新型ランドクルーザー300が発表されたが、気になるのはやはり盗難されるのではないかということ。実際、2019年、2020年のランドクルーザーの盗難件数は、654台、395台と減少してはいるものの、依然として高い水準を維持している。
そうした事情もあったのか、新型ランドクルーザーには指紋認証によるセキュリティシステムが採用される見込み。まだ詳細は明らかになっていないが、エンジン・スタート・ストップスイッチの部分に指をあてて、指紋認証を行う仕組みになっている。
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はたして、この指紋認証によるセキュリティシステムは効果があるのか、徹底解説する。
文/加藤久美子
写真/トヨタ、日本損害保険協会、自動車盗難情報局
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■ランドクルーザーはどれくらい盗まれているのか
2021年3月に生産終了した現行ランドクルーザー200
2020年は1000台中、約50台が盗まれているというレクサスLX570
以前、レクサスLXの異常なまでの盗まれ方(2020年は1000台中約50台が盗難されている)についてベストカーwebに記事を書いたが、ランドクルーザーの盗難台数も非常に多い。
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2020年はコロナ禍によって例年とは様相が異なるが、2019年、2020年のトップ5は以下となっている。(自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム調べ)
■自動車盗難台数 2019年→2020年
プリウス 793台→517台
ランドクルーザー 654台→395台
レクサスLS 272台→218台
クラウン 247台→202台
レクサス LX 178台→286台
2020年はコロナ禍によってアメリカを除くほとんどの地域に向かうコンテナ船が一定期間停まっていたこともあり、盗難台数が減ったという実情もある。後述するが、日本における自動車盗難のほとんどは「海外需要」と考えられるからだ。
車名別盗難状況(出典/日本損害保険協会)
なお、自動車盗難台数のランキングとして良く使われる資料に日本損害保険協会が毎年行う自動車盗難事故実態調査結果の中の「車名別盗難状況」がある。こちらでも例年、ランドクルーザーがトップ集団にいる。
しかし注意しなくてはいけないのは、こちら盗難されたすべての車両について反映されているわけではないということ。
ここでカウントされている台数は「盗難届が受理され、保険会社も盗難と認めて、契約者に車両保険を支払った台数」である。
車両保険に加入していない場合や一度盗まれたが、発見されて保険金請求には至らなかった場合などは含まれていない。車両保険を契約して盗難届が受理されて、盗難として車両代が支払われた件数である。
なお、任意保険加入車両は全体の約7割。そのうち車両保険を付けている割合は約半数だ。通販型自動車保険を中心に、保険会社によっては一定車齢以上のクルマは車両保険の契約を認めない場合もある。
レクサスやランドクルーザーなどの高額車両なら車両保険を付けている人が多いと推察されるので、必然的にランキング上位に出て来ることも多くなると言えそうだ。
なお近年は車両保険を契約していて盗難に遭っても保険会社が盗難と認めず、保険金が支払われないケースも増えている。
警察庁に(保険の支払いに関係なく)「車名別盗難認知件数のデータはありますか?」と尋ねたところ、「そのようなデータはありません。」というので「なぜですか?」と理由を聞いたら「統計をとっていないからです」との(毎度おなじみの)つれない回答だった。
■ランクル300の指紋認証はどれくらい効き目がある?
2021年8月上旬に正式発表される新型ランクル300。価格はGXの510万円~GR SPORT(ディーゼル)の800万円
いずれにしても、ランドクルーザーが盗まれやすいクルマであることは確かだろう。そこで気になるのは新しく発表されたランドクルーザー300の盗難防止対策である。
とくに日本車初採用となる「指紋認証によるセキュリティシステム」が話題だ。詳細はまだ明らかにされていないが、エンジンスタートのプッシュボタン(指をあてて押す部分)などで指紋認証を行う仕組みとなっている。当初はロシア仕様などに標準採用という情報があったが、日本仕様でも全車標準装備となる模様。(ベストカーwebの記事より)
新型ランクル300の指紋認証システム
こちらは指紋認証システムがない通常のエンジン・スタート・ストップスイッチ
指紋認証自体はそれほど新しい機能ではなく、スマホのロック解除でもおなじみだし、自動車の盗難防止という例ではヒュンダイが2019年よりヒュンダイ・サンタフェにて導入している。
ヒュンダイのシステムでは指紋が登録されたドライバーの指紋を他者の指紋として誤認する可能性はわずか5万分の1とのこと。
指紋認証は生体認証の一種で、身体や人の行動の特徴を測定し分析する。指紋や声、顔の骨格などの生体情報は人によって異なるため認証への活用が容易にできる。
コスパにも優れており信頼性も高い。これなら、盗難防止のための新しい機能としてとても有望だろう。ランクル300の盗難が劇的に減ることにも期待できる。
と、思いたいところだが…実はそんなに甘いものでもなさそうだ。カーセキュリティの専門家、自動車盗難情報局を運営する撹上智久氏に聞いてみた。
セキュリティの専門家である撹上氏は「指紋認証は半年~1年で役立たずになる」と予想する。
「おそらくランドクルーザー300が発売されてから、半年間くらいは指紋認証の効果がある程度でてくるでしょう。しかし、それもおそらく半年から1年で終わるでしょう。指紋認証自体が悪いということではなく、メーカー純正のセキュリティシステムであることが問題です。
つまり、他の純正セキュリティと同様、1台解析されてしまえばあとは同じ方法で解析して、いとも簡単に盗まれることが十分に考えられます」。
さらに撹上智久氏はこう続ける。
「また、指紋が一致しないとしてドアが開けられず、またプッシュボタンが押せなかったとしても、現在多発しているキャンインベーダーという方式ではCANに直接入り込んでいきます。そもそも、プッシュボタンはスルーされていますからこの手口に対しては意味ないですね。
おそらくほかの対策も盛り込んで来るでしょうが、今までと変わらずイタチごっこになるでしょう。最終的には後付けの純正とは全く別の回路で動作するカーセキュリティ以外、守る事は難しいと考えます。
ディーラーにて車検や整備をする時には勿論エンジン始動出来る方法があるはずですので、指紋認証されなくてもエンジン始動の方法はありますね。
発売されてから2~3年した頃に、『指紋認証のシステムは発売されて半年した頃にはもう解析されていたんだな』ということに気づくと思われます」。
■窃盗団はどうやって指紋認証を解析する?
指紋認証システムが装着された新型ランクル300のコクピット
なるほど、向かうところ敵なし! と思われた指紋認証のシステムもCANインベイダーでは無意味だろうし、指紋認証自体を解析されてしまえばあとは一網打尽となりそうだ。
では、窃盗団は販売されたばかりの新型ランドクルーザー300の指紋認証どうやって解析するのだろうか?
これは実に簡単だ。善良なほかのオーナーと同様にランクル300を購入し、時間をかけてゆっくりと確実に諸々のセキュリティシステムを解析していく。完了したら中古車として売却すればOK。ランクル300などの人気車種であればリセールバリューも高額なものが期待できる。
タイミングによっては新車価格より高額な値段で買い取られる可能性もある。窃盗団はボロ儲けだ。多くが保険に入っているため、深追いされることもあまりないという。
また、ドイツ車を扱う輸入車ディーラーの整備担当者いわく、
「レクサスLXやランドクルーザーなど、日本の高級車全般にいえることですが、セキュリティに対するメーカーの考え方、お国柄もあるのでしょうか? 全般的に緩い印象です。キーとクルマの通信時に暗号化する際も、桁数がドイツ車と比較してレクサスは半分ぐらいなのです。だから、解読が簡単なんですよ」とのこと。
クルマの設計段階で自動車盗難への危機感が薄いということなのだろうか? 治安の良い日本はオーナーの危機意識も薄い。窃盗団にしてみれば盗難天国なのかもしれない。
■盗難されたランドクルーザーの多くは海外へ
ところで、日本で盗まれたランドクルーザーはどこに行くのか? それを知るにはまず、日本と海外の車両盗難事情から考えるとわかりやすい。
日本の100倍以上! 年間70万台以上が盗まれるアメリカでの盗難車ランキングで上位に入ってくるのは、フォードFシリーズやシボレー、ダッジなどのフルサイズピックアップにシビックやカローラ、アコード、カムリなどの日本車だ。
これはこの10年くらいのアメリカにおける新車販売台数ランキング上位の車種とほぼ重なっている。つまり、売れているクルマと同様の車種が盗まれやすいことになる。ランドクルーザーは世界でも広く人気がある車種だが、実はアメリカでの販売台数はそれほどでもない。
また、全般的に良く盗まれている車両の年式は古め(2000年前後)が主流。メーカーの純正部品供給が終わり始める時期とも重なる。
日本車の旧車を主に扱うアメリカの大手自動車メディアである「ジャパニーズノスタルジックカー」を主宰するBen Hsu氏からも興味深い話を聞いた。
ジャパニーズノスタルジックカーのホームページはこちら!
ベンさん自身もランドクルーザー60 (1986)と同80(1997)の2台を大切に所有している。
「アメリカでは1990年代にランドクルーザーやモンテロ(三菱パジェロ)の盗難が大きな問題となりましたが、今は違います。ランドクルーザーの盗難が少ないのは、アメリカでは盗難車を国内でローカルに販売する機会がたくさんあるからだと思います。
ランドクルーザーやレクサスLXは人気車種ではありません。そのため、米国の窃盗団は、ホンダ・シビックやアコードなど、より一般的で人気のあるモデルを狙います。
日本ではおそらく盗難車を国内で売ることは難しいのでしょう。盗まれた多くのランドクルーザーは部品として海外に密輸されている可能性が高いと思われます」とのこと。
つまり、日本での盗難は「海外需要」、アメリカでの盗難は「国内需要」に対応した盗まれ方をしているようだ。
■ランクルプラドが解体され海外に持ち出される前に発覚!
最後に2017年8月に自動車盗難情報局に登録されたランドクルーザープラドが、解体され海外に持ち出される直前で発覚した時の写真を紹介しておこう。
こちらが自動車盗難情報局に登録された時の画像だ。
出典:自動車盗難情報局
以下は盗まれて約5ヵ月後、海外に密輸される直前で発見された時の状態だ。バラバラにされて部品として密輸されるケースが多いわけだがクルマのこのような姿を見るのは本当につらい。
純正セキュリティだけに頼らず、鍵を玄関にむき出しで置かない(リレーアタック対策)ことや、しっかりした社外セキュリティで護るしか今のところ対策はなさそうだ。
右の白いクルマがランドクルーザープラド。解体され部品の状態で密輸出されるのが常(写真提供:自動車盗難情報局)
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