10月29~30日にスペインを代表するF1サーキット、バルセロナ特設トラックで争われた2022年WorldRX世界ラリークロス選手権第8-9戦は、ダブルヘッダーの土曜こそ2019年チャンピオンの意地を見せたティミー・ハンセン(ハンセン・ワールドRXチーム/プジョー208 RX1e)が今季初勝利を飾ったものの、続く日曜は一転。
全者条件横並びの電動化初年度となる今季も、引き続き快進撃を続ける“絶対王者”ヨハン・クリストファーソン(KMS/フォルクスワーゲンRX1e)がキャリア通算34勝目を手にし、最終戦を残して過去6年間で5回目のドライバーズタイトル獲得を決めてみせた。
ニック・ハイドフェルドとカルロス・チェカ、4輪2輪の世界選手権経験者が電動RX2eに初挑戦
前戦スパ・フランコルシャンの完全制圧で、ランキング首位のアドバンテージを41ポイントにまで伸ばし、自身のタイトルをグッと引き寄せていたクリストファーソンだが、そんな“絶対王者”に対して、土曜からライバル勢が奮起。
プログレッションのヒートでは、ハンセン兄弟の長兄がカタルーニャ2勝と相性の良さを披露し、バックストレートのサイド・バイ・サイドではライバルを弾き飛ばす気迫を見せ、順当にファイナルのグリッドを確保した。
同じく、北欧STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の強豪PWRレーシングを母体とするコンストラクション・イクイップメント・ディーラーチーム(CEディーラーチーム)から参戦のニクラス・グロンホルム(PWR RX1e)も、そのファイナルでスタートから首位を守ると、背後にティミーを従えて表彰台の頂点のみを目指した勝負を展開する。
しかし、直後に反応を見せてジョーカーラップへ飛び込んだプジョーが、最終ラップでグロンホルムの首位PWRを追い詰めてリードを奪い、2019年王者ティミーがようやく待望の瞬間を迎えることとなった。
「ここに来て勝つことしか望んでいなかったが、ついにそれを達成できて素晴らしい気分だ。遅かれ早かれ実現することはわかっていたけど、僕とケビンはここまで決勝で何回、バトルや接触に巻き込まれたかわからないほどだ。でも、今日はすべてが適切なタイミングでまとまったね」と、安堵の言葉を残したティミー。
「とても幸せだし、チーム内のすべてのメンバーに感謝している。僕らはこのクルマと電動化プロジェクトに長い間取り組んできたし、ギャップを埋めるためアップデートを続けることに非常に集中していた。可能性を信じ続け、プッシュし続けてきたんだ。ついにWorldRX電化時代の表彰台最上段に立つことができ、新しいファイティング・レンジに入れたね!」
最終コーナーでエラーを喫したグロンホルムが2位、KMSのルーキーであるグスタフ・ベリストローム(KMS/フォルクスワーゲンRX1e)が3位に続き、ターン1の接触に対する3秒ペナルティ加算により、クリストファーソンは5位に降格。戴冠はあと24時間おあずけの初日となった。
■「5回目の世界タイトルなんて信じられない」と王者クリストファーソン
その落胆で火がついたチャンピオンは、明けた日曜のスーパーポール・シュートアウトで、ライバルに対し約1秒も速い驚異的ペースを披露すると、プログレッションやセミファイナルでも“アンタッチャブル”ぶりを見せつけ、誰もフォルクスワーゲンRX1eのテールに迫ることさえできないスピードを維持。
ポールポジションを獲得して教科書的なスタートを切ったファイナルでも、前日勝者のティミーが率いる追跡軍を容赦なく引き離し、パックから5秒以上のマージンを築いて今季8勝目を飾った。
「今日のこの結果をとても誇りに思うよ。僕らはこのクルマでゼロから始めたんだ。それはチームみんなの赤ん坊であり、非常に多くの人々がこのプロジェクトに人生を捧げてきた」と、思わず込み上げる感情を抑えるかのように語った5冠王者クリストファーソン。
「これはまさにチームの努力であり、その旅に参加できたことを本当にうれしく思う。今日のフォルクスワーゲンは飛ぶように速く、決勝でそのペースとポテンシャルを披露できて本当に楽しかった。5周全開でプッシュしたしね。すべてのドライバーはそんなクルマをドライブすることを夢見ていると思う」と続けたクリストファーソン。
「5回目の世界タイトルなんて信じられないほどで、理解するにはしばらく時間が掛かるだろうね。僕のガールフレンドと息子が、チャンピオンシップに勝つのを見るためここに来たのは初めてで、この特別な瞬間を共有できたのも最高だ!」
一方、シリーズの併催イベントとして開催されてきた電動ワンメイク戦『FIA RX2eチャンピオンシップ』では、ベルギー出身のヴィクトル・ブランクスが今季を象徴する安定感で2位表彰台を獲得し、2022年のドライバーズチャンピオンに。
ゲスト参戦で注目された2輪、4輪の各世界選手権経験者ニック・ハイドフェルドとカルロス・チェカも、最初のヒートでは数秒単位で遅れたものの、その後はセッションごとにみるみる差を縮め、セミファイナルではラップあたりコンマ数秒差まで迫るさすがの適応力を披露。ファイナル進出こそ逃したものの、両者ともに電動ラリークロスを満喫してカタルーニャを後にしている。
引き続きダブルヘッダーとなる2022年WorldRXの最終第10-11戦は、約2週間後の11月12~13日にドイツ・ニュルブルクリンクで争われる。
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