ラングラーの悪路走破性を高めた最強モデル
世界的なSUVブームの中にあって、Jeepの持ち味とも言えるオフロード性能の高さに注目が集まっている。日常的に砂漠や岩場を走ることがなくても、今や世界のどこでも災害が起き、普段の道がある日いきなり悪路と化すような事態が頻発している。そんな時への備えとしてJeepの悪路走破性が脚光を浴びているわけだ。電気自動車(EV)を災害等緊急時の予備電源機能として活用するために所有しようという意識と似ている。
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一方で、右を見ても左を見ても似たようなSUV車ばかりとなってきた中でJeepの持つ個性が際立ち、その明確に差別化された成り立ちが乗るたびに非日常性を感じさせてくれ楽しませてくれる。今回は今注目のJeep車フルラインアップ試乗会に参加し、その魅力を再確認してきのでレポートしよう。
Jeepラインアップというと、エントリークラスの「レネゲード」から始まりミドルサイズの「チェロキー」、高級な上級クラスとしての「グランド・チェロキー」、そして伝統的なJeepスタイルを現代に色濃く継承している「ラングラー」と揃っている。
これらのモデルはすべて悪路での走破性、とくに登坂性能における優れたトラクション性能をJeepのDNAとして引き継ぎ、「TRAIL RATED」のバッジが授けられている。そこで今回、われわれは最強モデルの「ラングラー・ルビコン」にフォーカスし、他のSUV車では攻略不能といえる悪路での絶対的走破性の高さを改めて確認してみた。
ラングラーはJeepを世界に知らしめた米国軍用車両であった「ウイリス・ジープ」のアイデンティティを現代に引継いでいて、その特徴的なラジエターグリルまわりのデザインがアイコンにもなっている。昨年、現行モデルへとフルモデルチェンジを受け、タフな性能はそのままにモダンな装備と快適性を手に入れ極めて魅力的なモデルに進化させられている。
ルビコンは3.6リッターの自然吸気V6エンジンを搭載し、8速ATを介してパワートレインを構成している。通常はFRの後輪2輪駆動でレバー操作により4WDへ必要に応じて自動的に切り変わるオンデマンド4WDモード、さらに4WDのh(ハイ)と4WDのL(ロー)へとマニュアルで切り替え選択可能。
ここまではラングラーシリーズに共通しているが、ルビコンにはさらに前後のデフロック機能とSAWYBAR(アンチロールバー)オフ機能も備わるのだ。このSWAYBARはオンロードでロールを抑え走行安定性を確保し、悪路で大きなサスペンションストロークが必要なときはリンクをアクチュエーターで外してロードホールディングを確保するという独特な装置。Jeepは悪路での接地性を「ARTICULATION」性能と表現していて、サスペンショストロークの大きさを重要視しているわけだ。
試乗場所は山梨県都留群にある「富士ヶ嶺オフロード」だ。スポーツカーの走行性能を試すのにサーキットをステージとするように、オフロード性能を試すにはこの様な特設コースへ持ち込む必要がある。
まずはモーグルコースから。左右交互に大きな段差が刻まれた泥濘路は、対角一輪が浮き上がりやすく走破レベルが高くないと通過できない難ステージとなる。ここではSWAYBARをオフにしてアルティキュレーション性を高めることが有効だ。4WDポジションはもっともクロールレシオの高い4WD Lを選択。
クロールレシオとはJeepが提唱しているトラクション性能を数値したもので、トランスミッションの1速ギヤ×トランスファーケース4WD Lの減速比×アクスルレシオ(最終減速比)で求められる。ルビコンの場合はJeepラインアップでもっとも高い79.2:1という好数値になるという。これらの相乗効果でモーグル路はルビコンにとって普通の道の範疇となっていた。
急坂や悪路でも一般公道のような快適な乗り心地を披露
次は最大斜度24度の泥濘登坂路にアタック。降り続く雨により路面は歩行困難なほどに滑りやすく、見た目の斜度も崖のようにきつい。しかし、ルビコンは苦もなく登り切る。ここではトラクションコントロールをオフにし4輪を空転させながら勢いをつけて登ることができ、3.6リッターエンジンの余裕のトルク特性も奏功した。頂上のタイトターンを曲がるにはステアリングをロックまで切り込む。最大舵角が40度にも及び、カタログ値以上に小回り性がよく感じられる。
登りの次は下りだが、ここでは「ヒルディセント」機能が威力を発揮。スイッチをオンにするだけでドライバーはアクセルペダルもブレーキペダルも操作する必要がなく、ステアリングに集中できるのだ。さらに速度制御はシフトレバーをマニュアル操作すると1~8km/hの間で自由に選択できるという機能も備わっている。岩場でもステアリングへのキックバックがなく安心して走行でき、残るダートのハンドリングコースは一般路? と感じさせるほどの安定感で走破した。
ルビコンにとっては今回のコース設定でもまだ余裕があり過ぎるほどだった。なぜなら前後デファレンシャルロック機能を使わずに走破することができてしまったからだ。また渡河性能の高さも誇るべき部分だが、今回はコースに設定がなかった。この日のためにJeepから派遣されて来日していたエンジニア氏によれば、フロア下の防水性は完全で70cmの渡河も楽勝だという。
河川の氾濫など市街地でもクルマが水没するケースが増えていて、高速道路下のアンダーパスなどで水没して走行不能になるような事態も各所で起きている。もちろんJeepに乗っているからと自らそのような場所へ走り入ることは御法度だが、万が一、そんな場面に直面したとしたらルビコンの走破性の高さは安心感に繋がる。
唯一の不満点は右ハンドル仕様のため左足の置き場が狭いことだ。左ハンドルなら問題ないが、右ハンドル仕様ではミッションとトランスファーケースの出っ張りが大きくフロアスペースを犠牲にしてしまっている。エンジニア氏にはその改善をお願いしておいた。
また、今回の試乗車にはBFグッドリッチ社のマッドテレインKM3タイヤが装着されていたが、標準タイヤでも充分な走破力と感じた。
じつは最近Jeepラングラーに2リッター直4ターボエンジンを搭載した「スポーツ」をお借りして日常的に試乗している。2リッターターボでも必要十分以上のパワーとトルクがあり気に入っているが、北米では設定があるという2リッターターボの「ルビコン」を日本へも導入してほしいと合わせてお願いしておいた。
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