クラウンスポーツについに待望のPHEVが追加された。コストパフォーマンスの面で賛否両論ある1台だが、出来栄えはいかに!?
※本稿は2024年2月のものです
文/鈴木直也、写真/茂呂幸正
初出:『ベストカー』2024年3月26日号
「クラウンスポーツ」乗り心地はトヨタイチ良い!? でもHEVより175万円高い!! PHEVを選ぶ価値はあるのか!?
■HEVより断然パワフル!!
今回試乗したトヨタ クラウンスポーツRS。HEVには試乗済みだったが今回はPHEV。想像以上の走りを見せた
クラウンスポーツのインプレはベストカー(2024年)1月26日号で報告したが、その時に乗れたのはHEV仕様のみ。シャシー性能の素晴らしさが印象深かっただけに、よりパワフルなPHEV仕様への期待感が高まっていた。
で、年が明けて2024年2月上旬。ようやくPHEV仕様の用意が整ったとの報せ。待ってましたとばかり試乗会場へと向かった。
まずは、ざっくりとHEVとPHEVの仕様の違いを確認しておこう。
一番の違いはもちろんバッテリー容量で、HEVがバイポーラニッケル水素電池1.2kWhなのに対し、PHEVはリチウムイオン電池を18.1kWh搭載。これによってEV航続距離90km(国交省審査値)を確保している。
エンジン(A25A-FXS型)は実質共通ながらフロントモーターが大型化され、出力で約5割、トルクも約3割増強されているのがポイント。これによってシステム最高出力は306psと、HEVより約3割もパワフルになっている。
このスペック差、純エンジン車だったらよりスポーティで尖ったドライバビリティを予想するところだが、PHEVは基本電動車。ほぼフル充電状態で走り出したクラウンスポーツPHEVは、走行モードが“HEV”でもほとんどエンジンが回る気配なし。
モーター走行のまま余裕で首都高の流れに乗ってアクアライン方面へと快適にクルージングする。HEVと比較するなら、スポーティというよりむしろエレガントと言いたいキャラクターなのだ。
普通に走っていればEV走行のまま木更津往復が可能だが、いろいろ試さなくちゃテストドライブの意味がない。ETCゲートからの加速でスポーツモードでのフル加速を試してみる。
全開加速ではもちろんエンジンもフルパワーを絞り出す。前後モーターと合わせた総トルクは実感としては400Nmくらい。0→100km/hは6秒前後と思われるが、スムーズで力強い加速感が気持ちイイ。
注目すべきは、エンジンの回転が先に上昇しがちなHEVに比べて、速度とエンジン回転数の関係がリニアなこと。この制御はモータートルクに余裕があるから可能となったもので、速さだけではなく加速感のクォリティがより上質なのだ。
■重くなったことによるマイナスな部分は!?
デザインは同じだが、HEVよりもアグレッシブなカラーとしているPHEVのインテリア
シャシー性能についてはクラウンスポーツHEVの試乗でも高く評価したが、そこにさらに磨きがかかっているのに正直ビックリした。
縦バネが固められているから緩やかなアンジュレーションでは路面状況をダイレクトに伝えてくるが、目地越えなどの鋭いショックはきちんと減衰されていて不快な余韻がまったくない。固めながら引き締まった乗り心地は、個人的にはトヨタ車史上ナンバーワンと評価したい。
クラウンスポーツPHEVの車重は2030kgとHEVより約200kg重くなっているが、ハンドリングは重さのハンデを感じさせず、HEVで感心した軽快なフットワークがさらにシャープになった印象だ。
スペックとしては、アダプティブ可変ダンパー(AVS)やトンネル部のブレース追加などがあるが、最終的な味つけを担当した“匠”に聞くと「膨大な電子制御パラメータの最適バランスを見つけ出すのが最大のテーマでした」とのこと。
シャシー分野のソフトウェア制御でもトヨタは”大事な何か”を掴んだようで、末恐ろしさすら感じる完成度の高さだった。
補助金が55万円あるからPHEVとHEVは実質120万円差。だったらぜったいPHEVを選ぶべき。そう実感した試乗でした。
●トヨタ クラウンスポーツRS
・全長×全幅×全高:4720×1880×1570mm
・ホイールベース:2770mm
・車両重量:2030kg
・最低地上高:165mm
・パワーユニット:直4、2.5L、PHEV
・エンジン最高出力/最大トルク:177ps/22.3kgm
・システム出力:306ps
・駆動方式:4WD
・WLTCモード燃費:20.3km/L
・サスペンション(F/R):ストラット/マルチリンク
・タイヤサイズ:235/45R21
・価格:765万円
※PHEVがRS、HEVがZのワングレード。Zの価格は590万円
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みんなのコメント
2026年辺りから投入される3種の次世代型バッテリーで、
PHEVの航続距離は200kmへと、大幅にブラッシュアップと
記されていました。
恐らく、トヨタ社では高級車の上位グレード、
またはレクサスブランドからの展開かと思いますが、
数年で陳腐化する現行バッテリー搭載モデルは、
中古市場でも厳しいと思います。
まぁ、700万円台の車を簡単に買える層も
限られるでしょうが。