海外におけるクラウン販売の歴史
2015年10月にマイナーチェンジした15代目クラウンのCMを覚えているだろうか?
【画像】米国走るクラウンと歴代クラウン【初代から16代目まで】 全103枚
トヨエツこと俳優の豊川悦司氏が登場するCMで「クラウンは日本で買いましょう」というコピーが印象的だった。
これはクラウンが国内専売車種であること、純粋に日本の高級車市場をターゲットにしたクルマであることを意味する。
長年、クラウンを好むオーナー層にたいして、日本のVIPのためにだけ製造された高級車であることや、日本での使い勝手、日本の道路事情に配慮した設計、日本のオーナーのことだけを考えて作った高級車ですよ! というアピールだ。
1960~1970年代にはアメリカなど海外にも輸出され販売されていた例はあった。
例外として中国では1998年に四川トヨタ自動車有限会社(現:四川一汽トヨタ自動車有限会社)、2000年に天津トヨタ自動車有限会社(現:天津一汽トヨタ自動車有限会社)といった合弁会社が設立されており、2005年には中国工場で12代目クラウン「S180」の生産が開始されている。
長い間、日本でしか生産されていなかったクラウンにとって非常にめずらしい例だった。
なお、中国生産のクラウンセダン「中国名:皇冠」は2021年春まで生産されていた。
生産終了後、中国で「クラウン」の名前を冠して「王冠マーク」を付けたクルマは「クラウン・クルーガー」(SUV)、「クラウン・ヴェルファイア」(ミニバン)の2モデルに引き継がれている。
米国進出もパワー不足に故障だらけ
2022年7月15日に発表された第16代となる新型クラウンは「初めて」尽くしとなった。
それは、
(1)セダンに加えて、SUVなど合計4車型を発表 (地域によって販売されるモデルが異なる)
(2)4車種の中にはクラウン初のBEV(純電気自動車)が含まれる
(3)長らく国内専用車だったが世界約40か国で販売予定のグローバルモデルとなる
この中で世界を騒がせているのは言うまでもなく(3)である。
いまでこそ、「クラウンはアメリカ市場への足掛かりを作った最初の日本車」として認知されているが、実際、アメリカに上陸したばかりの頃は、故障が多発し、またパワー不足もあって大変な状況だったという。
それらはトヨタ自動車75年史の中でも触れられている(以下、トヨタ自動車75年史「米国への進出」より引用)。
「1957(昭和32)年8月、トヨタ自販の加藤誠之常務ら3人は、米国へのトヨタ車輸出の先遣隊として渡米し、販売会社の設立に着手した。日本から送られてきた見本車のクラウンとクラウン・デラックスの2台を受け取り、販売店へのお披露目を兼ねながら試験走行をおこなった」
「トヨタ自工のテクニカルセンターに、一周2kmのテストコースが完成したのは、その前年の1956年9月であり、本格的な高速耐久試験をおこなっていない状態で、クラウンを米国に持ち込むには無理があった」
「当初から危惧されていたことではあったが、高速道路を走っていると、突然エンジン音が騒々しくなって出力が低下し、米国で販売できる性能ではなかった」
「1958年6月にはクラウン・デラックス30台が船積みされ、本格的な対米輸出が始まった。しかし、懸念されていた性能・品質などの問題はすぐに顕在化してくる。高速走行時の出力不足、高速安定性の不備、激しい騒音と異常な振動、変形による部品の破損などが発生し始めた」
「また、アメリカでの販売が急増する欧州製コンパクトカーに対抗して米国メーカーが相次いでコンパクトカーを多数発売したことなども関係して、1960年12月にクラウンの対米輸出はいったん中止された」
「2代目クラウンも投入されたが結局、1972年に販売を終了。クラウンの長い歴史の中でアメリカでの販売はわずか14年だったのである」
クラウン復活で全米が沸いている?
そこから50年経過した2022年、16代目クラウンにてついにアメリカでの販売再開が明らかになった。
7月15日に発表されたのはクロスオーバーモデルで、フルサイズセダンのイメージを一新する大胆な新デザインや快適性を備えたモデルとして紹介された。
すでに2021年5月に「トヨタ・クラウン」として商標が出願されていたため、「近々、アメリカでもトヨタクラウンが販売される!」と、コアなファンの間ではじわじわとそのうわさが広まっていったという。
7月15日にアメリカでも発表セレモニーがおこなわれた。米国トヨタ公式の動画はユーチューブなどで見ることができる。
動画では、
・2022年後半にディーラーに到着する予定である
・アメリカで販売されるトリム(グレード)は、XLE、Limited(リミテッド)、Platinum(プラチナム)の3グレード。全グレード四輪駆動(AWD)モデル
・RAV4コンパクトSUVと同じハイブリッドパワートレインを搭載する
・Platinum(プラチナム)は、新しいタンドラピックアップや大型SUVのセコイヤと同様に、経済効率よりもパフォーマンスを優先するモデル。ハイブリッドシステムにターボチャージャーを追加して、より多くのパワーを発揮する
などの内容が公表された。
発表会の動画に対する反応はおおむね高評価なコメントが並んでいる。
「トヨタが世界一であることはこの新しいクラウンを見ればわかる。アメリカでの販売復活大歓迎です!」
「美しい、本当に美しいクラウン。車高のほどよい高さもいい。セダンとSUVの間に位置している」
「アメリカで50年ぶりの販売!感動的だ。(現在のフラグシップである)トヨタ・アヴァロンに取って代わることになるのだろう」
「トヨタはハイブリッドシステムでわたしが信頼する唯一のメーカー。今度のクラウンもすごそう」
米国トヨタファンが残念に思うワケ
世界中で人気と信頼を長年得ているトヨタ車だが、とくにアメリカでの人気はすさまじい。
近年、セダン、コンパクトカー、SUVいずれのカテゴリーでも1位はトヨタだ。
理由はハードの信頼性、デザインの良さ、ディーラーの対応やアフターフォローの体制、カスタムパーツが豊富なこと、などなど。
とくにSUVの国アメリカでRAV4は圧倒的な支持を得て2021年は40万台以上が販売された。
そして2021年アメリカでのトヨタ新車販売台数はGMを抜いて233万台を記録。「史上初」の首位となった。
アメリカで外国メーカーが販売の首位になることも前代未聞の出来事である。
ここにきてクラウン復活ともなれば、アメリカでのトヨタ車人気がさらに盛り上がりそうだ。
ところで、新型クラウンの販売で盛り上がる一方で、旧車クラウンオーナーたちはどう思っているのだろうか?
今、アメリカは空前の「JDMブーム」。
JDM とは「日本国内専用モデル」の意味もある。
つまり、日本でしか販売されてこなかったクラウンは同じく日本市場だけで販売されてきたスカイラインやセンチュリーと同様、JDMファンにとっては神格化されているといってもいい。
それでいて25年ルール適用のクラウンはスカイライン系に比べて価格がそれほど高騰しているわけでもなくお買い得なJDMといえるだろう。
「クラウン復活」について、TORC(トヨタ・オーナーズ・レストア・クラブ)の代表であるテリー山口さんは以下のように印象を語った。
TORCには70年代のクラウンオーナーも複数名がメンバーとなっており、いずれも美しく手入れされている。
「盛り上がっていますね! わたしはあまり関心がなかったのですが、まわりのクラウンファン、トヨタファンたちは大興奮ですよ! トヨタの歴史をつかさどる王者クラウン、クラシックはもちろん新しいモデルも、トヨタの代表モデルになっていくのではないでしょうか?」
「ですが、今回の新型クラウンには王冠マークがないと聞いていますので、それを残念がるトヨタファンも少なからず存在しているようです」
「日本を代表する歴史ある高級車クラウンの象徴でもある王冠マーク。これがついていないことを残念がる人たちが出てくるでしょう」
そう。今回のクラウン、海外モデルには原則として王冠マークがつかない……。
しかし、SNSのコメントの中には「エンブレムがないのは寂しいけど、日本からクラウンバッジだけ購入してつければいいんじゃない? クルマを輸入するよりはるかに簡単だよ! クラウンというクルマが50年ぶりにアメリカで正規に販売されることの価値は大きい」という前向きなコメントも散見された。
旧車界隈での有名人はどう見る?
最後に、テリー山口さんにご紹介いただいた「すっごいクラウンに乗ってるオーナー」に新型クラウンについて聞いてみた。
オーナーはアメリカ旧車界隈で超有名人のジャネット・フジモトさん。
彼女のクラウンは1970年型「MS55」と呼ばれる左ハンドル車で、エンジンは92年型レクサスSC300から移植した2JZに換装している。クラウンにマッスルカーを超える改造を施している。
ジャネットさんは静かに語る。
「古い時代のクラウンの魅力は、ユニークであり、他にない個性的なセダンです。ここカリフォルニアでは誰も持っていません」
「クラウンが50年ぶりに米国で販売されることについてはなつかしく、そして感傷的な思いがあります。だけど、アメリカではクラウンを知らない人がほとんどなので、新しいトヨタのフラッグシップだと思うでしょう」
「新型クラウンはとてもモダンになったクルマです。現代的で新しい時代を象徴するクルマになりました。でも、古く貴重なクラウンを所有するわたしとしては、単に王冠マークのバッジをつけるということではなく、先代までのクラウンから継承されることが、もう少しあってもよかったかなと思います」
アメリカでは50年ぶりの復活。
日本のオーナーでも驚く変貌ぶりゆえ、アメリカのトヨタファンにしてみれば、かつての面影など微塵もないと感じるだろう。
ただ1つ共通することがあるとしたら、それは「高級車としての品格」そして「放たれるオーラ」だろうか?
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みんなのコメント
いや、クラウンというのは、そんな敷居が高いものでなく、初代からタクシーとして使われることを前提に開発されており、もっと庶民的なクルマでしたね。
銀座やススキノで、酔っぱらいの親父を乗せたり、結婚式場に向かう両親と花嫁を乗せたり、雑多な人間模様があったわけです。
シロウトが書いたのか?
豊川悦司氏のCM 14代目イナズマクラウンだよ。 適当な記事。