やれEV転換だ、温暖化対策だ、といっても、ドイツ国内ではまだまだ人気なのが、古くからある内燃機関を搭載したクルマたちです。
トヨタじゃないよ、メルセデスだよ!スプリンターがドイツの街を走る
ドイツでは製造から30年以上経過し、なおもオリジナル状態をよく残しているクルマに対し、歴史的産業遺産と認定して「Hナンバー」を付与する制度があります。「Hナンバー」が付与されると税金や保険の面で優遇されることから、いわゆる「ネオクラシックカー」「ヤングタイマー」と呼ばれるちょっと古い旧車を扱う雑誌は、「今年Hナンバーを取得できるクルマはなにか?」という内容の特集記事を掲載するのが定番です。
一方で、こうした年代のクルマの価値が高騰しているのも事実。今回はドイツで発行されている専門誌の解説をもとに、ネオクラシックカー高騰の最新事情をお伝えできればと思います。
■いつの時代もポルシェは高嶺の花?
ドイツの自動車ファン憧れの存在といえば、やはりポルシェです。特に911の人気は盤石で、近年ナロー系の値段が上がったり、限定モデルが高値安定となったりして、購入を夢見ている人々をやきもきさせています。
ドイツでの整備済み車両の参考相場として、
・1974~75年式 911カレラ2.7クーペ 17万2千ユーロ(約2,236万円)
・1974~77年式 911ターボ 15万7千ユーロ(約2,041万円)
・1992~93年式 911カレラRS(964) 19万5千ユーロ(約2,530万円)
・1992~93年式 911ターボS(964) 58万6千ユーロ(約7,618万円)
・1995~96年式 911カレラRS(993) 26万4千ユーロ(約3,432万円)
となっています。最新の傾向としては、89年式911カレラ・スピードスターが一気に値上がりして、16万6千ユーロ(約2,158万円)まで相場が上昇しました。
ドイツで「もっとも安く楽しめる古いポルシェ」といわれる924ですら1万5千ユーロ(195万円)、944が1万7千ユーロ(221万円)となっていることから、ドイツの旧車ファンの間では「ポルシェは高嶺の花」というのが共通認識となっています。
■庶民の味方はVWとオペル?
逆に、庶民でも楽しめる旧車として、ドイツの旧車ファンに親しまれているのがフォルクスワーゲンですが、価格高騰の波はここにも押し寄せてきています。近年、GTI系の値上がり傾向が顕著で、ゴルフ、そしてシロッコの相場が上昇。
・1975~78年式 ゴルフGTI 2万5千ユーロ(約325万円)
・1986~87年式 ゴルフGTI 16V 1万4千ユーロ(約182万円)
・1976~80年式 シロッコ GTI 2万ユーロ(約260万円)
特に、ゴルフGTIの初期モデルの相場が2万ユーロを突破したことについては、ドイツの多くの旧車ファンはショックを隠せないようで「俺たちのGTIが遠くへ行ってしまった!」というような見出しを目にしますね。
日本ではなじみが少ないですが、北ドイツを中心に根強い人気があるのがオペルです。オペルは、ラリーで活躍していたカデットやマンタ、アスコナの一部のモデルに高値を付けているモデルがあるものの、その他のモデルの価格はおおむね落ち着いていて、フォルクスワーゲンよりも「気軽に楽しめる旧車」としての地位を確立しています。
・1973~79年式 カデットC クーペ 1200S 9千4百ユーロ(約122万円)
・1977~79年式 カデットC ラリー 1.6S 2万3千ユーロ(約299万円)
・1980~81年式 アスコナ B400 8万ユーロ(約1,040万円)
■ドイツ御三家の傾向は?
アウディ、BMW、メルセデス・ベンツのいわゆるドイツ御三家については、特に大きな価格変動はないものの、全体としてはじわじわと上昇傾向にある、という印象。また、各ブランドのスポーツモデルの人気は揺るぎなく、値崩れはなかなかしにくいのではないか、といわれています。各ブランドの代表的スポーツモデルで、日本では「応相談」となりがちなクルマたちの価格を参考までに挙げておきます。
●アウディ
・1980~87年式 クアトロ 6万2千ユーロ(約806万円)
・1984~85年式 スポーツ・クアトロ 44万2千ユーロ(約5,746万円)
●BMW
・1978~81年式 M1 48万3千ユーロ(約6,279万円)
・1986~91年式 M3(E30) 8万ユーロ(約1,040万円)
・1985~87年式 M5(E28) 8万4千ユーロ(約1,092万円)
・1988~91年式 Z1 5万8千ユーロ(約754万円)
・1992~96年式 850CSi 8万6千ユーロ(約1,118万円)
●メルセデス・ベンツ
・1989年式 190E 2.5-16 エボリューション1 8万6千ユーロ(約1,118万円)
・1990年式 190E 2.5-16 エボリューション2 18万9千ユーロ(約2,457万円)
・1990~93年式 500E 4万3千ユーロ(約559万円)
■最近の注目株、そして日本車は?
ドイツ以外の国のクルマで、最近特に価格が値上がりしているのが、ランチア・デルタHFインテグラーレです。2006年には2万3千ユーロだった相場は、2022年には8万6千ユーロ(約1,118万円)にまで上昇。エヴォ2のファイナルエディションは最近のオークションで25万ユーロ(約3,250万円)以上の価格を付け、大きな話題となりました。
日本車の相場も全体的に上昇傾向にあります。すべてを挙げるのは難しいですが、ここではドイツの中古車市場で特に人気のあるモデルをいくつか掲載します。
・1967~70年式 トヨタ 2000GT 100万ユーロ以上(約1億3千万円以上)
・1995~96年式 三菱 ランサーエボリューション3 2万ユーロ(約260万円)
・1969~74年式 ダットサン 240Z 2万5千ユーロ(約325万円)
・1978~85年式 マツダ RX-7 1万2千ユーロ(約156万円)
・1999~10年式 ホンダ S2000 2万5千ユーロ(約325万円)
・1968~72年式 日産 スカイライン 2000 GT-R 7万5千ユーロ以上(約975万円以上)
■先行きが見えない今後の相場
ランチア・デルタHFインテグラーレの価格高騰は、ドイツではあまり予想されておらず、驚きをもって受け止められました。今後もそうしたモデルがあらわれるのでは?と様々な予想がされていますが、次はどんなモデルが台風の目になるのでしょうか。今後も注目していきたいと思います。
またこうした旧車たちがいつまで公道を走れるのかも不透明な情勢になってきました。旧車を取り巻くルールについても、優遇措置がこれからも続くのか、それとも規制されていくのか、なかなか目が離せませんね。それではまた、次回のドイツ現地レポでお会いしましょう!
[ライター/守屋健]
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みんなのコメント
驚いたのは日本では熱で壊れまくったBMW850が高騰していることだな。昔は直せずに解体屋に積まれていた。日本とドイツの気候の差だと思う。