、個人的にはバニャイア選手をパスして表彰台に上って欲しかったですね。

 本人も最後の方ではそういう気持ちが無かったとは言い切れないけど、無理して現役チャンピオンと絡んでクラッシュとか洒落にならないから、葛藤は大いにあったけど自制したのじゃないかな。そこがペドロサ選手の人間性の良さで有って、MotoGPでチャンピオンに届かなかった要因でもあるね。

 それでもドゥカティの後ろについて走った事で、色々と有益な情報を開発陣にフィードバックできた筈だから、KTMはまた速くなりそうな予感がするね。

--ところで、前回の覇者アプリリアはマーベリック・ビニャーレス選手とミゲール・オリベイラ選手が5位・6位と健闘しましたが、アレイシ・エスパルガロ選手はどうしたのでしょうね。

 カタルーニャはコースの特徴とマシンの特長が絶妙にマッチして、アプリリアに明確なアドバンテージがあったけれど、いわゆる高速のロングコーナーが無いこのコースでは、強みが封じられてしまったという事かな。それでもこの結果は悪くないし、オールラウンド性能ではドゥカティに一歩及ばないという事実の表れと見たけどね。

 エスパルガロ選手は理解不能だよね。直近の2レースで優勝しているライダーが、普通ならこのポジションとかありえないだろ。悪くても表彰台争いには絡んでくると思うのが普通で、そうでないところがエスパルガロ選手らしいと言えるのかも。おそらくだけど、カタルーニャの優勝の後に大騒ぎし過ぎて体調を崩したとか……

 エスパルガロ選手はグラノリアスの出身だから、生粋のカタラン。ホームレースの優勝をどんな具合に祝ったかは想像できるだろ(笑)

--ところで、かつてはペドロサ選手とチームメイトだったマルク・マルケス選手がジワリと調子を上げてきたようですね。

 プラクティスでペドロサ選手のスリップに付いてタイムを出していたよね。結果的にエースライダーの座を奪い、引退に追い込んだ元チームメイトを偉大なテストライダーと称賛していたけれど、皮肉な光景ではあったよね。

 まあ、そういう屈辱的とさえ思える状況をものともせず、貪欲に利用する姿勢が彼の持ち味という事かな。調子は確かに上向いてきているというか、焦りが消えたことで無理をしなくなった。結果完走が増えたので、そこそこの結果が付いてくるという感じかな。マルケス選手自身が現状を受け入れ、マシンに適応することに専念している結果だろうね。

 依然として他のホンダライダーは苦戦している、という厳然とした事実があるので、決してマシンが改善された訳ではなくて、スイートスポットの狭いマシンに、唯一マルケス選手だけが適応しているという事だね。アメリカズGPでアレックス・リンス選手が優勝したように、うまくツボにはまれば速く走れる事もある難しいマシンという事だな。

--今回はテストライダーのステファン・ブラドル選手のワイルドカード参戦とリンス選手の代役で高橋巧選手の参戦がありましたね。

 ブラドル選手はMoto2でチャンピオンになったこともあるけれど、MotoGPではあまりぱっとした印象が無いので、ペドロサ選手と比較するのは酷だけれど、まあ無事に完走して最低限の仕事はしたと……

 気になるのは、そのブラドル選手にも付いていけなかった中上貴晶選手と、そもそも105%ルールで公式予選に進めなかった高橋選手の存在だな。

--高橋選手は以前、MotoGPマシンのテストもしていたようですが、ここ数年は海外でスーパーバイク(SBKとBSB)のレースに参戦、今年から日本に戻ってST1000に参戦しているようです。今年の鈴鹿8耐では優勝に貢献している経験豊富なベテランライダーですよね。

 奇しくもペドロサ選手と同い年で、たしか2015年の日本GPではワイルドカード参戦で12位に入った記憶がある。最近の事は良く知らんけど、MotoGPのテストは長島哲太選手が担当しているようだね。

 その長島選手と組んで、鈴鹿8耐では昨年に続いて優勝しているから、実力を評価されての参戦だとは思うのだけれど、FP2でさっそくハイサイドの洗礼を受けた事もあってタイムを伸ばせず、公式予選に進めなかったのはHRCとしても想定外の展開だったに違いない。

 高橋選手にとっても辛い体験かもしれないけれども、気持ちを切り替えてオフィシャルテストに臨んで欲しい、と思ったけれど転倒で右足親指にクラックが入ったようで、すぐに帰国するらしいね。元々オフィシャルテストに参加する予定が有ったかどうかは知らんけど、こんな無茶振りに近いような起用にも応えなければならないライダーも大変だよ。

 そういえば2010年に、バレンティーノ・ロッシがムジェロで転倒して下肢を骨折した際に、既に40歳を超えていた、テストライダーの吉川和多留が代役参戦に内定していたらしいけれど、ロッシが奇跡的に規定ぎりぎりの4戦欠場しただけでカムバックしたので、参戦しないで済んだという話が有るんだ。もし参戦していたら予選通過できたのかな、その当時はたぶん足切りは107%だったと思うけど。

--それにしても高橋選手にとってホンダRC213Vはそんなにも乗りにくい代物だったんですかね?

 一つ言えるのは、鈴鹿8耐で嫌と言うほど直4マシンを乗り込んでいるので、体の隅々までその感覚が染み込んでいたんじゃないのかな。そんな状態で久しぶりにパワーも桁違いでそもそも訳アリのMotoGPマシン、さらに初見のコースと来れば現役トップから5秒落ち、中上選手やジョアン・ミル選手から4秒落ちと言うのは良く考えたら立派と言っても良いと思うな。ペドロサ選手と比較するのは酷というものだよ。

--最後に、恒例になった日本メーカーの総括という事になりますけど、何かトピックはありますか?

 思えば去年の今頃は、ヤマハのファビオ・クアルタラロ選手がチャンピオンシップをリードしていてこのレースでは5位。次のレースで復帰してきたマルケス選手と絡んでリタイアして以来、悪いものにとり憑かれたようにどんどん成績が下降して行ったんだね。

 今回のマルティン選手のレースタイムは昨年のバニャイア選手のタイムを10秒ほど短縮しているのに対して、クアルタラロ選手のタイム昨年とほぼ同等なので、13位は妥当なポジションと言えるし、現在の日本メーカーの低迷は、ライバルの急速な進歩に取り残されているという事に尽きるね、今更だけど。

 後は、オフィシャルテストにどの程度のテストアイテムを持ち込んで来たのかが気になるけれど、今シーズン用にエンジン自体に梃入れできない以上は、空力とフレーム、リヤアームなどの基本骨格、それにエンジン制御に関する幾つかのトライアルという事に限定されるわけで、一日でどの程度検証できるのか、ライダーの少ないヤマハにとっては厳しいところだね。

 来シーズン用に仕込んだアイテムをGPライダーで評価するとなると更に厳しいので、この点ではライダー数に勝るホンダに分があるけれど、さてライダーのモチベーション的にはどうなのかが懸念されるね。

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みんなのコメント

2件
  • アレイシは間違いなく体長不良w
    アプリリアはドゥカは勿論 KTMやホンダと違い、Egがまだ少し足りなく 特に低速からのトルクが弱いため、ハイグリップな路面で カートサーキットの様なサンマリノでは、ギア選択が他よりセンシティブで どのマシンも300ps近くは出ているから低くすぎるとスピン状態になり、トラコンが介入しモタつくため ギアは高めに走るが、下が無いアプリリアはソレもモタつく
    路面のミューが低くく 中速コーナーからの立ち上がりが抜群で、高速域までが速い 効率の良いエアロバランスになっている、他の3メーカーはドラッギーで強引にエアを押し ダウンフォースを得ているが、それは主にブレーキングとトラクションの部分であり アプリリアのそれはコーナーに特化している、パワーデリバリーがあと少しで 高効率で万能になる
    ヤマハは…とにかく色々試すしかないが、ドゥカティタイプではなく アプリリアに学ぶべきだ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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