■フェラーリでもっともクールなネーミング「GTO」とは
フェラーリがこれまでに生産したモデルのなかで、もっともクールなネーミングを与えたモデルといえば、過去にわずか3回のみ使用された「GTO」ではないだろうか。
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正確には「GTO=グラン・ツーリスモ・オモロガート」という言葉が意味するように、レースに参戦することを目的に誕生した車名だが、現代ではフェラーリにとって、究極のパフォーマンスと美しさを表す称号として用いられている。
2021年3月27日にイギリスのシルバーストーン・オークションに出品される「599GTO」の場合も、もちろんその速さと美しさは変わらない。
●2011 フェラーリ「599 GTO」
フェラーリ「250 GTO」、「288 GTO」に続く、3作目のGTOは、それに先行して開発された「599 GTOフィオラノ(日本名599)」をベースとしたサーキット走行専用車、「599 XX」からさまざまな新技術を受け継いで完成されたモデルだった。
開発の順番で考えれば、599、599 XX、599 GTOとなるわけだから、599 GTOは599 XXを再び公道走行可能なモデルにO=オモロガートした、599世代の最終進化型とも解釈できる。その価値はやはり大きいといわざるを得ないだろう。
599 GTOに与えられた革新的な技術は、車体のあらゆるところに見られるが、代表的なものはハンドリングと電子制御の融合を目指した新開発の電子制御システムだった。
新たなスペックのサスペンションにはリア・スタビライザーのみならず、よりハードなSCM2(第2世代磁性流体サスペンション・システム)を搭載。テールスライドを抑制するVDCやF1-Trac(トラクション・コントロールシステム)との連動で、鋭く正確なコーナリングを実現することに成功した。
エアロダイナミクスも、ベースとなった599と比較すると大幅に向上している。200km/h時のダウンフォース量は実に144kg。さらにダウンフォースのみならず、冷却システムの高効率化に至るためのさまざまなエンジニアリングが展開されている。アンダーボディの本体は新デザインとなり、新型のダブルカーブ・ディフューザーなどとの組み合わせでダウンフォースの最適化が図られている。
搭載されるエンジンは、5999ccV型12気筒自然吸気エンジンとなる。最高出力670ps、最大トルク620Nmと、最高出力の比較では599XXに対してわずかに30psのハンデを負うのみである。逆に599比でのアドバンテージは50ps。GTOの名に恥じないスペックといえる。
■右ハンドル仕様でもレッドブック付に価値がある
シルバーストーン・オークションは、今回「レースレトロライブ・オンラインオークション2021」に、2台の599 GTOを出品する計画だ。599 GTOの生産台数はGTOとしては大きな数字とはいえ、わずかに599台のみである。そのほとんどが大切なコレクターズアイテムであるため、2台を揃って出品するのは至難の業だ。
●2011 フェラーリ「599 GTO(クラシケ)」
1台はその599台のなかでも、わずか60台しか存在しないという右ハンドル仕様。新車当時のデリバリー先はイギリスで、2011年4月にノッティンガムのフェラーリ・ディーラーにデリバリーされている。
さらにこの599 GTOは、オークション出品前にフェラーリ・クラシケの認証を受けており、その証である通称レッドブックも取得している。こちらもオークションではさらなる価値を生み出すことのだろう。走行距離は約1万6000kmだ。
もう一台の599 GTOは、2010年に日本へとデリバリーされた左ハンドル仕様となる。走行距離は2577kmの低走行の個体だ。
2015年に日本からイギリスへと輸出されたこの個体は、フェラーリ・スペシャリストとして有名なDKエンジニアリングを通じて、シルバーストーン・オークションによって購入されたことが判明している。
ロッソ・コルサのボディカラーはもちろんのこと、完全なアルカンターラ・インテリアなど、そのコンディションは走行距離の少なさからも想像できるように新車同然である。シルバーストーン・オークションは、この599 GTOを「私たちが最近見たなかで最高のコンディションカーの1台です」と評価している。
同じオークションに出品される2台の599 GTO。マーケットの規模から見ても、人気は左ハンドル車に集中しそうな気配だが、コレクターズアイテムとしてはレッドブック付きの右ハンドルもその価値は捨てがたいところだ。
果たして最終的な落札価格は、レッドブック付きの右ハンドル仕様の599 GTOが、予想最低落札価格のほぼ上限となる50万625ポンド(邦貨換算約7550万円)、左ハンドルの599 GTOが予想最低落札価格の下限とほぼ同じ40万6125ポンド(邦貨換算約6130万円)と、1000万円以上の差が開いた。英国では右ハンドルでも落札価格に関係ないことがよく分かるオークション結果であった。
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