「e-BOXER」は、スバルのアイデンティティでもある水平対向エンジンとシンメトリカルAWDに、モーターを組み合わせた画期的な電動化技術である。その能力を試すべく降雪地域で、フォレスター(SUBARU FORESTER X−BREAK)とスノードライブを楽しんだ。(Motor Magazine2021年4月号より)
シンメトリカルAWDの電動化で、走りの安心感がさらに増した
「見てくださいよココ。やっぱりスバルはね、ちゃんと考えてクルマをつくってるんですよねぇ~」これは、もうずいぶん前のことになるが、私がフォレスターでモンゴルラリーに参戦、走り切って戻ってきたマシンを確認したメカニックさんから出た言葉だ。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
サラリとは説明できないほど過酷な道程だったというのに、マシンの下まわりに大きな傷がないとは驚いた。悪路を走ることもあるSUVだから、何かに引っ掛かってトラブルが出ることのないように、想定を超えるようなシーンまで考慮されているおかげだった。
そうしたことを思い出させるほど、今シーズンの雪国の路面状態は厳しい。吹雪の翌日は春のごとく気温が上がり、積もった雪は溶けたり凍ったりを繰り返す。ハンドルを握る腕には思わずキュッと力が入るが、フォレスターのXモードは「スノー・ダート」と「ディープスノー・マッド」という、雪に対応したモードがふたつも備わっているのが心強い。ふたつのモードにハッキリと「スノー」と表記しているものにはあまり他にはお目に掛かったことがない。
両モードとも、車速が20km/h以下でセット可能で40km/hに達するとキャンセルされるので、「安全に悪路を走破することに特化したモード」といったところだが、確かに選択した途端にクルマの挙動が安定する。40km/hを超えてノーマルモードに戻ると同時に、細かなアクセルペダルとハンドルの操作が必要になるのを見ても、ふたつのスノーモードがもたらす安定感は見事なものだ。
モーター特有の瞬発力が雪道の運転をより楽にする
雪道ではe-BOXERも多大なる貢献をしている。路面が安定していない分、乾燥した舗装路よりも微妙かつ瞬時のアクセルペダル操作が必要だが、トルクの立ち上がりが早いモーターはこういったシーンでも威力を発揮している。モーター駆動というと、とかく速さや燃費といった話が注目されがちだが、実はクルマをコントロールするという面でも絶大な力を持っているのだ。
また、今回装着されていた推奨設定のスタッドレスタイヤ、ヨコハマ アイスガードとのマッチングもかなり良かった。スバルでは、路面に接しているのはタイヤだけだからと、開発の最初の段階からタイヤメーカーと一緒に性能を作り込んでいくと聞いている。そのおかげか、あまりにもしっかりと走らせてくれるので、羽目を外さないよう自分を律するのが、いちばん大変かもしれなかったりして・・・。乾燥路に凍結路、シャーベットや深雪路といった冬の道が楽しいと思えるドライブだった。(文:竹岡 圭/写真:小平 寛)
スバル フォレスター X-BREAK主要諸元
●全長×全幅×全高:4825×1815×1730mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:水平対向4 DOHC+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:107kW(145ps)/6000rpm
●最大トルク:188Nm/4000rpm
●モーター最高出力:10kW(13.6ps)
●モーター最大トルク:65Nm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・48L
●WLTCモード燃費:14.0km/L
●タイヤサイズ:225/60R17
●車両価格(税込):305万8000円
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