2019年7月9日正式デビューを果たしたダイハツ 新型タント。この時点ですでに納車2カ月待ちという人気ぶりだ。
激戦の軽超ハイトワゴンカテゴリーでの盛り返しを期待させる出足のよさを見せているのだが、新型タントの「推しポイント」は3つ用意されている。
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自動車評論家渡辺陽一郎氏による進化評、N-BOX、スペーシアとの比較とともにお伝えしよう。
※本稿は2019年6月のものです
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年7月26日号
■注目すべきポイントは? 新型タントはここが凄い!
(TEXT/編集部)
●大開口のミラクルオープンドア&ミラクルウォークスルーパッケージ!
新型タントの注目ポイント、まずひとつ目は大開口の「ミラクルオープンドア」。先代型もこのドアを採用していたが、新型では乗り降りや荷物の積み下ろしなど、使い勝手をさらに向上させている。
革新の車内移動と圧倒的な乗り降りのしやすさを謳ったミラクルウォークスルーパッケージ。新型タントのイチオシポイントだ
続いてふたつ目が「ミラクルウォークスルーパッケージ」。スムーズな動線と使い勝手のよさがウリで、最大で540mmスライドできる運転席ロングスライドシート(シートバックレバーつき)を持つ。
これによって後席と運転席とをスムーズに移動可能なほか、降車しなくても運転席に座ったまま後席の子どもの世話ができる。
また、軽初となるパワースライドドアのウェルカムオープン機能もあり、降車時に予約しておくと両手がふさがっていてもクルマに近づくだけでドアが開く。
●次世代スマートアシスト
最後が次世代スマートアシスト。全車速追従機能つきACCとLKC(レーンキープコントロール)のほか、軽初となるスマートパノラマパーキングアシスト(駐車支援システム)をオプション設定。
音声とモニターガイド、駐車時のハンドル操作を自動アシストしてくれる。さらにパノラマモニター、フルLEDヘッドランプサイドビューランプも備える。
全車速追従機能つきACCとLKCは「スマートクルーズパック」としてカスタムRSとXターボにセットのメーカーオプション設定
軽初の駐車支援システムは、スマートパノラマパーキングパックとしてメーカーオプション
グレード構成は標準がXターボ、X、L、Lスマートアシスト非装着車で、カスタムがRS、X、Lの全7グレード体系。
ボディカラーは標準が全9色、カスタムはモノトーン全8色、ツートーンはルーフがすべてブラックとなり、全3色。
●新プラットフォーム「DNGA」って?
今回の新型タントには新開発プラットフォーム、「DNGA」が採用されている。もちろん親会社トヨタの「TNGA」にならってそう名乗っているのだが、ダイハツとしてはBセグまでのコンパクト領域をこのDNGAでカバーするというもの。
新開発プラットフォームの「DNGA」。先代型から剛性を30%向上したうえで80kgもの軽量化を実現
具体的には国内では軽とコンパクト、新興国ではコンパクトで席巻するとの意気込みで投入される。
このDNGA、軽とA&Bセグのコンパクトをシリーズ一括開発でプラットフォームを一新しており、プラットフォームとユニットを同時刷新するのはダイハツでは初めて。
下が旧型、上が新型。DNGAのシェルボディにはミライースの軽量化技術に、各部構造合理化の進化が盛り込まれる
それだけ力の入った内容となっており、基本性能向上はもとより、CASE(電動化および自動運転)やMaaS(まちなか自動移動サービス事業への参画)への対応強化を謳っている。
また、新開発のデュアルモードCVT採用により、ドライバビリティと燃費を向上させているのも見逃せない。
■旧型からどのように進化したか? &N-BOX、スペーシアと比較
(TEXT/渡辺陽一郎)
●旧型からの進化度
新型タントは先代型の欠点を徹底的に払拭した。先代型の居住性は後席の柔軟性が乏しく、床と座面の間隔も不足するから、足を前方へ投げ出す座り方だった。
新型(写真左)と先代型(写真右)。中身の進化度はかなり大きなものがある
そこで新型はシートを刷新して、座り心地に柔軟性を持たせた。床が16mmほど下がり、後席の床と座面の間隔も適度に拡大している。4名乗車時も快適だ。
左側のピラー(柱)は、先代型と同じくスライドドアに内蔵され、前後のドアを開くと開口幅がワイドに広がる。さらに新型は、助手席に540mmのロングスライド機能を採用した。
助手席を前側に寄せると、左側のワイドな開口部から子どもを抱えた状態で乗り込み、広いスペースを使ってチャイルドシートに座らせる作業も行いやすい。
走りについてはエンジン、CVT、プラットフォームなどを刷新した。
先代型は操舵に対する反応が鈍く、速度を少し高めてカーブを曲がると、前輪が外側へ滑って旋回軌跡を拡大させやすかった。新型ではこの傾向が弱まり、運転しやすくなった。
世界初のパワースプリット技術採用の「D-CVT」
ちなみに先代型の操舵感が鈍く、旋回軌跡を拡大させたのは、高重心のボディで安定性を確保するためだ。新型タントは、プラットフォームなどの刷新で基本性能を向上させたから、自然な運転感覚を実現できた。
2018年度の国内販売ランキングは、1位がN-BOX、2位がスペーシア、3位は先代タント。この3車種はすべて全高が1700mmを超えるスライドドアの軽自動車だ。そこで3車を比較する。
タント(左)とタントカスタム
[ダイハツ タント]価格:122万0400~187万3800円
[ホンダ N-BOX] 価格:138万5640~208万0080円
[スズキ スペーシア] 価格:133万3800~190万8360円
●[N-BOX、スペーシアとの比較・1] 内装と収納
インパネの作りは3車とも印象が違う。N-BOXは高い位置にメーターを配置したから少し圧迫感が伴うが、質感はとても高い。スペーシアは質感はさほど高くないが開放的だ。新型タントは両車の中間的な印象になる。
収納設備はスペーシアが充実。助手席の前側には上下3段の収納ボックスが備わり、中央にはボックスティッシュの収まる引き出しがある。カップホルダーも引き出し式だ。
新型タントとN-BOXも収納設備は多いが、トレイ状が中心で、フタがついたり引き出すタイプは少ない。
●[N-BOX、スペーシアとの比較・2]居住性と座り心地
居住空間は3車とも広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、新型タントとN-BOXが握りコブシ4つぶん、スペーシアも3つ半になる。
シートの座り心地は、前席は3車とも同等だが、後席は少し差がつく。後席が最も快適なのは、座面にボリュームのあるN-BOXで、新型タント、スペーシアの順だ。
●[N-BOX、スペーシアとの比較・3] 動力性能
動力性能はノーマルエンジンの場合、新型タントがCVTの変速幅を広げて加速力を強めた。N-BOXはエンジン自体が、実用回転域の駆動力を高めている。スペーシアはライバル2車に比べると、加速力が若干弱く感じる。
収納設備に優れ、助手席前側に上下3段の収納ボックスを持つスペーシア。3車のなかで唯一、運転支援機能を備えていないのがウィークポイントとなる
●[N-BOX、スペーシアとの比較・4]操縦安定性
走行安定性と操舵感は、新型タントが自然な印象だ。全高が全幅の1.2倍という高重心ながら、左右に振られにくく操舵感もいい。次は僅差でN-BOX、スペーシアは操舵感が少し鈍いが、ボディが軽いから軽快感が伴う。3車とも走りに個性がある。
●[N-BOX、スペーシアとの比較・5]乗り心地
乗り心地はN-BOXが快適で、静粛性も優れる。新型タントも快適だが、RSは足回りの設定が異なり、ホイールサイズも14インチから15インチに拡大されて、少し上下に揺すられやすい。
●[N-BOX、スペーシアとの比較・6] 運転支援機能
このほか運転支援機能も異なる。新たに設定された新型タントの場合、先行車と一定の車間距離を保ちながら走行する機能が全車速追従になる。
ただしパーキングブレーキが足踏み式だから、自動停止して2秒を経過すると、ブレーキが解除されて再発進する。N-BOXは全車速追従ではなく、時速30km以下でキャンセルされる。スペーシアは運転支援機能自体を装着していない。
このカテゴリーで最大のライバルとなるのは盤石の王者であるN-BOX。ACCが全車速追従ではなく、速度が30km/h以下になるとキャンセルされてしまう
* * *
新型タントの特徴は、今でも左側ドアのワイドな開口幅だ。購買意欲を高める新しい機能は多くないが、気になる欠点を払拭して、運転支援機能も加えた。従って選ぶ価値を高めている。
■新型タント 主要諸元
・658cc、直3、52ps/6900rpm、6.1kgm/3600rpm
・658cc、直3ターボ、64ps/6800rpm、10.2kgm/3600rpm
・JC08モード燃費:ターボ/25.2km/L、NA/27.2km/L
・WLTCモード燃費:ターボ/20.0km/L、NA/21.2km/L
■新型タント 価格(2WD車)
L(スマートアシスト非装着車)/122万400円
L/130万6800円
X/146万3400円
Xターボ/156万600円
カスタムL/154万9800円
カスタムX/166万8600円
カスタムRS/174万9600円
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