国土交通省から自動車の燃費ランキングが公開された。普通・小型自動車部門でトップ5をトヨタ車が独占している。トップ10の中にトヨタ車は8台入っており、クルマの大小にかかわらず燃費性能の高さを示した形だ。トヨタのクルマは、なぜここまで燃費がいいのか。その理由を考えていく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA
トヨタ車トップ5独占!! 他のメーカーよりも燃費がものすごくいいワケ
■トヨタ車が自動車の燃費ランキングトップ5を独占!!
普通・小型自動車部門の燃費ランキングで1位を獲得したヤリス
燃費ランキングベスト10は以下のとおりだ(令和4年末時点)。
1位はヤリス、WLTCモード燃費は36.0km/Lを誇る。次点にアクア(35.8km/L)で3位にはプリウス(32.1km/L)が入った。
ヤリスクロス、カローラと続き、6位にホンダ・フィット(30.2km/L)、7位にはカローラスポーツ、8位にカローラツーリングが入って、同率8位で日産ノート(29.5km/L)、10位はシエンタとなる。
このうち、WLTCモード燃費が35km/Lを超えているのはヤリスとアクアのみ。同カテゴリーのフィット・ノートとは5km/L以上の差がついている。
この圧倒的な差を生み出す一つの要因が、車両重量の差だ。
■トヨタによる徹底的な軽さの追求が燃費の良さに繋がるワケ
フィット・ノートに比べて軽い車両重量が優れた燃費性能をもたらす
物体が重ければ重いほど、動かすためには大きなエネルギーを使うことになる。逆に軽ければ少ないエネルギーで物体を動かすことができるため、燃費性能の面で大きなアドバンテージになるのだ。
ヤリス(HEVモデルX・2WD)の車両重量は1050kg、アクア(B)は1080kgである。
いっぽう、フィット(e:HEV BASIC・FF)が1190kg、ノート(e-POWER・X)が1220kgとなっており、ヤリス・アクアと比べると100kg以上重い。
HEVモデルを投入し、燃費を伸ばしているが、HEVはモーターや専用バッテリーを搭載する必要があり、車両の軽量化は難しい。しかしトヨタはHEVの軽量化を実現し、ヤリス・アクアはフィット・ノートに比べて、10%程度車両重量を軽くした。WLTCモード燃費の数字が、その努力を物語る。
■熟成されたトヨタハイブリッドシステムに死角なし
エンジンで発電した電力で駆動用モーターを回して走行するシリーズ方式ののHEVを搭載するノート
日産のe-POWERはシリーズ方式のHEVであり、エンジンは発電専用と割り切って、車自体はモーターが動かす。シンプルでピュアEVに近い乗り味が魅力だが、走行状況に応じた効率のいい動力利用が難しい。
ホンダのe:HEVはシリーズ・パラレル切り替え方式、トヨタのTHS IIはシリーズ・パラレル方式のHEV。
どちらも発電用モーターと駆動用モーターを持っているが、違うのは動力分割機構の有無である。
e:HEVは動力分割機構をもっていない。通常走行はモーターが行い、高速域になるとエンジン走行単独になる時間が発生して、またモーター走行に戻るというもの。
基本的にはモーター走行を軸にして、なめらかな走行フィールが楽しめる。
これに対し、THS IIは動力分割機構が、HEVを細かく制御する。発進時はモーター駆動となるが、市街地走行から高速走行までモーターとエンジンの両方が動力となってクルマを動かす。
e:HEVと異なり、モーター+エンジンで走行できるのが最大の強みだ。
THS IIの肝は動力分割機構の制御にある。例えば、市街地走行中にエンジンを効率の高い回転数で作動させていく。
モーターを使って効率よく駆動する一方で、余剰となった駆動力が発電に回されるという制御が勝手に行われるのだ。
エンジン駆動、エンジンでの発電、モーター駆動、モーター回生を走行状況に応じ細かく使い分けることで、優れた燃費性能を実現した。
これを1997年に登場した初代プリウスから行っているのだから驚きだ。
動力分割機構の制御は、その後20年以上にわたりデータが集められ改良を重ねている。熟成を重ねたTHSIIは、他メーカーが一朝一夕で真似できるものではない。
■トヨタお得意「カイゼン」の力を発揮!! 動力の根源となるエンジンにも違いあり!
トヨタでは高効率なエンジンを作り気筒数を変え、ハリアーなど幅広い車種に利用している
フィットは1.5L直列4気筒エンジンを搭載する。このエンジンのシリンダー内径×行程は73.0mm×89.4mmだ。
ノートは1.2L直列3気筒エンジンを搭載し、シリンダー内径×行程は78.0mm×83.6mmとなる。
ヤリスはフィットと同じ1.5Lエンジンだが、気筒数はノートと同じ直列3気筒だ。シリンダー内径×行程は80.5mm×97.6mmと最も大きい。
この数値はハリアーなどに搭載されているM20A型エンジン(直列4気筒)と同じだ。
トヨタは高効率なエンジンを作り上げ、気筒数を変えることで汎用性を生んでいる。幅広い車種に利用できる良いものを作るのが上手い。
さらにタイヤ、ボディ、プラットフォームなどの細部にわたり、軽量化・高効率化を進め、部品サプライヤーを含めた全体で、燃費改善に取り組んでいる。
トヨタは新技術を生み出し、長く地道な改良を続け今日の結果を生み出した。改良とトヨタお得意の「カイゼン」が、世界トップレベルの燃費性能を持つクルマを生み出しているのだ。
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