ブランド復活後、これまでA110のみの展開だったアルピーヌだが、ここにきて大きなターニングポイントを迎えている。2024年に初のBEVを投入、それ以降も毎年BEVをリリース、26年には次期A110もBEVになるという。(Motor Magazine 2023年1月号より)
BEV化で増える重量をアルピーヌらしく軽量化
Motor Magazine誌の2022年12月号で予告したように、パリモーターショー後にフランス国内を移動し、アルピーヌのエンジニアリングセンターやF1チームのファクトリー、生産拠点など、現在と未来を知るいい機会に恵まれた。ここではそうした取材でわかったアルピーヌの本領と新境地を報告する。まずはパリモーターショーから振り返る。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
取材したのはプレスデイで、この日はフランスのマクロン大統領が来場することもあり、アルピーヌブースもその時間はセキュリティが最高レベルに強化され、ブース内には入れない状態だった。
それでも規制線の外から見ているとマクロン大統領とアルピーヌのロッシCEOがなにやら親しげに会話している様子が見えた。そこでどのようなことを話したのか後で聞いてみたところ、アルピーヌ自体のことや海外ではフランスブランドが輝いていること、アルピーヌ車はディエップ工場で生産される「Made in France」であることなどを話したという。
さらにBEVのコンセプトカーA110エテルニテ(永遠の意味)も「Made in France」、それに使用するバッテリーもフランス製であり、雇用にもアルピーヌは役立っていること。またアルペングローは、水素を燃料にするため環境に厳しいフランスに相応しいクルマだということにも触れたという。
そう、アルピーヌはフランスを代表するスポーツカーブランドだが、今後はBEVを市販しラインナップを広げ、さらに環境負荷の低いスポーツモデルの開発も行っているというのである。
翌日は、約1時間移動してレジュリスのアルピーヌエンジニアリングセンターへ。午前中はここでA110RとA110エテルニテのワークショップが行われた。
メニューはエアロダイナミクスやライトウエイトテクノロジーなど、つまりA110のキーテクノロジーである。そこではバッテリーの搭載などBEV化することによって増えた重量をどのようにアルピーヌらしい軽量化モデルへと変えていくのかや、A110Rが実際に採用している技術やパーツなどを見ることができた。
BEVの次期A110は2026年に登場予定
そうした中でも興味深かったのが、A110エテルニテである。これは現行A110をBEV化するためのコンセプトモデルではなく、BEV化する次期A110のための研究開発車だという。簡単に言えばBEV化練習車。アルピーヌは、ここから本格的なBEV化への道を進んで行くのだ。
具体的には、2024年にアルピーヌ初のBEVがホットハッチで登場、その後、翌年にはアルピーヌらしいSUVを登場させる。もちろん、これもBEVである。そして26年になると次期型A110がBEVで登場するという。
ところでそのあたりの進捗状況はどうなのか、アルピーヌカーズエンジニアリングテクニカルダイレクターのオリビエ・ガントラン氏に聞いたところ「まだ10%ぐらいです。挑戦は続いています」というコメントが返ってきたが、BEV化による重量増をライトウエイトをブランドの核に据えるアルピーヌがどのようにブレークスルーするのか、興味が尽きない。
午後は、ヴィリーシャンティオンにあるBWTアルピーヌF1チームのファクトリーへ移動した。ここでは、F1マシンのパワーユニットの組み立てやテストベンチ、さらには設計などが行われている。ちなみにテストベンチは5つあり、エンジンパフォーマンス、ピストンのテスト、新しい燃料のテストなどを行うのだが、現在は来シーズンのF1に向けエンジンのテストをしているところだという。また26年に、FIAのルールが新しくなるのでそれに向けたエンジンも開発中なのだという。
ここで聞いた話では、F1では、数100lmレベルの耐性を持つエンジンの耐久性が必要だという。FIAの規定では1年で3基のエンジンしか使うことができない。レースは年間22~24戦あり、1戦で600~800kmぐらい走るため、それに耐えられるエンジンを作り、さらにそのエンジンのF1参戦のOKを出すのもここの役割なのである。
ちなみにエンジンには1万6000点もの部品があり、それらすべてここで検査して組み立てているという。また、シーズン後半は、あえてペナルティを払って4基目のエンジンを投入する戦略を取ることもあるが、その判断もここで行うようだ。
その後は、3時間近くかけてディエップに移動。翌日は、アルピーヌの創業者ジャン・レデレ氏と縁の深いディエップにあるジャン・レデレの生産工場を取材した。
ちなみに創立の地はジャン・レデレ工場から少し離れた場所にあり、2022年に生誕100年を迎えたためミュージアムを作る予定だったが、コロナ禍によってオープンが伸びているという。
ジャン・レデレ工場から世界中のオーナーの元へ
イギリス海峡に面した港町ディエップにあるジャン・レデレ工場で迎えてくれたのは、アンヌ=キャトリーヌ・パセ工場長である。彼女はなんと1カ月前に工場長に就任したばかりだという。このジャン・レデレ工場の敷地面積7万6000平方メートル、約450人の従業員が働いており、その中の17%は女性であり、ルノーグループでは一番小さい工場である。
A110の生産が開始されたのは16年から。翌17年には117台、18年には3304台、19年には4239台と順調に生産台数を伸ばしたが、20年はコロナ禍の影響を受け1279台だった。しかし21年は3005台に復調、今年は、改良モデルが登場した効果もあり3500台を超え4000台に近づく予定である。ちなみに生産能力は、1日18台である。
2022年上半期の生産時の事故数はゼロ。安全やクオリティに自信を持っていて、最高の品質をオーナーに届けるという信念がある。さらに約束したA110の納期を100%守るのも、この工場のモットーなのだという。そして最終的には工場内にあるテストコースを9kmぐらい走り、オーナーのもとへ旅立っていくという。
ところでこの工場では2025年からアルピーヌの新しいBEVのクロスオーバーGTも生産する予定だ。そうなると現在の4~7倍の生産量となり、BEVということもあり、大きなチャレンジだとアンヌさんは語ってくれた。
本格的にBEVの生産が始まったジャン・レデレ工場はどのように変わるか、とても興味深い。機会があればまた訪れてみたい。
BWT アピーヌ F1チーム拠点(ヴィリーシャンティオン)
BWT アルピーヌ F1チームのファクトリーも訪れた。
ここには3つの建屋があり、それぞれの場所で100近くのサプライヤーから届いた部品の組み立て検査、パワーユニットの設計、開発、組み付け、原材料チェック、電子部品の組み付けなどのほかにエンジンのテストベンチや、さらにF1グランプリ開催中に現地と同じデータを揃え、分析、さらには指示するオペレーションルームなどもあり、まさしくF1チームの中枢とも言える場所である。
ちなみにクランクシャフトは日本製だと教えてくれた。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:アルピーヌ・ジャポン、千葉知充)
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