「趣味的な車」と「働く車」との境界線はときに曖昧である。
もちろん「趣味的な車」といってもシャコタン系のクーペなどは、とてもじゃないが現場系の仕事には使えない。だが例えば「趣味としてのカスタム系釣り車」などはパッと見、趣味のための車なのか、それとも現場仕事で使うための車なのかは判別しづらい
今回の東京オートサロン2019でもそのような軽トラがあった。兵庫県の「HARD CARGO JAPAN」という会社が手がけたダイハツ ハイゼットトラックジャンボである。
軍用車的なボディカラーは「オフビートカーキメタリック」というダイハツの純正色だが、つや消しブラックのデカールが各所に配され、そしてごっついカーゴキャリアとカバー、そして微妙にシブい色合いのアルミホイールを履いている。なかなかカッコいい。
だが果たしてこれは業務用のマシンなのか、それとも趣味のマシンなのか?
判断に迷ったが、筆者は「趣味の車であろう」との判断を下した。根拠はアルミホイールである。現場仕事用の軽トラであればわざわざ高価なアルミホイールに履き替える必要はなく、鉄ちんホイールでも十分だからだ。
判断には自信があった。だが念には念を入れる意味で、筆者はブースに立つ同社社員に説明を求めた。これは「趣味グルマ」だと自分は判断したわけだが、それで合っているか? と。
だが彼は言った。
「う~ん……どちらにお使いいただいてもいいんですが、実際にお買いになるお客さまは、ご自分で建築関係などの“ひとり親方”をやってらっしゃる方が、仕事のお車用に買われるケースが多いですね」
そうだったのか! でもなぜ?
……と問おうとして、わたしはやめた。なぜならば、よくよく考えればそんなことは自明だからである。
「仕事用の道具=ビジュアルや質感にはこだわらない」というのは思い込みというか勘違いに過ぎず、むしろ仕事用の道具においてこそ、ビジュアルを含むさまざまな点にこだわりたい場合は多い。会社員の方々のスーツやカバン然り、わたしのようなライターのノートPC然りである。
であるならば、お仕事で軽トラを使う人が「どうせ乗るならなら軽トラもカッコいいほうがいいよね」と考えるのは、当たり前すぎるほど当たり前だという結論になる。
こちら「HARD CARGO JAPAN」のカーゴキャリアも、マットブラックのステキなデカールも、いただいたカタログによればかなりリーズナブルなプライス。このようなニュアンスのステキな軽トラが世の中にもっと増えてくれることを、さしあたって軽トラと個人的な縁はない筆者も強く願っている
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伊達軍曹(だて ぐんそう):自動車コラムニスト
外資系消費財メーカー勤務を経て自動車メディア業界に転身。「IMPORTカーセンサー」編集デスクなどを歴任後、独自の着眼点から自動車にまつわるあれこれを論じる異色コラムニストとして、大手メディア多数で活動中。
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