一部改良を受けた「マツダ3セダン」のガソリン・モデルに、小川フミオが乗った。今や希少な国産セダンの魅力を考える。
もはやライバルはトヨタ・カローラくらい
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マツダ3セダンの一部改良モデルが、2024年10月から発売開始された。そして12月、20Sツーリングの試乗が叶った。
今では数少ないセダンだけれど、均整のとれたボディデザインと、よい乗り心地などこの車型にしかない魅力がしっかりあるモデルだ。
24年8月に発表された今回のマイナーチェンジの内容は、概ね下記の通り。ファストバックと同じだ。
・「アマゾン・アレクサ」搭載
・「マツダ・オンラインナビ」搭載
・後席の乗員取り残しなどを注意喚起する「リアシートアラート」採用
「アレクサ」では、エアコン、シートヒーター、ステアリングホイールヒーター、電話の受発信、ナビゲーションの目的地設定が音声操作できる。日本では、BMW、ミニ、フォルクスワーゲン、アウディ、日産(の一部車種)がすでに搭載している。
マツダ3では、従来のインフォテインメントシステムのOSを改良するより、アレクサ搭載を選択している。コストも時間もかかるOS開発でなくアレクサを選んだ、というのは、マツダにとっては正しい判断だった気がする。
ただし、車内のインフォテインメントという観点からすると、モニター画面が小さいのは惜しい。Boseと共同開発したオーディオの音質もちょっと惜しい。ただし、ドライビングという点では、適度なパワーがあるし、静粛性もけっこう高い。バランスがとれた出来なので、こちらを優先するという考えもおおいにアリ。
1997ccエンジンは、115kWの最高出力と199Nmの最大トルクを発揮する。運転すると、メルセデス・ベンツの「Eクラス」ですら2.0リッター(ただしターボ装着)という昨今のスタンダードに照らしあわせると、非力感はいなめない。
自動車界はBEV(バッテリー駆動のピュアEV)に向かうという、過去数年間の判断が、エンジン開発への投資をためらわせたのかもしれない。そこはこの新しいマツダ3セダン20Sツーリングでも、アキレスのかかとのように思われる部分だ。
マツダ3セダンは、全長4660mmの車体を、2725mmのホイールベースに載せている。グッドデザインはコンパクトに見えるというのが自動車の定石で、このクルマも実際のサイズより小柄に見える。
乗れば、パッケージングの恩恵を受けられる。前後席ともにスペースに余裕があるし、空調がさらに効きやすい車内空間をもつセダン車型は、SUV全盛の今にあっても、大きなメリットだ。
サスペンションの動きも、セダンの方が自由度は高くなり乗り心地に貢献する。今回の20Sツーリングはサスペンション・ダンパーの設定のせいか、路面の凹凸を越えるときのショックがやや大きめとは感じられたが。
今の日本で、ほぼ同等のクラスに属するセダンを探すと、トヨタ「カローラ」ぐらい、と、かなり寂しい。でも比較的若いユーザーが、古い日本のセダンを好んで乗っている状況もあり、セダンの未来が真っ暗……というわけでもなさそうだ。
セダン好きの私などは、なので、マツダ3には大いに期待してしまう。できれば、マツダ3ファストバックにある、e-SKYACTIV X 2.0+6MT仕様が設定されて、かつ価格が¥3,000,000台になると最高なんだけれど……と、夢想するのだった。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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