もくじ
ー ブランド・トップからグループCEOへ
ー ディースの功績 数字が証明
ー 過去への対応 未来への計画
BMW M3 CS 2018年モデル 究極のM3 満足感は色褪せず
ブランド・トップからグループCEOへ
ヴォルフスブルクの奥の院での議論は白熱したに違いない。フォルクスワーゲン・ブランドのボスとしての3年間に渡る素晴らしい功績を称えるため、今年のAUTOCARアワードにおける編集者賞を、ヘルベルト・ディースに贈呈することをわれわれが決めた途端、監査役会は彼をグループ全体の舵取り役に任命したのだ。
2015年の夏にBMWからフォルクスワーゲンへ移籍したとき、こんなことになるとはディース自身、想像もしていなかっただろう。フォルクスワーゲンで彼に期待されていたのは、MQBプラットフォーム開発への巨額投資により、主要なライバルメーカーに比べ見劣りするようになっていた利益率の改善と、BMWでのiブランド立上げの経験を活かして、将来的な電動化とデジタル化への準備を進めることだった。
しかし、ディースが移籍した数カ月後に発覚したディーゼルゲートによって、フォルクスワーゲンはそれどころではなくなってしまった。前経営陣の後始末と、傷ついたブランドイメージの回復が彼の役目となったのだ。深呼吸が必要だったに違いない。
ディースの見事な業績は、彼が瞬く間にフォルクスワーゲン・グループ全体の指揮をとるようになったことが既に証明しているだろう。
マティアス・ミュラーの後任にディースを据えることを発表した際、フォルクスワーゲン・グループ取締役会会長のディーター・ペッチュは、この新しいトップに熱烈な支持を表明した。「ディースは、フォルクスワーゲン・ブランドの再編に際して、そのスピードと徹底したやり方で、抜本的な変化をもたらすことが可能だと示してくれました」
われわれもこれに同意する。
ディースの功績 数字が証明
まだフォルクスワーゲンには大きな疑惑が残っているにもかかわらず、彼にこのような栄誉を与えるのはどうかと思う方もいるかも知れない。
数字は単なる説明に過ぎないが、2017年のフォルクスワーゲンは、623万台という記録的な販売台数を達成するとともに、その利益率も2016年の1.8%から、2017年には4.1%へと改善した。さらに、従業員の数を減らすことなくコストも削減している。
思い出していただきたいのは、これはブランドイメージが大きく損なわれた企業が達成した成果であり、世界中のひとびとがこれまで以上にフォルクスワーゲンのクルマを選んだということだ。
いま、その利益率は適正なレベルとなり、年末には新型ゴルフが登場する予定だ。GTIの名は既に独立したブランドとして、ゴルフ以外にも多くの優れたモデルを送り出している。一方、Rのバッジは依然として特別であり、素晴らしい出来のゴルフRのものだ。
そして、イオスやビートルなどの、利益率が低く、モデルライフ末期のクルマは、ディースの手でラインナップから姿を消し、替わりに、最新式のクルマを求めるユーザー向けに、T-Rocのように優れたハンドリングの、走らせて楽しいモデルがこれから次々登場する。
過去への対応 未来への計画
もちろん問題は残っている。ディーゼルゲートに関連して改修を行ったクルマには、依然として多くが満足しておらず、その改修方法に関する訴訟も現在進行中だ。
それでも、ディースが自身に与えられた役目を果たしたのは事実だろう。利益率を改善し、I.D.モデルのランナップによって、内燃機関のあとを担う、一貫性のある明快な将来計画を策定した。一方で、彼は過去の過ちについての謝罪を行い、それを正そうともしている。
彼の電動化への情熱は特筆に値するだろう。これまでの3年間で、ディースはI.D.ハッチバックに代表されるEVの新ラインナップに関する計画を承認しているのだ。
この計画のもと導入されるEV向け新プラットフォームを、彼はフォルクスワーゲン・グループ全体に展開する必要がある。さらに、これまで何度もとん挫してきた、フォルクスワーゲンの象徴たるマイクロバスの復活も彼にかかっている。
まだ、ディースはこれらを成し遂げてはいないが、任期中のテーマとして、今年のAUTOCARアワードに輝いた彼の実績に相応しい仕事といえるだろう。
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