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鈴鹿F1日本GP開催継続へ向け一歩前進も、まだ合意には至らず「クリアできていない要素がある」:モビリティランド山下社長インタビュー

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鈴鹿F1日本GP開催継続へ向け一歩前進も、まだ合意には至らず「クリアできていない要素がある」:モビリティランド山下社長インタビュー

 今年30回目のF1日本GPを開催する鈴鹿サーキット。しかし、その開催契約は今年限りで満了することになっており、来季以降日本でF1が行われるかどうかは、まだ未定の状況である。

 来季以降の開催について鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの山下晋社長は、3月の時点で「非常に厳しい状況です」と語っていた。しかし、その後の交渉で状況は好転。6月末に取材した段階では、「開催延長の可能性は60%」と明かしていた。

FOMの意識改革が日本GP開催延長に導く?:モビリティランド社長インタビュー(6月実施)

 状況が好転した理由、それはFOMの姿勢が大きく変わったことにあった。F1のオーナー企業は、昨年からリバティ・メディアが務めている。これにより、非常にポジティブな議論を進めることができるようになり、親身な協力も得られるようになったという。

 山下社長は、先日行われたイギリスGPの際に、開催地のシルバーストン・サーキットを訪問。F1のチェイス・キャリーCEOも交えた会合を行ったという。

「シルバーストンに行って、チェイス・キャリーさんと打ち合わせを行い、来季以降の契約について、話をしました」

 そう山下社長は説明する。

「FOMがやっている方向性については基本的に同意しているし、それに沿って日本GPの観客動員数も増やしていきたいとお話ししました。そして、今の状況についてもお伝えしました」

 来季以降の開催契約を結ぶ最低限の条件として鈴鹿サーキットは、今年の観客動員数が昨年よりも増えることを挙げていた。そして現段階では好調に推移しているという。

「日本GPの券売がスタートしてから今まで、前年以上の売れ行きで推移しています。販売開始当初だけかと最初は恐れていたんですが、今も伸びをキープしています。これは、様々な施策がお客様に評価された結果だと思います。そしてFOMがやっていること、彼らに協力してもらって行えたことの効果も出ていると思います」

「お子様や高校生・大学生の料金を大幅に安くしたことの効果はあったと思いますが、11種類の中からデザインを自由に選べる(プラスチック製の)アニバーサリーチケットも大きく貢献してくれていると思います。それにより、30回記念ということを強く認識していただいて、記念として鈴鹿にお越しいただくお客様もいらっしゃると思います」

 このチケット販売の好調な流れを、FOMも後押しする予定だという。

「彼らとしても、この流れで着地まで行こうと言ってくれました。そして彼らからの提案として、9月にFOM主催のイベントを、日本でやろうとしてくれています。まだ詳細や規模も分からないですが、彼らのコストで、プロモーションをやると言っていました」

「日本GPの観客数が増えるのはマストだと、彼らも言ってくれています。ですので、彼らとしてもできることはやるよ……ということの一環だと思います。どんなことをやるのか、まだ想像もつかないのですが……。とにかく、今年の日本GPについて、彼らができる範疇のことは間違いなくやろうとしてくれているという風には認識しています」

 先日のインタビューの際にも語っていたが、現在のFOMの協力体制には、大いに可能性を感じていると山下社長は言う。

「F1日本GPを継続していくためには、お客様に評価していただくことが重要なんです。最盛期と比べて、昨年のお客様の数は、半分以下になってしまいました。日本GPの価値が低下した結果、残念ながら今の状況があります」

「色々なご意見はありますが、レースが面白くなくなったのかというと、そうではないと思います。レギュレーションはこれまでも変わることがありましたし、F1マシンも今の方が速くなっている。おそらく、それ以外のところで、日本GPの価値を上げていかないと、お客様には来ていただけないと思います」

 そう山下社長は説明する。

「もちろん、レースがもっと面白くなったり、日本人ドライバーがデビューして活躍してくれたりすれば、我々にとっては後押しになります。でもそれは神頼みに近いところがあって、我々がやることとは別の話です。日本GPのレースの魅力を際立たせるための周辺イベントを実施するのは我々の役割ですから」

「そして今のFOMは、日本GPの価値を上げるためにこれをやりたいという我々の提案に対して、最初からノーと言うことは一切ありません。契約を延長することができたら、そこは交渉できそうだという感触を持っています」

 ただ、今回のシルバーストンでの会合でも、2019年以降の契約は合意に至っていないという。

「まだ合意には至っていません。FOMのスタンスについては評価していますし、券売が好調なこともあり、将来に向けた手応えも感じています」

「ただ、今年券売が仮に2割増えたとしても、我々の収支は昨年とほとんど変わりません。乱暴な言い方をすると、今の倍になって、ようやく収支を語れるというレベルです。そういうレベルの話だということは、FOMも認識してくれています」

「日本GPは世界で唯一、民間企業が所有しているサーキットで、民間企業が丸抱えで行っているF1なんです。行政からの金銭面でのサポートはいただいていませんから、サーキット内の売り上げとスポンサーさんからの売上だけでやっているんです。なので収支が合わなければ、我々にはできないと言いました」

「そのためには、権利関係の中でもう少し可能性を相談させて欲しいと言っています。例えば、サーキット内の看板の売上の中で、我々にしかアプローチできないようなターゲットについては、我々の権利としてくれないか……というようなことです」

 この権利の”割り振り”を決める作業に、非常に時間がかかっているという。

「ものすごく細かい分け方をしようとしています。この作業にはあと1カ月か2カ月くらいはかかりそうです」

 また今回まとめられている新たな契約は、できる限り明確化することを、双方が望んでいるという。

「過去のFOMとの契約は、ある程度要点しか書いてありませんでした。そして契約書に書いていないことの決定権は、全てFOMが持っていたんです。つまりグレーゾーンがたくさんありました。ですので新しい契約は、できる限り明確にしようとしています。我々もそうですが、彼らもそれを望んでいます。彼らも株主に対しての説明責任があるので、明確な契約を求めているんだと思います」

 かなりの歩み寄りを見せる新生FOM。ここまで聞くと、延長契約の締結は時間の問題のようにも思える。しかし、まだそこまでは至っていないと、山下社長は語る。

「お客様に価値をしっかり伝え、グランプリに多くの方に来ていただけるようになり、チケット以外の収入の手立てが少なくとも可能性として担保できるようになれば、あとは我々が頑張るだけです。いくら頑張っても、絶対に利益が出ないイベントを、後輩に残すわけにはいきませんから。可能性があるイベントとして継続できるような形にしていきたいと思っています」

「でも、我々が要求している権利について、『やはりそれは無理だ』とFOMが言い出す可能性もゼロじゃないと思っています。現段階で全てのことが、合意できたわけではありませんから。そうなった時には厳しいことになるかもしれないという考えは、まだ持っています」

「FOMも我々の要求については『それはそうだね』と言っています。お互いの認識は合っています。でも彼らも民間企業としてF1というイベントを運営しています。収入を下げてしまえば、F1を運営できませんからね」

 とはいえ、今回の会合でまた、契約延長に向けて前進したのも確かなようだ。

「(延長の可能性が)6割から後退したという認識はありません。少しは好転していると思います。6割2分なのか3分なのか……そんなところだろうと思います。まだクリアできていない大きな要素もあるので、7割には達していないです」

 当初の目論見通り、9月には開催延長の可否を発表したいと語る山下社長。それまではあと2カ月……ここから、交渉は大詰めを迎える。

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