「軽には存在しなかった3気筒エンジンを搭載」ジャスティは初代FFレックスをベースに開発されたリッターカーだ！【ManiaxCars】

クラス初の4WDにECVTを採用。が、販売はふるわず…

想像以上に楽しい走り。軽いってのはスバラシイ!!

ジャスティの登場は1984年2月。全長3.5～3.6ｍのコンパクトなハッチバックボディに排気量1.0Lのエンジンを載せた、いわゆるリッターカークラスに属する1台だ。当時、リッターカーというカテゴリーを生み出し、幅を利かせてたダイハツシャレードに“待った！”をかけるべく投入されたスバルの刺客。

そんなジャスティは、KM／KF系初代FFレックスをベースに開発。というか、ドアやサイドパネルはレックス用をそのまま使ってたから、言ってみればワゴンRに対するワゴンＲワイド／プラス／ソリオみたいなもんだ。

エンジンは初代ドミンゴ譲りとなる1.0L直3SOHCのEF10型(63ps／8.5kgm)。駆動方式はFFと、クラス初となる4WD(パートタイム式)が用意され、北海道や東北などの降雪地帯では人気を集めた。が、それ以外の地域では「スバルは変わりモノが乗るクルマ」ってな話がまかり通ってた時代ゆえ、販売的に苦戦を強いられたのもムリはない。

そこで85年10月、EF10のストロークアップ版(69.6→83.0mm)となる1.2L直3SOHCのEF12型を追加。吸気2、排気1の3バルブ化が図られ、燃焼室形状も半球形からペントルーフ型に変更された結果、パワー＆トルクはEF10を10ps／1.5kgｍ上回る73ps／10.0kgmを発揮した。1990年までは電子制御キャブレター仕様で、翌年EMPi（電子制御燃料噴射装置）仕様が出たようだ。インテークパイプからEXマニに伸びるのは、排ガス浄化のための2次エア導入パイプ。また、パワートレーンで言えば87年2月、量産車として世界初となるベルト型無段階変速機ECVTを採用したのも大きなトピックと言える。

ビッグマイナーチェンジが行われたのは88年11月。「これってフルモデルチェンジ？」と思うほどフロントマスクの印象がガラッと変わり、全長＝フロントオーバーハングが160mmも延長。同時にハイルーフ化や内装デザイン＆素材の見直しも行われ、後期型はだいぶラグジュアリー方向（といっても、たかが知れてるけど、笑）に舵を切ることになった。ちなみに、エンジンがEF12に一本化され、待望の4WD＋ECVT仕様がラインアップに加わったのも後期型からだ。

取材車両は1990年式、後期型Ｍマイムの3ドアモデル。1オーナーで走行わずかに1万9000km！ おそらく鉄ちんホイールまで含めてフルノーマル!! しかも5速MT車!!っていう、ただでさえ変態度は満点なのに、さらに役が３つくらい乗っかって、少なくとも倍満級に昇華しちゃってるのがヤバイ。

外装から見ていくと、ボディサイズは同年代の初代Ｋ10マーチよりわずかにコンパクト。衝突安全性との兼ね合いで大型化が進む今どきのコンパクトカーより、むしろ軽自動車に近い寸法だ。前期型から大きく変わったフロントマスクは、どこかで見たことあるような…？ と思ったら、実は初代レガシィ後期型にデザインが似てたりする。というか、ジャスティ後期型の方が先に出てるから、正しくは「レガシィがジャスティに似てる」だ。また、前後バンパーやサイドモール、ドアミラーはボディ同色でシャレオツな雰囲気を醸し出す。

あとはハイルーフも外装の特徴。ただし、居住性を改善するためというより、単にデザイン優先の処理だと思われる。コレ、初代シティの“マンハッタンルーフ”みたいなもんで、80年代にごく一部の車種で一瞬ハヤり、当時のヤングから「ナウい!!」(笑)とか思われてたんだろーなーと勝手に推測してる。

続いて内装。シンプルなデザインのダッシュボード、2本スポークのステアリング、手巻き式ウインドウレギュレーター、フロアから直接はえたシフトレバーなどなど虚飾を配したさまが潔い。前期型はメータークラスター両端にあれこれスイッチが付いてたけど、後期型では右側にリヤデフォッガー、左側にハザードの各スイッチが設けられるだけだ。

快適装備といえばエアコンとパワステくらいで、「そう、コンパクトカーってのはコレでイイんだよ」と思いつつ、ちゃんとタコメーターが備わってるあたりに、ただの実用車じゃおわらせないスバルの意気込みが見え隠れする。センタークラスターは上から順にエアコン吹き出し口、エアコン操作パネル、純正オーディオ＆シガーライター、灰皿。純正オーディオは電子チューナー式なのにAMラジオのみってのが変態だ。どうせなら、スピーカー一体型であってほしかった！

ドアミラーは手動調整式。内側のレバーをグリグリやると、ミラー面の角度が変わるのだ。かつてヨーロッパ車では、運転席側が手動式で、手が届かない助手席側は電動調整式…ってのが一般的だったけど、ジャスティは両側手動式ってのがポイント。

もともとそうなのか、ヘタってるからなのか、よく分からないけど、取材車両のシートはクッションが柔らかめで身体にフィットした。サイドサポートもあるからホールド性はわるくない。

後席は大人2人がちゃんと乗れるスペースを確保。さらに、背もたれは50：50で前倒しすることができ、ラゲッジスペースを簡単に拡大できる。また、右後ろのみ小物収納スペースも用意される。

5名乗車時でも必要にして十分なラゲッジスペースがあり、開口部が広いリヤゲートのおかげで荷物の出し入れはラクにできそう。後席の背もたれを倒すと、ここまでスペースが拡がる。

ボディ左サイドに設けられた給油口はキーで開閉するタイプ。開けて驚いたのは、25年以上も前のクルマなのにサビや汚れが一切なく、めちゃくちゃキレイだったこと。このジャスティは程度極上だ。

純正と思しき鉄ちんホイールに組み合わされるのは、標準装着される165/65R13サイズのブリヂストンスニーカー。軽快なフットワークは、このサイズに拠るところが大きい。ちなみに、当時の資料によると3ドアモデルは高速域での操安性重視、5ドアモデルは乗り心地重視と、ボディによって足回りのセッティングを変えてたってのがこれまた変態ポイント。

ところどころ塗装がはげかかってるけど、致命的な腐食などは見られない純正マフラー。写真じゃわからんと思うけど、メインサイレンサー下面には“SUBARU”のロゴが入る。また、ストラット式リヤサスのロワアームも確認できる。

絶対的にコンパクトなボディに、高めのアイポイント。四隅の見切りがイイことに加え、最小回転半径がわずか4.5mだから、取り回しがひじょうに楽だ。さらに、後席にも大人2人がちゃんと乗れるし、ラゲッジスペースも必要にして十分。実用コンパクトカーとしてのデキは100点と言ってイイ。

が、気になるのはその走り。スペックから予想するにあまり期待はしてなかったんだけど、これがどうして！ 軽快で力強さすら感じるモノだったのだ。

3気筒独特のフィールを持つEF12型エンジンは、まず低中速域のトルク感が頼もしく、全体的に低めのギヤレシオと併せてスタートダッシュから元気よく前に出る。一方、3500rpmくらいからパワーが盛り上がってきて6000rpm近くまで軽く吹け上がるなど、想像してたよりはるかにスポーティなフィーリング。カタログスペックは大したことないのに思いのほかよく走るのは、車重が770kgしかないからだ。

それは当然ハンドリングにも効いていて、右に左に素早く切り返しても、マスを強く感じさせない軽やかなコーナリングを披露する。スバルのこだわりと言ってもいい4輪ストラット式サスは、大きめなロールこそ許すものの、基本的にロードホールディング性が高く、路面をなめるようにトレース。標準サイズである165幅タイヤとのバランスもよく、実に懐の深い走りを楽しめる。

同じ時代のスターレットターボやマーチスーパーターボ、シャレードGT-ti、カルタスGTiってな、わかりやすいホットハッチに比べると、どうしてもカゲが薄くなりがちだったジャスティ。

けど、それから25年の時間を経て状況は一変した。販売台数が少ないだけならまだしも、走りがいかにも玄人好みなんだから、これを変態と言わずになんと言おうか。今の時代にフルノーマルで乗ってたら、99％のクルマ好きにはスルーされても、1％の変態グルマ好きにズバッとササるのは間違いない！

■SPECIFICATIONS

車両型式：KA7

全長×全幅×全高：3695×1535×1420mm

ホイールベース：2285mm

トレッド(F/R)：1330/1290mm

車両重量：770kg

エンジン型式：EF12

エンジン形式：直3 SOHC

ボア×ストローク：φ78.0×83.0mm

排気量：1189cc　圧縮比：9.5：1

最高出力：73ps/6000rpm

最大トルク：10.0kgm/3600rpm

トランスミッション：5速MT

サスペンション形式：FRストラット

ブレーキ(F/R)：ベンチレーテッドディスク/ドラム

タイヤサイズ：FR165/65R13