前回に続き、BYDジャパン劉社長のインタビューをお届けする。SUVの「ATTO3」、コンパクトな「ドルフィン」、セダンの「シール」と矢継ぎ早に新型車を導入することにはどんな意図があるのだろうか。
3車種展開は本気度の証し
BYDの競争を勝ち抜く「スピード」とは?日本勢はこの早さをキャッチアップできるか!?
BYDが2024年に日本発売予定とするBEVセダン「シール」。いかなる戦略のもとにシールの導入は決定されたのか。
BYDジャパンの社長であり、同グループでアジアパシフィックのオペレーションを統括するゼネラルマネージャーを務める劉学亮(Liu Xueliang)氏へのインタビューを通して、その戦略を明らかにする。
BYDオートジャパンでは、2023年1月の「ATTO3」、9月の「ドルフィン」と日本に導入。シールは当初23年内と言われていたが、24年に延期。それでもおよそ1年の間に3車種を発売だ。
「車種を増やしている理由は、さき(インタビュー第1回)にも言ったように、多様な嗜好をもつユーザーへの対応。1車種とか2車種じゃ、追いつきません。開発はそれを見込んでやっているので、技術もデザインも、バリエーションに対応しているのです」
多様性とは何を意味するのか。
「価格、サイズ、デザイン、仕様……すべてが含まれます。中国で初めてクルマを買う層はわりと若いんです。彼らの嗜好性は、とりわけ多様であり、どんどん変わっていくので、多品種展開で対応していく必要があります」
日本の市場でもクロスオーバー型のATTO3とドルフィンに加えて、クーペライクでスタイリッシュなセダン、シールと、広いラインナップをいきなり展開することになる。
「日本で、3車種、そしてその先にさらなる新型車も考えている理由は、本気度を見せたいからです。1車種を探り針のように市場に投入して、短期間で成功の可能性の結論を出して、よくなければ撤退、なんてことをしません、という意思表示です」
時代の一歩先をいき、10年後に世界のトップへ
劉GMは、同時に、BYDオートの製品の大きな特徴として「依然として会社の原点は電池の開発製造」であることを強調。
「BYDは、自動車に進出する前は、携帯電話を開発していました。電池と通信。いまのBEVにとって重要な技術の蓄積がしっかりあるんです。なので、従来どおりエンジン車を黙々と作っているのではありません。最新のソフトウェア技術をしっかり組み込んだ、新しい世代のプロダクトなんです」
シールでは、ハードウェアも注目点。セル・トゥ・ボディといって、駆動用バッテリーを構造材として使用する設計。今後、同様の構造を採用するメーカーは増えていくと思われるが、BYDはいち早く実現した。
最新は「e3.0プラットフォーム」。シールを例にとると、プラグインハイブリッドのパワートレインにも対応するフレキシブルプラットフォームだ。
劉GMは「ただしBYDでは、ICE(エンジン車)からBEV(バッテリー駆動のピュアEV)を開発するのでなく、BEVは最初からBEVとして設計します」と語る。
今回、珠海で試乗できたシールもBEV。ツインモーターによる強大なトルクと、走行中は4輪のトルクをコントロールして走行安定性を図る「iTAC(インテリジェントトルクアダプションコントロール)」なども搭載している。
BYDでは、上記のとおり、シールのプラグインハイブリッドモデルも生産している。23年、BEVとPHEVの比率は5対5になると見込まれる。BEVが増えている。純粋なICE(エンジン車)の生産はすでに止めたBYDでは、将来完全なBEVメーカーを目指すという。
「充電ネットワークを含めて、地域ごとに投入するモデルを決めていくのが、私たちの製品戦略です。日本には、BEVのみを展開するのがいまの計画です」
ただし、”私たちはこれでなくてはいけない”という考え方はしません、と劉GM。
「いろいろ考えすぎると、たぶんBYDにチャンスはないんです。市場はすごいいきおいで変わっていくので、受け身にだけはならないようにしたい。一歩先に行っている企業が、10年後には世界の頂点に立っているかもしれません。それを肝に銘じてます」
アグレッシブな姿勢が、小気味よいBYD。日本でもこのあと、さらに多様なモデル展開も期待できそうで、楽しみである。
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みんなのコメント
家電もそうですが、10年持てば御の字だーと言う業者が
殆どです。全部中国製だからだ。このEVも同じ事が言える。
EVの命はバッテリーです。こいつが10年持たないと言わ
れています。TOYOTAが研究開発し完成させた全固体電池
は、10分完全充電、1200km走行可能という優れ物です。
これでこそEVの真価が問われるのです。今は出始めでまがい
物だらけです。呉々も紛い品にご注意下さい。