トヨタのマザー工場である元町工場。多様なモデルを同じ製造ラインでつくり分ける混流生産が行われている。BEV(バッテリー電気自動車)やFCEV(燃料電池車)も混流しているが、そうした製造方法の実態についてトヨタから詳しい話を聞いた。
混流、中量生産、少量生産が混在する環境
組み立て中のクルマが自動運転で走行!? トヨタ元町工場の「次世代BEV生産ライン」を見た
トヨタの主力工場のひとつ、愛知県豊田市の元町(もとまち)工場内部を2023年9月中旬、詳しく見た。
公開された資料によると、工場内には、プレス課、ボデー課、塗装課、第1組立課、第2組立課、第2機械課、第3組立課、第3機械課、成形課、検査課のほか、ノア・ヴォクシーボデー、GRボデーなどの製造エリアがある。
このうち、第1組立課は、9モデルを年産12万8000台規模で混流生産している。
具体的なモデルは「ノア」、「ヴォクシー」、「クラウン」、「bZ4X」、スバル「ソルテラ」、レクサス「RZ」、「パトカー」、「MIRAI」、そして計画中の「クラウンセダン」の9モデルだ。
第2組立課ではレクサス専用で中量(年産1万1000台規模)で「LC」と「LC-C(LCコンバーチブル)」。
そして第3組立課では専用ラインで「センチュリー(セダン)」と、小型BEV「C+pod」を生産している。
いわゆるサブラインとして、第2機械課でBEV電池パックを生産するほか、別の場所でC+pod用の超小型電池パックを組立ている。
そのほか、第1成形工場で、リハビリロボット「WelWalk」を生産するといった、多様なモビリティの生産拠点となっていることが分かる。
マルチパスウェイプラットフォーム向け生産で電動化に対応
トヨタには電動車で大きく3つの枠組みがある。
ひとつは、 TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を使い、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、BEV、FCEV(燃料電池車)を使い分ける、「マルチパスウェイプラットフォーム」。
二つ目が、「bZ4X」と「ソルテラ」から導入した、BEV専用TNGAのe-TNGA。
そして三つ目が、現在研究開発を進めている「次世代BEV」である。
このうち、元町工場では前述の生産モデルを見て分かるように「マルチパスウェイプラットフォーム」と「e-TNGA」が混流生産されている。
パワートレーンの多様化についても、汎用トレーで対応して作業効率をあげている。
マルチパスウェイプラットフォームでは、内燃機関+モーター、モーター、燃料電池など各種パワートレインに対応する。最終組立ラインにこれらの各種パワートレインを運ぶ際、共通のトレーでその一部を変更することで対応し、作業効率を上げている。実際、各種パワートレインの大きさはかなり違い、汎用トレーに対すトヨタの工夫に驚いた。
ボディのシルエットもミニバン、セダン、SUVなど様々あるが、混流生産ラインでは、作業をする上で様々なカイゼンを行い、作業の効率化と作業員の疲労軽減につとめている。
例えば、作業を楽にする「からくり台車」がある。
立ち仕事で、様々なモデルに対応すると背伸びをしたり、かがんだりと、作業員の動きがモデル毎に大きく変わっている。
そこで、生産ラインで同期する、親台車と子台車を上手く使い分ける。子台車の中にはコンパクトな踏み台が装備されており、モデルに応じて使い分ける。視察中も、車内で座った状態で部品の組付けをする様子が分かった。
そのほか、ラインの床部を黄色ペイントすることで、各種照明が反射する明るさを利用して車体下部の部品取付けの効率を上げている。
作業時間の長いクルマを連続で流さない工夫
多様な電動車を混流生産すると、1台あたりの作業時間は当然変わってくる。
例えば、MIRAIは11.3時間、パトカーは10.1時間、ノアは9.6時間、そしてbZ4Xは8.8時間それぞれかかる。
また、ひとつの工程の作業時間でも、MIRAIとbZ4Xでは最大で30秒もの差が生じている。
こうした状況で、作業時間の長いクルマを混流ラインで連続して流さないことで、生産ライン全体での平準化を図っていることが分かった。
近い将来、次世代BEVの自走ラインの実用化も進むが、元町工場内が今後どのように進化するか、改めて視察に来たいと未来に向けた期待が高まった。
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まだ三年もあるのに