約20年ぶりMGスポーツカー登場
SAIC傘下の自動車ブランドであるMGは、新型EVスポーツカー、サイバースター(Cyberster)を正式発表した。最高出力543psを発生する、世界初の「手頃」な電動コンバーチブルとされている。
【画像】英国ルーツのスポーツカーブランド【MGサイバースターをかつてのMG F/MG TFと写真で比較する】 全32枚
MGは英国にルーツを持つスポーツカーブランドで、2005年にMGローバーが倒産した後、中国のSAICが買収して現在に至る。
新型サイバースターは、1995年のMG F以来、八角形のブランドエンブレムを付けた初めてのスポーツカー・コンバーチブルとなる。2024年夏の発売を前に、その実車がロンドンで初公開された。
MGは、サイバースターが世界初の「手頃」なEVコンバーチブルになるとしており、英国価格は最高出力313psの後輪駆動バージョンで5万5000ポンド(約925万円)前後から、最高出力543psの四輪駆動バージョンで6万5000ポンド(約1090万円)前後と見込まれる。
当初はMG TF(MG Fの発展型)の後継車として計画されたが、EVとして大型の駆動用バッテリーを搭載する必要があり、長いホイールベースが必要となった。ボディサイズは未公表だが、サイズ感は全長3.96mのTFよりも全長4.4mのBMW Z4に近くなっている。
車重も明らかではないが、軽量なシングルモーター仕様で約1850kg、ツインモーター仕様では約1985kgになると見込まれる。仕様詳細については7月13日に英国で開幕するグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで発表される予定だ。
新世代ドライバーに向けたコンバーチブル
サイバースターは電動折りたたみ式ルーフを備えた2シーターのコンバーチブルで、ノーズにエンジンがないことも手伝って、広くゆったりとしたキャビンを持つ。「スケートボード」方式のプラットフォームにより、バッテリーはシャシーに組み込まれている。
内外装デザインは、ロンドンの高級住宅地メリルボーンにあるMGのアドバンスト・デザインスタジオが担当した。高級感のあるインテリアと計器類は昨今のゲームトレンドから影響を受けており、スーパーカーのようなシザードアも特徴的だ。
アドバンスト・デザインスタジオの20人強のスタッフをまとめるデザイン責任者カール・ゴッサム氏は、サイズが大きくなったことを認めながらも、それをうまくまとめ、「新世代のスポーツカードライバーに向けた全く新しいタイプのロードスターを作り上げた」と述べている。
MG英国部門の営業責任者であるガイ・ピグナキス氏は、すでに購入希望者からの問い合わせが「殺到」していると述べ、MGの英国ディーラー(まもなく約150店に上る)も同様に熱意を示しているという。
サイバースターの主な役割は、販売台数を追うことではない、とピグナキス氏は主張する。しかし、英国では年間販売台数が2000台程度になることは「想像できる」という。
ピグナキス氏は、MGにとって成功の要因の1つに優れたコストパフォーマンスを挙げたが、ブランド認知も「重要」な要素だとしている。また、高齢の消費者からの反響は「まったく驚異的」であるという。「MGという名称が持つ興奮と期待感を覚えていて、それに大きな愛着を持っている、大規模で活発な購買層がいることは明らかです」
MGの英国販売はここ数年好調で、2022年には5万1000台以上を販売し、5年前の水準の5倍以上を記録。欧州全域における成長はさらに目を見張るものがあり、2019年の販売台数は1000台を下回ったが、2023年末には12万台に達すると予想されている。
MGのデザイン責任者、カール・ゴッサム氏へインタビュー
カール・ゴッサム氏は1999年にコベントリー大学でデザインの訓練を受け、その10年後にMGに入社し、内外装のデザインを担当した後、2017年に現職に就任。2018年にメリルボーンのアドバンスト・デザインスタジオを立ち上げた。
――サイバースターのプロジェクトはどのように始まったのでしょうか?
「MGには新しいスポーツカーのアイデアが常に存在しており、わたしが入社してからは、それを推し進めることに全力を尽くしました。最初は、スカンクワークス(自主的な活動)のようなプロジェクトでしたが、2017年に現職に就任すると、それが最初の仕事の1つになりました。いろいろなアイデアがありましたが、EVコンバーチブルの企画は非常に適切だと感じられました。メリルボーンのスタジオに移り、プロジェクトが具体的になりました。そして、未来志向のコンバーチブル・コンセプトを上海に用意することで、それを実現したのです」
――プロジェクトの中身はどのようなものだったのでしょうか? また、作業は英国で行われたのですか?
「このクルマは、会社の未来を表す意思表示です。曲線的で、温かみがあり、親しみやすいもの、それでいてブランドに合ったものでなければなりませんでした。エクステリアは100%英国でデザインされましたが、インテリアとインストゥルメントの多くは上海で行われました」
――デザインにあたって、あなたのチームはどれくらい自由度を得られたのでしょうか?
「かなり自由でした。わたし達の仕事には、トレンドを研究し、予測するということも含まれますが、それなりに成功してきました。MG 4は、英国でコンセプトを練り、上海のスタジオで最終決定し、成功を収めています。わたし達の仕事は、3~4年先のモデルを手がけることです」
――EVであるサイバースターは、明らかに過去のロードスターより大きくなります。メリットとデメリットは?
「ポジティブな点は、コックピットスペースやペダルスペース、バッテリーの重量が車体の低い位置にある優れた重量配分などです。一方、ネガティブな点はシート高(バッテリーの影響)です。また、ホイールベースが長く、サイズも大きい。しかし、サイバースターを見ると、あるいは運転すると、妥協は見られないと信じています。ホリスティックなデザインなのです」
――EV時代のデザイン責任者として、多くの変化に対応された経験をお聞かせください。
「物事が進むにつれて、答えのない問題を目にすることが多くなります。というのも、課題が非常にバラバラなんです。実に多くの変化がクルマの基本設計に影響を与えているにもかかわらず、偉大なブランドの遺産を尊重しなければならない。また、英国と中国とでは、まったく異なる顧客に向けてデザインすることになります。これらをすべてこなそうとすると、大きな志を抱くことになるのです」
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