「ジムニスト」とよばれる熱狂的なファンを生み出すほど、有名な軽本格クロカン、スズキ「ジムニー」。軽自動車という日本独自の規格のなかで特別な存在であることはもちろんのこと、本格的なオフローダーというくくりでみても、グローバルでライバル不在の特殊なクルマだ。ここで改めてジムニーのすごさ、価値について考察してみたい。
文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:SUZUKI
冷静に考えて「ジムニー」が日本にあることを日本人はもっと誇っていいのではないか
このクルマでしか走ることができない道がある
軽自動車でありながら、堅牢で耐久性の高いラダーフレームやリジッドサス、トランスファー付きパートタイム式4WDといった本格オフローダーとしてのメカニズムが与えられているジムニー。
現代の乗用車のシャシーは、そのほとんどがモノコックで、ラダーフレームは一部のクロカンモデルのみ。2本の太い梁の間に何本も横渡しをしたハシゴのような形状のラダーフレームは、堅牢ではあるが、車重が増えがちでキャビンスペースが狭くなるため、モノコックフレームのクルマに比べて非効率なパッケージングになってしまうからだ。
ジムニーはその走破性の高さから、山岳地帯や豪雪地、砂浜や河原など、一般的な乗用車では走ることができないようなところも走行することができ、かつジープやランドクルーザー、Gクラスなどの高額オフローダーにはない、小型車ならではの機動性をもつ。このクルマでしか走ることができない道があり、そうした地域にとって、ジムニーはインフラとして非常に重要な役割をもつ、特別なクルマなのだ。
軽自動車でありながら、ラダーフレームやリジッドサス、トランスファー付きパートタイム式4WDといった本格オフローダーとしてのメカニズムが与えられているジムニー
オフローダーとして本格的なメカニズムを備えつつ、コンパクトで扱いやすく、価格も安い
遊びにつかうのも楽しい!!
そんなジムニーの初代モデルが登場したのは、1970年のこと。以降50年以上、そのスタイリングは基本的に変わっておらず、普遍的な機能美とともに、懐かしさや親しみやすさも感じさせてくれる。ある特定の年齢層や性別に限定されていない、「ジムニー」という個性が確立されているのだ。
現代のジムニーはオンロードでも快適な乗り心地で、大人1名、あるいは2名での移動であれば広さに不満はないし、アウトドアレジャーでは十分な荷物を積むことができる。5速MTとトランスファーの組み合わせでひとたび走り始めれば、「機械を操っている」という感覚を楽しむことができる。
YouTubeでは、道なき道を楽しそうに走るジムニーの「泥遊び」動画が無数にアップされている。カスタムしてハードなオフロード走行を気軽に楽しめるのも、パーツが豊富で修理代が安いジムニーならではの楽しみ方だろう(安全とマナーには十分注意して欲しい)。
モーターでの走行が、やがては乗用車のスタンダードになっていくだろう現代においては、もはや昔の機械のようにも感じるジムニーのシンプルなメカニズム。ただ、電動車では感じることができない、自分でクルマを操作し、走らせているという感覚は、今後さらに貴重な体験になっていくはずだ。
フラットにもアレンジできるジムニーのシート。一人でレジャーに出かけても楽しい
舗装路ではFR!?? オフロードを走らなくてもジムニーは快適
ラダーフレームやパートタイム4WDは、オフロードを走らない人にとってはオーバースペックに思えるかもしれないが、パートタイム4WDは舗装路面だと基本的には2WDで走ることになり、ジムニーの場合はFR走行となる。実はこれがかなり軽快で、気持ちのいい走りを生み出してくれる。乗り心地は若干ヒョコヒョコしているが、ジムニーはオンロードでも快適なのだ。
デザインや個性が好きで乗る人もいるだろう。トランスファーをほとんど触らなくても、「4H、4L」(トランスファーの4WDモード)があることの頼もしさ。ジムニーの機能を使い切らなくても、ジムニーはあらゆるカーライフを支え、楽しませてくれる。この価格でそれを実現させてくれるクルマがほかにあるだろうか。
現代的な装備と機能的なデザインで、実用車としても快適だ
◆ ◆ ◆
ジムニーのように、遊べて頼もしくて、現代的な安全機能もきちんと装備されており、乗用車としての不満もなく、価格も安い(165万4000円から買うことができる)クルマなんて、世界のどこを探してもない。日本はもっとジムニーを誇っていいと思う。
そんなクルマを、いまはまだ新車で買うことができる。ただそれも長くは続かないだろう。ジムニーを楽しむなら、いましかない。
【画像ギャラリー】冷静に考えるとすごいクルマ…初代登場から50年以上!! ジムニーの歴代モデル(22枚)
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