この記事をまとめると
■「車両保険」の補償額はどうやって決まっているのかを調査してみた
恐怖でしかない「無保険車」との事故! だが日本には被害者を救う「政府の保障制度」が存在した
■新車の場合、中古車の場合、それぞれに補償額のガイドラインが各保険会社ごとに存在している
■旧車のオーナーに向けた「クラシックカー保険」もある
車両保険の補償額はどうやって決まる?
みなさんのなかで、事故を経験している人はどれくらいいるでしょうか? ひとくちに事故と言っても、ちょっとガードレールをこすってしまったくらいの軽いものから、人身が絡むような深刻なもの、道路を数時間封鎖してしまうような大事故まで、程度はさまざまあると思います。
そんなときに問題となるのは、その事故で発生した被害への補償です。自身が加害者側であれば、その補償の金額を自身で負担しなくてはなりません。物損もかなりの額にはなりますが、人身が絡む場合は死亡のケースで億単位の保証が求められることもあり、個人でそのすべてを賄うのは、事故が大きいほど難しいでしょう。
そこで頼りになるのが「保険」です。保険に加入していれば、事故による損害の補償費用を賄ってもらえますので、義務である自賠責保険はあたりまえですが、任意保険もほとんどの人は加入しているでしょう。
それだけでも万が一の事故の心配はかなり軽減されますが、事故の損害については、もうひとつ気がかりがありますよね。そうです、自身の車両の損害です。基本的な保険のパッケージには、自身の車両の補償は含まれていませんので、その補償を希望する場合は別途「車両保険」に加入する必要があります。
その「車両保険」、新車を購入したばかりであればその購入価格が補償額になりますが、発売から年数が経つごとに補償額は少なくなっていきますので、中古で車両を購入して「車両保険」に加入するとき、その補償額を知って「え? たったそれだけ?」とびっくりしてしまうというケースも少なくありません。思わず保険会社に抗議をしてしまうという人もいるかもしれません。
ここでは「車両保険」の補償額に焦点を当てて、その補償額がどういうふうに決められるのか、その額が変更できるのかなどについて掘り下げてみたいと思います。
(※記事の作成にあたり、日本損害保険協会などのデータを参考にさせていただきました)
■「車両保険」とは?
先述のように、任意保険の基本的な補償対象に自身の車両の損害は含まれていません。「自身の損害を保険で賄えたら……」と思う人は、さらに任意で「車両保険」に加入する必要があります。
「車両保険」というのは、事故による自身の車両の損害を補償してもらえる保険です。基本の任意保険は過失の割合で補償額が変わってきますが、「車両保険」の場合は過失の割合には関係なく、その損害の修復に必要な額が補償の対象になります。
ほぼすべての車両所有者が加入する任意保険に比べて、特定の人しか加入しない「車両保険」は、補償額に対する保険金額が割高になりますが、それは保険の仕組みを考えると、分母が小さければ保険金額が高くなるのは仕方がありません。
■「車両保険」の補償額はどうやって決まるの?
保険の基本的な考え方は「原状復帰」です。中古で購入した場合はその年式、グレード、車両の程度、装着されている部品などが考慮され、損傷した分の「原状復帰」にかかる費用が補償されます。
車両の部分的な損害に対しては、修理にかかる費用が対象になります。この場合は修理を行う業者による見積りを元に補償額が検討されます。原状復帰が基本なので、プレミアが付いた部品の購入価格も検討してもらえますが、その場合は必ずしも全額が対象になるとは限りません。
修理の費用が車両購入に必要な費用を上まわる場合は「全損」という扱いになります。つまり、補修に必要な部品と工賃の上限は、代わりの車両を購入するために必要な費用が上限となります。
減価償却によって旧車は満足いく金額が支払われない?
ここで問題になるのは車両の購入費用についてです。
基本的に「車両保険」の補償額は、加入車両の購入時の金額が対象になります。新車であればそのときの「標準価格」がベースです。メーカー小売価格があればその額で、オープン価格の場合は実売価格になります。購入時の割引などは関係ありません。ナビゲーションやカスタムパーツなどのオプション装備を追加していれば、それも対象になります。
ややこしいのは中古車の場合です。
中古車の場合、程度や年式、販売店の意向、あるいはいまどきはネットオークションでの購入もありますので、実売価格にはかなりの開きがあります。安く購入できた車両に対して、「いま買い直すにはこれだけかかるんだ!」と、ピンキリの高い額を要求されても、保険会社としては応じることはできません。
そんな価格の基準が曖昧な中古車の補償額を算出するにあたって、保険会社がガイドラインとしているのが「自動車保険 車両標準価格表」というものです。これは各保険会社で作成したガイドラインをまとめたもので、細かくは違う部分もあるようですが、おおまかなところは共通の基準に沿っていると言っていいでしょう。
まず、新車の標準小売価格をベースとして、減価償却という考え方を基本に市場の実施価格も考慮に入れて算出されているようです。つまり、年々その価格は下がっていきます。滅多なことでは価格が上がることはありません。
このガイドラインに沿っていくと、ザックリですが、1年ごとに約1~2割減額されていき、10年も経つころには新車時の価格は見る影もなくなってしまいます。
「えっ! 20年前の車種はゼロになっちゃうの?」と思った人もいるでしょう。でもゼロにはならないようです。額はケースバイケースのようですが、20~30万円くらいの『最低補償額』というボトムラインが設けられているとのこと。
この公式どおりに順調に(?)実売価格が下がっていく車種であれば、このガイドラインとの食い違いは大きく出ませんが、中古車の価格はそう簡単ではありません。販売から30年以上経った旧車と呼ばれる車種のなかでも、人気の高い車種は市場価格が新車時の何倍もの額に上がっていて、いわゆる「プレミア」が付いた状態になっているものもけっこうあります。
そんな車種に乗っている人が、万が一の事故に備えておこうと「車両保険」に加入しようと思ったとき、まず提示される額がこの『最低補償額』だった場合、愕然として肩を落とす人も少なくないでしょう。
でもさすがにそんなことはないようです。基本原則の「原状復帰」の考えのもと、購入時の価格が金額算定の要素に加えられ、社内で検討して補償額が提示されるとのことですので、購入金額の満額は出ないかもしれませんが、最低ラインからすればかなりマシな金額が提示されるでしょう。
■プレミアに対応している商品や、交渉次第でどうにかなるという例もある
とはいえ、実際のところは「車両保険」に加入しようと思ったという人から、「あんな(補償)額じゃ加入する意味があんまりないよなぁ~」という声が聞こえてくることも少なくありません。事故の割合が高かったり市場価格が高額だったりすると保険金額が高額になりますので、そのような車種であればさらに割高感は強まるでしょう。「再購入のときの頭金くらいが出れば御の字」と妥協して加入する人も一定数はいる印象です。
そうかと思えば「再購入の費用がほとんど賄えた」という話もときおり聞こえてきます。
「クラシックカー保険」という、まさに旧車のオーナーにピンポイントに向けた保険もあります。一般の「車両保険」に比べて保険金額は少し高いようですが、そのぶん補償額は満足のいく金額が設定されているようです。
また、これはウラを取れた話ではないのですが、こんな例もあるということでお伝えしておきましょう。
いま、市場価格が高騰しているR32型のスカイラインGT-Rを購入した際に「車両保険」に加入しようとしたところ、まず先述のように型どおりの低い金額を提示され愕然としたそうです。しかしその人は、「なんとかならないか?」と代理店に食い下がり、時間はかなりかかったそうですが、結果的にけっこうな補償額の保険に、想像よりかなり安い保険額で加入できたという話です。
まずはその車両オーナーの熱意が原動力ではないかと思いますが、保険代理店の担当者もデキる人だったことが要因だったと思いますので、誰しもがこれを実現できるとは思いませんが、提示された額をそのまま妥協せず、ダメ元で考証してみるのもアリだと思います。
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みんなのコメント
古い車になると、車両保険に入れなかったりするし、プレミアクラスの車の保険料はかなり高額。
いかに事故率が高い危険なクルマかということがよく判る。