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【なぜクラウンだけが生き残れるのか】日本が誇る超名門車 人気の秘密

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【なぜクラウンだけが生き残れるのか】日本が誇る超名門車 人気の秘密

 日本を代表する高級セダンといえばクラウン。1955年の誕生以来、15代、64年にわたって生き続けている。

 2019年1~6月の販売台数を見ると、2万1783台、月平均で3631台と他のセダンを寄せ付けないほどの人気を誇っている。方や爆発的な人気を誇ったマークXは2019年12月で生産終了が伝えられている。

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 こうした日本のセダン不振が続くなかで、なぜクラウンだけが人気なのか? クラウンだけが持つ魅力があるから人気なのか?

 そこで、クラウンの人気の秘密について、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が迫ってみた。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWEB編集部

(画像ギャラリー)日本のセダンの新車販売台数、心に残る歴代クラウン&マークII三兄弟ほか

500万円級のセダンとしては大ヒット

大胆なエクステリアの変更、さらにはニュルブルクリンクでの開発などクラウンファンが離れないか不安を感じたメディアも多い。しかしふたを開ければ長年のブランド力は強かった

 最近はクルマの価格が全般的に高くなり、平均所得は伸び悩んでいるから、小さなクルマに乗り替えるユーザーが増えた。新車として売られるクルマの40%近くが軽自動車で、コンパクトカーも20%前後に達する。

 その結果、価格の高い高級セダンが売れゆきを下げた。ここ最近の1ヵ月の登録台数は、スカイライン(マイナーチェンジ前)やレクサスLSが300台前後、フーガとアコードは100台前後、カムリは相応に多いが2000台前後だ。N-BOXが2万台以上も売られることを考えると、高級セダンの登録台数は圧倒的に少ない。

 ただし、そのなかで、例外的に堅調な売れ行きを見せるのがクラウンだ。2019年上半期(1~6月)には、1カ月平均で3631台を登録した。販売ランキングの上位には入らないが、ハリアーやヴェルファイアよりも少し多い。売れ筋の価格帯が500万~600万円のセダンでは、立派な販売実績だ。

クラウンだけが好調な理由

 高級セダンなのにクラウンだけが好調に売れる理由は、まず長い伝統に支えられた基幹車種であるからだ。初代モデルを1955年に発売して以来、60年以上にわたり高級セダンの主力車種として発展してきた。

 高級セダンは実用的な軽自動車やコンパクトカーと異なり、嗜好品の性格も併せ持つ。伝統やブランド力が重要だから、セドリック&グロリアをフーガに変更するような変遷をたどると、高級車の価値が振り出しに戻ってしまう。

 クラウンとともにトヨタの高級セダンを担ってきたマークXが2019年12月をもって生産終了することが発表された。1968年に前身モデルであるマークII(コロナマークII)として登場以来、一時代を築いた伝統的なFRセダンが50年にわたる生涯を閉じることになった。

クラウンとマークXの違いはなにか?

マークXは2019年12月で生産終了することが明らかになった

 セダン不振という厳しい状況のなかで、マークXはなんとか生きながらえてきたが、結局、同門のクラウンやカムリ、そしてレクサスISとの競合、メルセデスベンツCクラスやBMW3シリーズのほか輸入車セダンの攻勢、高級ミニバンなどに顧客が流れていくことを止められなかった。

 かつてはマークII/チェイサー/クレスタ三兄弟の全盛期といえる1990年3月には、単月でマークIIが3万959台を販売。チェイサーが1万1082台、クレスタが1万5488台売っており、3兄弟合計で5万5000台/月を超えていた時代もあった。

 しかし、これだけセダン市場が縮小すると、やはり高級セダンはブランド力がないと売れない。確かにかつてのマークIIにはブランド力があったが、現行のマークXには見栄を張れるだけのブランド力がなくなってしまった。

 バブル時代に「マークIIは課長、クラウンは部長」というヒエラルキーも存在したが、そのヒエラルキーにもマークXは入らない存在になっていたのだ。

 高級セダンを日本で買おうとする場合、たいていの場合、選択車種に入るのはクラウン、レクサス、BMW、メルセデスベンツ、アウディから選ぶのではないだろうか。

 伝統を守りながら着実に進化させるクルマ作りも、クラウンが人気を得た理由だ。従来型から乗り替える人達の気持ちを考えて、基本的なデザインや運転感覚は大きく変えない。

 しかし時代の変化に応じた新しい機能は必ず採用して、動力性能、安定性、衝突安全性、使い勝手などを向上させてきた。

 その成果として、クラウンは完璧な信頼性を築いた。具体的にいえば、新しいクラウンが登場すると、高額商品なのに実車を見ないで注文するユーザーが多い。グレードの選定まで、セールスマンに任せることがあるという。

 これはクラウンという商品、取り扱いディーラーのトヨタ店とセールスマンに、ユーザーが万全の信頼を置いている証拠だ。

 ちなみにトヨタは海外向けのレクサスを日本へ持ち込み、ブランド力を高めようとしているが、これは難しい。実車を見なくても安心して注文できるクラウンを造るトヨタこそ、日本では最高のブランドになるからだ。

 以上のように、クラウンは日本のトヨタを象徴する中心的な存在で、求心力の役割も果たしてきた。「クラウンに乗ればトヨタがわかる」という意味だ。

 このような存在だからクラウンを支持するユーザーは多く、取り扱いディーラーのトヨタ店も、期待に応えて販売に力を入れてきた。高級セダンで唯一好調に売れるのも納得できる。

直近の販売台数は少し変化してきた

 しかしクラウンの直近の販売状況を見ると、少し変化してきた。2019年6月の登録台数は2740台で対前年比は35.0%減少、7月は2490台で65.5%減少、8月は2326台で59%減った。

■2019年1~8月のクラウン新車販売台数
1月/4660台(318.1%)
2月/3802台(209.2%)
3月/5748台(212.6%)
4月/2442台(191.5%)
5月/2461台(283.9%)
6月/2740台(65.0%)
7月/2490台(34.5%)
8月/2326台(41.0%)
※カッコ内は対前年同月比

 現行クラウンの発売は2018年6月だから、2019年6月以降は、発売直後の登録台数と比較される。

 発売直後はフルモデルチェンジを待っていた顧客が一斉に新型へ乗り替えるから、登録台数が急増する。そのために1年を経過すれば対前年比がマイナスになるのは当然だが、登録台数が半分以下まで下がるのは極端だろう。

 先代クラウンは2012年12月に発売された。発売後1年少々を経過した2014年1月の対前年比は1%の減少で、2月は43%、3月には36%減った。先代型も大きく減っていたが、現行型ほどではない。

 現行クラウンは外観のデザインや運転感覚が欧州車風で、伝統あるグレードのロイヤルサルーンを廃止した。売れ筋は直列4気筒2.5Lのハイブリッドを搭載するスポーティなRSだ。

 販売店からは「現行クラウンでは、BMW3シリーズなどの欧州車から乗り替える新規のお客様が増えた。その代わり従来型のお客様がグレード選びで困っている面もある」という。

 クラウンを購入するユーザーの平均年齢は、先代型の時点で65~70歳に達していた。今後も高齢化が進むと、いつか需要が急落する心配もある。

ユーザーを若返えさせる対策が販売面に裏目に出た?!

6ライトと呼ばれる、欧州でいうところの4ドアクーペ(GT)デザインを採用

 そこで現行型は、プラットフォームをレクサスLSと同じタイプに刷新して、走行安定性を高めた。運転するとスポーティな印象で、長年にわたる持ち味だった乗り心地の柔軟性は薄れた。

 外観はサイドウインドウが3分割された「6ライト」と呼ばれるスタイルだ。リヤウインドーの角度は寝かされ、真横から見ると5ドアハッチバック風と受け取られる。トランクフードをしっかり見せた従来型に比べると、見栄えがかなり変わった。

 このようなユーザーを若返らせる対策が、販売面で裏目に出たともいえるだろう。今後のクラウンは、現行型の路線を踏襲しながら、乗り心地を柔軟にするなどユーザーの希望に沿って修正を加えていくと思われる。

 アルファードの影響も大きい。以前は社用車を含めてフォーマルなクルマは、クラウンを代表とする高級セダンだったが、今はアルファードのようなLサイズミニバンを使う機会も増えた。

 販売店からは「TVのニュースなどで、政治家や企業のトップがアルファードに乗る様子が報道され、イメージが変わった。

 クラウンからアルファードに乗り替えるお客様も少なくない」という話が聞かれる。ミニバンは新しいファミリーカーとして普及を開始したが、20年以上を経過した今では、高級車の分野にも踏み込んできた。

 そうなると高級セダンの定番だったクラウンも、アルファードに脅かされる。静かで乗り心地が快適というだけでは、抜本的に車内の広いミニバンのアルファードにかなわない。

今後クラウンが生き残る道は?

クラウンは世界の高級セダンを相手に今後どのようにして生き残っていくのか?

 そこで現行クラウンは、ミニバンでは得られないセダンの価値を追求した。セダンはミニバンに比べて重心が低く、後席とトランクスペースの間には隔壁があるから、ボディ剛性を高めやすい。

 そうなれば走行安定性、乗り心地、静粛性など走りの質を向上させられる。現行クラウンはこの点を重視して開発され、アルファードとは違うメリットを備える。

 ただし進化の方向がメルセデスベンツEクラスやCクラスに近く、アルファードと比較されなくても、欧州車との勝負になってしまう。これはまた不利だから、今後は修正するだろう。

 やがて以前のクラウンのような日本車ならではの魅力を備え、なおかつ走行性能は欧州車並みに優れた高級セダンに発展する。

 心配なのは、2020年5月に、トヨタの全店が全車を併売する体制に移行することだ。日産やホンダの前例を見れば分かる通り、全店が全車を扱うと、売れ筋車種が一斉に低価格化する。

 クラウンは特別な存在だから一定の売れ行きは保つと思うが「トヨタ店のクラウン」という販売店との強固な結び付きは薄れる。この不利を補うには、トヨタ店と同様の入念な顧客サービスを全店で展開する必要がある。

 全店併売になれば、販売系列は事実上撤廃されたことになるから、販売店舗のリストラも進む。日本のトヨタの象徴とされるクラウンをどこまで守れるか、トヨタの国内市場に向けた心意気が試されている。

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