この記事をまとめると
■旧車乗りがやりがちな「儀式」を7つ紹介
「旧車最高」とはいうものの……旧車の魔力にとりつかれた人を悩ませる三重苦!
■現代のクルマのように簡単かつ便利に乗るのが難しいのが旧車の特徴だ
■クセがあったりするので、周囲のオーナーや主治医のアドバイスを聞くのも重要だ
旧車を動かすのはひと苦労!?
いまやクルマの取扱説明書にも「暖機運転は必要ありません」や「エンジンを始動したら速やかに走り出してください」といった内容の記述があります。乗り手に対して従順かつ手がかからない(しかも壊れにくい)現代のクルマは、機械として極めて優秀です。これこそ技術の進歩であり、各メーカーのたゆまぬ努力の結果といえるでしょう。
しかし、その発展途上にあった時代のいわゆる「旧車」に属するクルマともなればそうはいきません。エンジンを始動する前から切るときまで(そして止めているあいだも)、クルマや使用環境に応じてさまざまな「儀式」が存在します。今回はその儀式についてまとめました。
この「儀式」を楽しめるか、あるいは面倒だと思うかによって、旧車に乗る資質があるかどうかの判断材料になるかもしれません。
1)イグニッションをオンにして少し待つ
いまやプッシュスタートが当たり前になりましたが、少し前まではキーを挿して時計まわりにひねりイグニッションをACCに、そのままの勢いでオンまでまわしてエンジン始動……という流れでした。
旧車は……というと、イグニッションをACCのところでいったんストップ。電磁ポンプの場合であれば「クーッ」(クルマによって音は異なりますが)という作動音を確認します。この間というか、ひと呼吸が欠かせない儀式だったりします。
2)エンジン始動前にアクセルペダルを数回踏む
その後、アクセルペダルを数回踏み込み、イグニッションをオン。エンジンを始動します。ここで、一発でエンジンを始動させなければプラグがかぶってしまうこともあり、再始動が困難になる可能性もあります。
このあたりの微妙なさじ加減は、旧車のオーナーとその主治医にだからこそ成せる、まさに経験と勘の世界です。
なお、この1・2の手順はクルマによっても異なるので、その違いを調べたり、楽しむのも旧車の魅力ともいえます。
3)エンジン始動時はチョークレバーを引く
とくにコールドスタートの場合、チョークレバーを装備しているクルマであれば、レバーを引き、混合気の比率を調整(燃料を濃く)します。
エンジンの回転数が上昇したら安定する位置を探り、エンジンが暖まるにつれてレバーで混合気の比率を調整していきます。この「どこまでレバーを引くか」あるいは「どのタイミングでレバーを元に戻していくか」のサジ加減も経験と勘の世界。クルマと対話しつつ、その日の調子を見ながら行うことになります。
厄介なのは儀式ではなく渋滞!?
4)暖機運転 or 低速走行
ひとまずエンジンが始動し、回転が少し落ち着いてきた段階で完全にエンジンが暖まるまで暖機運転を続けるか、低速走行させるか。これは乗っているクルマや仕様、さらにはオーナーや主治医の考え方によってまちまちです(筆者は低速走行派です)。
もしも、初めての旧車でこのあたりのセオリーが分からない場合、手に入れたショップや愛車の主治医、同じクルマを所有するベテランオーナーに教えを請うのがベストでしょう。このテーマで議論すると白熱しそうです。
5)ギヤは2速を舐めてから1速へシフト
といっても本当に舐めるわけではなく(笑)、ニュートラルからいちど2速に入れ、それから1速に入れるとスムースだから、というわけです。現代(近代も含めて)のクルマであれば、トランスミッションにシンクロ(シンクロナイザーリング)が組み込まれており、シフトチェンジの際に前後の歯車の回転速度を同調させる役目を担っています。
しかし、古いクルマには1速のギヤにシンクロが備わっていなかったり、経年劣化でヘタっていることもあります。そのため、ニュートラルからいきなり1速に入れるとギヤがうまく噛み合わずに「ガリッ」となったりします。2速をなめてから1速に入れる行為は、このギヤ鳴りを防ぎつつ、スムースにシフトチェンジするためでもあるのです。身体がこの動作を覚えてしまうと、現代のMT車に乗っても同じことをしてしまいます。
6)ダブルクラッチ
2速をなめてから1速へ……と同じような事情で、シフトチェンジの際にギヤ同士の回転をスムースにするために行うのが「ダブルクラッチ」です。シフトチェンジの際にニュートラルの位置でいちどアクセルを吹かし、クラッチを切って次のシフトに入れることで、一連の動作がスムースになります(と同時に、トランスミッションへの負荷も軽減されます)。
このアクセルを吹かすタイミングやアクセルの踏み込み量もそのときどきによって異なるため、経験と勘、いわゆる修練が必要です。一連の動作をいかにスムースかつ的確に、さらには素早く、クルマに負荷を与えずに行えるかが旧車を操る醍醐味のひとつといえます。
7)エンジンを切る前にアクセルを数回吹かす
キャブレターを装着したクルマ、さらには高回転よりにエンジンがチューニングされた個体であれば、アイドリングの状態はどちらかというと苦手な領域。プラグがかぶり気味となり、次にエンジンを始動するときにスムースにいかない可能性があります。
その状況を回避するために行うのが「エンジンを切る前にアクセルを数回、“ブォン、ブォン、ブォォォォォオン”」と吹かす儀式です。インジェクション(電子制御燃料噴射)の場合、コンピュータが自動的に調整してくれるので、この儀式は不要。むしろガソリンの無駄遣いになってしまいます。でも、身体がこの動きを覚えてしまうと、現代のクルマに乗ってもついやってしまうんですよね……。
まとめ:渋滞を極力避けることも大事な儀式?
旧車としてもっとも避けたい場面が渋滞。低速走行のため冷却風がエンジンに送られず、水温(または油温)が上昇し、最悪の場合はオーバーヒートという事態に見舞われてしまいます。
旧車オーナーさんのなかには「ウチのクルマは渋滞のなかでもぜんぜん平気」とおっしゃっる方もいますが、クルマに無理をさせていることに変わりはありません。
エンジンが気持ちよく回転し、適度に内部のオイルが循環されることで「気持ちのよい走り」が味わえます。現代のクルマほど故障知らずとはいえない旧車だけに、あらゆる場面において愛車を労る気遣いこそが「もっとも大事な儀式」といえそうです。
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みんなのコメント
この儀式、40〜50年前の当時でも疑問視されてたし、メカニズムに詳しい人々の間では「無意味なだけでなく有害な行為」とされてたよ。
当時はエンジン始動にてこずる事も珍しくなかったから、エンジンを停止する際に一度高回転にした所でキーを切れば生ガスを吸い込んだ状態で停止する。だから次の始動がたやすくなる…というのが理屈。しかし生ガスの状態でシリンダー内にずっと留まっているはずがない。やがて温度が下がり、ガスは液化してシリンダー内壁に付着する。それは結果的にエンジンオイルに行くのでオイルを薄め、劣化を早める事になる。だからあれはただのおまじないに過ぎないのだ。
それが技術者の悲願でありアイディアをひねり出して現在の起動状態になったかと。
古い車はいわゆるタイムスリップ状態なので手間そのものを楽しむユーザがほとんどかとと思います。
なので、複雑な手順がオーナーの喜びかと思います。