目指すのは「小型モビリティロボットで持続可能な移動を実現」
8月8日、広島市に本拠を置き、「次のテスラを目指す」というKGモーターズが東京都世田谷区の二子玉川蔦屋家電において、小型モビリティロボット「mibot(ミボット)」を発表した。
代表取締役CEOの楠一成氏は、「小型モビリティロボットで持続可能な移動を実現する」をコンセプトに、「誰もが、安全に、快適に、手ごろな価格で自由に移動できる世界」を目指すという。小型モビリティロボットというと「?」と思われる人もおられるかもしれないが、簡単に言ってしまえば電動の原付ミニカー(四輪車)だ。
現在の日本においては、クルマで移動するときの使用距離は、約7割が10km未満だという。そして、移動するときの乗車人員は、約7割が1人乗車で、さらに、クルマを利用している人の約5割は、高速道路を利用しないか、ほとんど利用しない人だという。
つまり、軽自動車までも必要としない、無駄なコストと環境負荷が高い状態が慢性化しているというわけだ。
しかも、地方都市では人口の減少から公共交通が衰退している。それゆえ、軽自動車までは要らないから原付バイクで、という人も増えてはいるが、雨の日や荷物を運んだりというのには向かない。結果的に、クルマなしでは移動ができなくなっており、つまりはクルマ社会が加速してしまっている。
そこでKGモーターズが提案するのが、小型モビリティロボットの「mibot(ミボット)」だ。その名前は「ミニマムなモビリティロボット」を意味するという。
では、ミボットについて、もう少し詳しくスペックを紹介していこう。
前後対称のユニークなスタイリングの秘密は……?
ミボットは、前述のように原付ミニカー(四輪車)の規格となる。したがって、運転には普通免許が必要になるが、ヘルメットは不要だ。サイズは、全長2490×全幅1130×全高1455mmという、きわめてコンパクトなサイズだ。車両重量は430kg。
1人乗りのコンパクトなサイズで、車庫証明も不要だから、これまで有効活用できなかった狭いスペースにも駐車できる。少し広めの普通車用駐車スペースなら、横向きで駐車できるほどだ。
パワートレインは電気モーターで後輪を駆動する。充電時間はAC100Vで5時間。航続距離は100km。最高速度は60km/h。そして車両価格は、消費税込みで100万円だ。維持コストは原付バイクと同等だという。
短距離利用に特化しているから、バッテリーを小型化し、車両重量も軽くなり、エネルギー効率の向上を実現している。
しかも、不必要な装備は排してコスト削減を目指しているが、快適に移動するための必要十分な機能は備えている。エアコン、シートヒーター、ディスプレイモニターは標準装備。リアのラゲッジスペースは45kg積載可能。この積載量は、18Lの灯油缶を2個積むことができる。
さらに、ドアは左右に2枚ある。1人乗りなのにどうして? と思われるだろうが、ここにデザインのポイントがある。
このミボット、写真を見ていただけると分かるのだが、ほとんど前後対称な形状をしている。それは金型代(金型数)をおさえてコストを削減しているからなのだが、したがって右前と左後のフェンダーが共通(その逆も)だったり、前後のパネルも共通。ドアを左右に取り付けたのも、左右のパネルを共通化するため。
今回の展示車は市販前のプロトタイプゆえ、ボディパネルは3次元プリンターで製作し、灯火類やドアノブなどのパーツは中国製EVから流用しているが、市販車ではポリプロピレン製のパネルを採用し、灯火類もオリジナルで製作する予定だ。
8月23日から一般予約を開始
安全性についてはKGモーターズのYouTubeで公開しているが(KGモーターズは元々YouTube「くっすんガレージ」からスタートした企業)、実車での衝突実験も行っている。
フルモノコックのボディは一部に高張力鋼板も使用しており、万が一の事故でもフレームの潰れ方やエネルギー吸収に関しては問題なく、生存空間を確保している。
走行性能については、電動の原付ミニカーではモーターの定格出力は0.6kW以下と定められており、そのスペックで登坂力とスピードをバランスさせ、なおかつ電費も悪くしないという性能を目指している。
コスト、安全性、そして走行性能。この3つは、ミボットを普及させるために必要な要素なのだ。
さて、KGモーターズでは2023年の東京オートサロンでプロトタイプ(現在のモデルの前身)を発表し、約5800人もモニター希望者が集まった。その後、モニター希望者を対象にクローズドで先行予約を行った。
そして8月23日の21時から、いよいよ一般予約を開始する。販売方法はECによる直接販売。予約金は3万円(税込)で、車両価格に充当する。市販車の生産と販売は2025年秋からの予定だが、まずは2025年度の生産分(300台)は、広島県と東京都に優先納車を行う。
2026年度からは本格量産で3000台の生産を目指す。2027年度以降は年産1万台を、将来的には年産10万台を目指したいという。
ところで、KGモーターズが目指すのはミボットの普及だけでなく、自動運転にも取り組んでいる。同社では別チームで自動運転のシステムも開発しており、2027年くらいから実証実験を開始する予定だ。
つまり、KGモーターズが描くミボットの未来とは、MaaS:サービスとしてのモビリティとして、誰もが自由に移動できる未来の実現を目指す。地域の活性化を促し、移動の不便さを解消する新しいライフスタイルを提供することにある。
展示されたミボットを見るかぎり、その出来は良く、普及する可能性は高い。あとは実際の性能を確認してみたいもの。来年早々にはメディアに向けて試乗会も行う予定だというから、そのパフォーマンスに関してはあらためて報告したい。
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みんなのコメント
昔から同じような事は沢山おきているから、国民性なのかもね。
ただ問題は例えば高齢者の乗り換え需要ならば軽自動車との比較になるわけでメリットが維持費が安い事だけでは購入者はどうしても限られると思う、10-20万程度の購入補助や何らかの優遇(例えばミニカーBEVの無料専用駐車スペース)等がないと普及は厳しいんじゃないかな