最小回転半径5.0mなら、5.0m先の壁に当たらず曲がれるか
小回りが利くクルマとは、どのようなものでしょうか。車体が小さいほど有利と思うかもしれませんが、クルマのカタログなどには、この目安となる数値が記載されています。
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それは「最小回転半径」と呼ばれる数値で、ハンドルをいっぱいに切った状態で旋回したときに、外側にある前輪の中心が描く円の半径をいいます。
例を挙げれば、日産「マーチ」は4.4m、トヨタ「プリウス」は5.1m(一部グレード除く)、ホンダ「ステップワゴン」は5.4mと、小さいクルマほど最小回転半径も小さくなる傾向です。しかし、「プリウス」よりも250mm以上短い(幅は40mm大きい)フォルクスワーゲン「ゴルフ」が5.2mだったり、SUVはほかのタイプと比較すると、全長や全幅の割に最小回転半径が大きい傾向だったりします。
この数値は、実際の運転でどう認識すればよいのでしょうか。たとえば、最小回転半径が5mの車種は、「自車から5m先にある壁に当たらず曲がり切れる」などと考えてよいのでしょうか。クルマの「曲がる」機能を担うステアリングや足回りのパーツを製造するNTN(大阪市西区)に聞きました。
――最小回転半径が5.0mならば、自車から5m先に壁があるとして、それに当たらず曲がり切れると考えてよいのでしょうか?
はい。ただ実際にはもっと短い距離で曲がれます。最小回転半径は、「外側にある前輪の中心が描く円の半径」ですが、この円の中心点は常に、後輪の車軸の延長線上に位置しています。つまり、円の半径は常に運転席よりも後ろ、後輪の車軸にありますので、最小回転半径が5.0mであれば余裕を持って曲がれるでしょう。
※ ※ ※
ちなみに、この状況はクルマが90度曲がった場合を想定したものですが、Uターンつまり180度旋回した場合は、直径で考える必要があります。つまり、最小回転半径が5.0mであれば10m、6.0mであれば12mです。
タイヤの切れ角「5度アップ」 最小回転半径はどう変わる?
最小回転半径が小さくなると、取り回しはどう変わってくるのでしょうか。再びNTNに聞きました。
――最小回転半径が小さくなると、取り回しはどう変わってくるのでしょうか?
車両の形や設計によって、変化が大きい場合もあるので一概には言えません。しかしながらひとつの目安を挙げるとすると、「Eセグメントのクルマで最小回転半径が0.4m小さくなると、Cセグメントと同等の取り回しになる」と考えてよいでしょう。Eセグメントの車種にはたとえばメルセデス・ベンツのEクラスやレクサス「GS」クラス、Cセグメントの車種にはトヨタ「カローラ」シリーズなどがあります。
――そもそも最小回転半径はどう決まるのでしょうか?
ホイールベース(前後タイヤの間隔)、トレッド(左右タイヤの間隔)、タイヤの切れ角から割り出されますが、タイヤの切れ角に様々な要素が影響します。たとえばSUVなど、タイヤの外径が大きいクルマは、タイヤが車体に干渉するなどしてあまり切れなくなるので、最小回転半径の数値も大きくなる傾向です。
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一般的なクルマは、ハンドルを回すと前輪が左右に動いて曲がることができますが、NTNによると、まっすぐ走行している状態でも、曲がっている状態でも等しくエンジンからの動力を伝える必要があるといいます。前輪ドライブシャフト(車軸)のタイヤ側には、「タイヤといっしょに首を振る部品」(NTN)という等速ジョイントが取り付けられており、これによって角度を取りながらエンジンの動力をタイヤに伝達しています。
その角度は、大きくなるほど様々な力が発生してしまうため、これまでは50度が最大だったそうですが、NTNは2018年5月に、従来品と同じ大きさで世界最高の55度を実現する等速ジョイントを新たに開発しました。これにより最小回転半径は「たとえば5.7mであれば、5.25mくらいまで小さくなります」とのこと。SUVなどへの採用が期待されるといいます。
【図】知ってますか? 最小回転半径の考え方
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